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マン・カインド の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2024/11/27

藤井太洋(大洋ではない)、初めて読むSF作家。普通、初めて読む作家の場合は短編小説から読んで様子を見るのだが、今回はタイミング良く早川書房から新刊書が出版されたのをきっかけに思い切って読むことにした。帯を見ると、第53回星雲賞日本長編部門受賞作という華々しい勲章付き。例によって、...

藤井太洋(大洋ではない)、初めて読むSF作家。普通、初めて読む作家の場合は短編小説から読んで様子を見るのだが、今回はタイミング良く早川書房から新刊書が出版されたのをきっかけに思い切って読むことにした。帯を見ると、第53回星雲賞日本長編部門受賞作という華々しい勲章付き。例によって、素晴らしい作品は読む速度に加速度が付く。読み始めて早速、藤井太洋の書籍を集めにかかり、読み終わる頃までには殆ど揃えた。余りにも強烈な感動が私を襲ったので、この勢いで他の2つの長編に行くか?ちょっと待て。明後日、東京創元社から叢書短編集が出るとのこと。読むならそっちだな。 この小説の重要なテーマの一つに「公正戦」があり、既に発表した作品からこのテーマを引き継いでいるとのこと。この世から戦争が無くなれば良いのだが、どうしても戦争で決着を付けたい国同士で極めて平和的に戦う(限られた土地で、限られた人数で、限られた時間内で戦う等々の限定付きで国を代表して戦争を行う)ことができる考え方。これと比べると、いかにロシアやイスラエルが無駄な事をやっているのが判る。近未来では、ようやく戦争の愚かさを学んだようだ。また、恐らく現在からこの間は幸運にも核戦争は起こっていないようだ。 また、この作品にはいろいろな科学的要素が内包されていて、読み進めるうちにどんどん脳が活性化して読書スピードが加速度的に上昇した。特に私が気になったテーマについては簡単にコメントしたい。 〇 事実確認サービス これを早く日本のIT産業で行って欲しい。そして早く日本の政治に適用して欲しい。なになに、そのためには「大規模言語モデル」と「量子コンピューティング」が必要なの?量子コンピューティングの方は最近良く耳にするけど、現在の進捗状況は実際どうなのかな?成功事例あるの? 〇 精子洗浄剤 不妊治療に使う薬品「精子洗浄剤」はファルキのP&Zが開発したとのこと。でも、このP&Zってアメリカの洗剤メーカーP&Gのパクリじゃないの?発音も殆ど同じ。洗剤だけに、精子まで洗っちゃうんだ。本当は洗浄じゃなくて遺伝子組み換えだけど。精子をピッカピカに磨き上げてスーパー精子にするなんて、どこまで皮肉たっぷりなの。それと、このファルキという創始者はコロナですっかり世界的に有名になったファウチのパクリ? 〇 CRISPR-Cas9 2020年ノーベル化学賞を受賞したこの技術。そりゃこの遺伝子組み換え技術を使ってDNAに新しい遺伝子を追加できるけど、SFだから入れた分だけ機能は追加できるけど、やり過ぎだよ。少しは予測できない不具合も発生するけど、ガンガン有能遺伝子を盛り込むなんて、ちょっとハメ外しすぎ。ここで、おもしろ情報を一つ。CRISPRを初めて文献に載せたのは石原良純だって?良く見たら石野良純でした。ああ、ビックリした! 一つ謎が湧き出て来た。この作品はSFマガジンにて2017年8月号から2018年8月号まで連載されたものを単行本化したものだが、2022年に第53回星雲賞を受賞してなぜ直ぐに出版されなかったのだろうか。どうして2年間も据え置かれたのだろうか。本当に謎です。 また最近、早川書房と東京創元社の仁義なき戦いが実に興味深い。似た様な題材で早川書房から8月に春暮康一の「一億年のテレスコープ」が、東京創元社から同じ8月に宮西建礼の「銀河風帆走」が出版された。そして、今回は同じ藤井太洋で早川書房から9月に本書「マン・カインド」が、東京創元社から11月明後日に「まるで渡り鳥のように」が出版される。もう、ライバル関係バッチバチやな。まあ、こういった戦いはウェルカムのウェルカム。

Posted byブクログ

2024/11/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

伊藤計劃トリビュートからの派生作品として、メタルギアのミームを含むのは必然として、さらにガンダムSEEDやX-MENなどに繋がり得る世界を、ドローンや仮想現実などあくまで現代技術の延長として描き出し、最終的には攻殻機動隊までも射程に入れる。たぶん色々なハッタリを効かせているのだろうけど、それを感じさせない、地に足をつけたまま遠くに連れてこられるような藤井太洋作品の良さはそのままに、今作は著者のエンタメ方面のポテンシャルがもう一段階上がった印象。

Posted byブクログ

2024/11/15

近未来リアルサイバーSFというか、まずその近しい未来の描き方がさらりと自然で、説明くさくないので、世界観に入り込みやすいのがいい。物理空間と仮想デジタル空間を融合したMixed Realityなよくアニメで観る世界(空間に向かって手をささっと動かすと仮想空間のドキュメントがばばば...

近未来リアルサイバーSFというか、まずその近しい未来の描き方がさらりと自然で、説明くさくないので、世界観に入り込みやすいのがいい。物理空間と仮想デジタル空間を融合したMixed Realityなよくアニメで観る世界(空間に向かって手をささっと動かすと仮想空間のドキュメントがばばばっと分類されてそいつを相手にシュッみたいな)が文字の中で背景のように当たり前に存在している世界を構築している時点で、物語が面白くなる素地ができているのがすばらしい。 近未来の戦争が「公正戦」と言われる事前に戦力を情報公開してライブ配信することを前提とした、まるで過去の正々堂々といざ勝負的な戦闘行為となっていたり、その報道方法も現地の中継中に記事の信頼性をチェックする機関を通して、フェイクじゃないことを実証してからじゃないとニュース配信できないようになっていたりとか、現在の状況からさもありなんというSF作家的視点がバリバリ効いている。 当の物語としての楽しみは、後半仕掛けがうすらわかり始めてくるあたりからの展開が少しやりすぎ感を感じたものの、きっちり最後まで楽しませてくれる。 ネトフリとかでアニメか実写化しないかな?

Posted byブクログ

2024/11/05

「マン・カインド」(藤井太洋)を読んだ。 これは見事! 近未来の戦争のあり方に「公正的戦闘規範」で答えを出したのかと思っていたら実はさらにその先を見据えていたのだな。 藤井太洋さんが描くちょっと先の未来って(変な言い方だけど)地に足がついた揺るぎないものに思えるんだな。 ...

「マン・カインド」(藤井太洋)を読んだ。 これは見事! 近未来の戦争のあり方に「公正的戦闘規範」で答えを出したのかと思っていたら実はさらにその先を見据えていたのだな。 藤井太洋さんが描くちょっと先の未来って(変な言い方だけど)地に足がついた揺るぎないものに思えるんだな。 意思を強く持たないと徹夜をしていまいそうな面白さなので要注意。

Posted byブクログ

2024/11/05

 舞台は2045年。2030年代に横行した自動機械による殺戮応酬、非対称戦争への反省から、ORGAN(限定銃火器行使単位)という兵士部隊を運営する組織は、あらかじめの約束事に従う公正戦なるハンデを自らに課している。  そんな公正戦という概念が一般的になった世界で、独立宣言した企...

 舞台は2045年。2030年代に横行した自動機械による殺戮応酬、非対称戦争への反省から、ORGAN(限定銃火器行使単位)という兵士部隊を運営する組織は、あらかじめの約束事に従う公正戦なるハンデを自らに課している。  そんな公正戦という概念が一般的になった世界で、独立宣言した企業都市〈テラ・アマソナス〉の排除の依頼を受け、公正戦を受諾したのが、アメリカ最大の軍事企業〈グッドフェローズ〉。公正戦の終わり、〈テラ・アマソナス〉の公正戦コンサルタントであるチェリー・イグナシオが捕虜の兵士を虐殺する。明確な戦争犯罪の真意を、その第一報を届けようとしたジャーナリストが追う。    というのが物語の導入……という認識で良いのかどうか、自分が上手く作品を理解できているのか大変心配になりますが、壮大な謎あり、緊迫感のあるアクションあり、とすごく心に残る作品でした。  ネタバラシを避けるために曖昧な言い方にはなってしまうのですが、チェリー・イグナシオの〈動機〉を知った時、〈人類とは〉と考えさせられ、そして彼らはどこへ行くのか、と考えさせられる作品でした。よく人類史の話の引き合いに出される、ゴーギャンの絵画のタイトル『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』のあの言葉が、まさに、という感じで胸に迫ってくる壮大さが魅力的でした。

Posted byブクログ