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チェレンコフの眠り の商品レビュー

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2024/10/31

〈「映画なんてどうでもいいさ。百年後だって見れるんだからな。その気になればいつでもだ。人類が滅亡してものこってるんじゃないのか。あんなのはただの人工的な光の明滅だ。わざわざ見る気もせんよ。だが、おまえは世界だ。人間たちは世界を見ずにスクリーンばかり見てるがな。真の世界が映ってると...

〈「映画なんてどうでもいいさ。百年後だって見れるんだからな。その気になればいつでもだ。人類が滅亡してものこってるんじゃないのか。あんなのはただの人工的な光の明滅だ。わざわざ見る気もせんよ。だが、おまえは世界だ。人間たちは世界を見ずにスクリーンばかり見てるがな。真の世界が映ってるとでもおもわされてるんだろうな」〉  悪名高きマフィアのボス、シベリアーリョ・ヘヘヘノヴィチ・チェレンコフは殺された。武装警官隊の銃弾を全身に浴びて。オウムガイの密漁が原因だ。生き延びたペット、アザラシのヒョーはチェレンコフの亡霊(?)の言葉に従うように、誕生日にボスから貰ったアザラシ専用座席のあるゴルフカートに乗り、レストランを目指す。  ……というなんだか不思議な導入ではじまる本作は、アザラシが世界と対峙する作品です。強烈なブラックバイト、聞こえるオウムガイの呪詛、生き別れの兄弟、迫りくる世界の変容。枠組みから逸れたようにはじまる物語は、枠組みの中に入ることなく、どんどん枠組みから遠くへ離れていく。この物語は、この世界は、私をどこへ連れて行ってくれるのだろう、とわくわくしてしまう物語です。不条理な会話はコミカルなのに、なんだか心を抉ってくる。そんな素敵な作品です。

Posted byブクログ