フードビジネスの社会史 の商品レビュー
稲田豊史『ポテトチップスと日本人』が面白いのは「おわりに」で書かれている「日本人は、ポテトチップスが好きになったのではない。ポテトチップスメーカーの先人たちが、日本人をポテトチップス好きにしたのだ」という観点からの人々のトライ&エラー、さらには時間軸、空間座標でのグッドラック&バ...
稲田豊史『ポテトチップスと日本人』が面白いのは「おわりに」で書かれている「日本人は、ポテトチップスが好きになったのではない。ポテトチップスメーカーの先人たちが、日本人をポテトチップス好きにしたのだ」という観点からの人々のトライ&エラー、さらには時間軸、空間座標でのグッドラック&バッドラックの掘り起こしがなされているからです。それが日本のフードビジネス全般にまで拡げられて先人たちの気づきと信念と挑戦が描かれているのが本書です。もちろん成功だけでなく挫折にも触れられていて、これはもう面白くない訳ありません。『フードビジネスの社会史』は『フードビジネス・スーパースター列伝』なのであります。野地 秩嘉『TOKYOオリンピック物語』などを読んで1964年のイベントでのセントラルキッチンの導入が日本において個人店を中心とする飲食業が企業としての飲食産業に変わっていくトリガーだ、ということは知っているつもり、でしたがそれは単なる大雑把な幹の話で、枝一本一本、葉っぱ一枚一枚まで生き生きと物語を持っていることに引き込まれました。それは地中に伸びる根っこまで及び「フォードシステム」から語られることによって資本主義の発達と日常の食の問題の間のパスが見えたような気がしました。もう一つはっきり見えたのは「氷」という存在です。コールドチェーンの整備こそがフードビジネスの基本インフラだったことを認識しました。やっぱり本書はビジネス書に置かれるべきではなく社会学として分類されなくてはならない本です。フードロスが社会問題になり大量消費社会も曲がり角、という今、果たして社会はどんな食産業の創造を求めているのでしょうか?米価高騰の夏。本書を読んでもう満腹ですが、でも著者にはおかわりをお願いしたいです。
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