青い絵本 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分自身を切り刻み血まみれのまますさまじく美しい笑顔で前へ前へと進んでいくような女性を描く桜木紫乃の作品に少しなじめなさを感じていた。 そんなに自分を傷つけなくても、と、そんなに無理に頑張らなくても、と。 でも、そういう女性を描いてきた桜木紫乃だからこそ描けた優しく温かい物語なのだろう、これは。 深紅のイメージだった桜木作品が、こんなに透明で優しくて温かい青に染まるなんて。 5つの物語。5つの人生の岐路。夫との、姑との、息子との、編集者との、そして母との関係の、新しい一歩を踏み出すための分かれ道。 それぞれの物語が深く深く心にしみてくる。自分の物語じゃないのに、自分がそこにいるような気がする。 物語の中に、一冊ずつ絵本が登場する。読んだことのないその絵本が自分の本棚のすみっこに並んでいる気がする。 心が柔らかくほぐされていく。 優しくて温かくて透明ななにかが心にそっと触れていく。 あぁ、こういう物語が欲しかったんだ、と気付く。これは、自分の知らない自分の物語なのかもしれない。
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