エイレングラフ弁護士の事件簿 の商品レビュー
どんな事件も無実にしちゃう弁護士、まさに犯罪のブラックジャック! #エイレングラフ弁護士の事件簿 ■きっと読みたくなるレビュー 弱い者のために正義感たっぷりの弁護士のお話… では、ありません。 むしろ、どう見てもやってるだろという事件を、様々な手段で無実にしちゃうという… そ...
どんな事件も無実にしちゃう弁護士、まさに犯罪のブラックジャック! #エイレングラフ弁護士の事件簿 ■きっと読みたくなるレビュー 弱い者のために正義感たっぷりの弁護士のお話… では、ありません。 むしろ、どう見てもやってるだろという事件を、様々な手段で無実にしちゃうという… その手段は法廷での卓越なる弁護ではなく、裁判にすらならなくなるとい荒業なんです。しかもその報酬は失敗したら一切お金をとらず、成功した場合は莫大な金額というもの。 なんかブラックジャックみたいなトンデモ設定なんですが、これが読んでると面白いんです。 まずこの怪しい弁護士、エイレングラフのキャラ設定がクールなんですよ。ビシっとスーツを決めたベジタリアンで、いつも詩集を読んでいる。重要な仕事の時はお気に入りのネクタイを締めて挑む。報酬は成功した場合のみ受け取り、どんなことがあっても成功に導くという… まるでやり手のビジネスマンみたい。 「実は本当にやってるんです…」 「そうですか、無実ですから安心してください」 「彼に会ったことはあるんですか?」 「ありませんが無実です。なぜなら私の依頼人だからです」 はぁ?! 怖いわ! この発想が怖い! しかも本当に無実になってしまう(というかしてしまう)ところが恐ろしい。 全部で12編もあるんですが、依頼人や事件関係者が様々で興味深いんですよ。解決へのアプローチも色々あって、たしかにどんな場合でも無実にしてしまうという。よくもまあこんなにも皮肉めいたストーリーやプロットを考えたよ。 しかも本作はエイレングラフ弁護士と依頼人の会話のみで進行していくんです。会話だけっていうところがニクイんすよね、背後でどんなことが行われたかっていう描写はほとんどありません。どんなことをやって無実に導いたかは会話から想像するしかないんですが、このゾワゾワ感がたまんないすよ。 なお長期にわたって書かれたおまとめ短編集とのことで、ストーリーが進むにつれて徐々にエイレングラフの人間性に厚みが出てくる。「エイレングラフの肯定」「エイレングラフの決着」などでは、若干の優しさがしみ出していてエモさもあり完成度が高いですね。 一気に読まなくてもいいので、時間があるときに少しずつ読むのもおすすめです。おもしろかった~ ■ぜっさん推しポイント 依頼人にとっては終身刑をも背負った死活問題にも関わらず、エイレングラフのカラリとした発言が面白過ぎんのよ。自信たっぷりなんだけど、何故か憎めないですよね。 また成功後に依頼人が報酬金額をゴネるんですが、それを華麗にいなすやりとりもニヤニヤしちゃう。気品あふれるブラックユーモアたっぷりでした。
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70年代に6本、80年代に2本、90年代に1本…といった具合に、シリーズものの合間にさながら「岸辺露伴は動かない」のようにして書かれた短編集。 ところがこの主人公の弁護士は荒木作品のような正しい心は持ち合わせていない。まるで藤子不二雄Aのマンガのように邪悪な心を持った悪徳弁護士...
70年代に6本、80年代に2本、90年代に1本…といった具合に、シリーズものの合間にさながら「岸辺露伴は動かない」のようにして書かれた短編集。 ところがこの主人公の弁護士は荒木作品のような正しい心は持ち合わせていない。まるで藤子不二雄Aのマンガのように邪悪な心を持った悪徳弁護士なのである。 ほぼ会話だけで成立させている、切れ味鋭い短編。 長編を読む合間に、チェイサーのようにフト手にとって読んでみてもいいかもしれません。
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泥棒シリーズを昔読んでいたことがある。スピード感が現在には合わないが、限られた登場人物と動きの少ない展開は、定型化しやすく、読みやすい。ただ弁護士である必然性が後半には感じられなくなった。とはいえ、復刊されると死ぬまでもう一度読みたくなるのはなんでだろう。
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『私の依頼人はいつでも無実なんですよ』法外な弁護料をとるが、常に裁判になる前に留置所から釈放される殺人事件の犯人たち。エイレングラフの実は…な種明かしがノアールを通り越してヤバすぎる。12話の短編だが、釈放に至る様々な手段で飽きさせない。
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実態を持って登場するのは弁護士エレイングラフと依頼人だけ、という異常ともいえる設定のなかでよく書けたな12篇も、と感服。ブロックに弄ばれた感が多々。楽しかった。そして、思いがけない"あとがき"と杉江松恋さんの解説に感謝。
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弁護士のエイレングラフは依頼人が有罪になれば弁護料を受け取らず、無罪になれば法外な成功報酬を受け取る。そして裁判になる前に依頼人の疑いを晴らす。依頼人が来たら「あなたは無罪です」と言い本当にその通りになる。その裏に何があるのか。一編30ページにも満たないし全編同じ型をしているけれ...
弁護士のエイレングラフは依頼人が有罪になれば弁護料を受け取らず、無罪になれば法外な成功報酬を受け取る。そして裁判になる前に依頼人の疑いを晴らす。依頼人が来たら「あなたは無罪です」と言い本当にその通りになる。その裏に何があるのか。一編30ページにも満たないし全編同じ型をしているけれど、中身のバリエーションが豊富で飽きさせない。何よりエイレングラフの悪徳さが読んでいて心地いいほど。冒頭の一編を読めばすぐに心を掴まれてしまう傑作集。
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知り合いから勧められて読んでみた。ほとんど裁判に出席しない特殊な仕事をしている弁護士の事件簿。どの短編も切れ味が鋭かった。あえて同じパターンにこだわって書かれていることもあり、終盤は少し飽きそうになってしまった。(この粋さを楽しみきれなかったといった方が正確か)
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越前敏弥さんのオンラインイベント「夏の出版社イチオシ祭」の動画を視聴して知った本。文芸春秋の編集者さんの簡にして要の流れるような宣伝トークが見事で、聴き終わった瞬間にポチってしまった。なので、本の紹介は「動画のとおりです」と言いたいところだが、自分でもちょっと書くことにする。た...
越前敏弥さんのオンラインイベント「夏の出版社イチオシ祭」の動画を視聴して知った本。文芸春秋の編集者さんの簡にして要の流れるような宣伝トークが見事で、聴き終わった瞬間にポチってしまった。なので、本の紹介は「動画のとおりです」と言いたいところだが、自分でもちょっと書くことにする。ただ他の本の紹介も面白いので動画もオススメです。 https://www.youtube.com/live/puA00sWIXc0?feature=shared エイレングラフは小柄で洒落者の弁護士。法外な報酬を要求するが、それは依頼人が無罪放免になったときだけ。失敗したら一切お金はとらない。ただし無罪放免という結果を勝ち取った際には、たとえエイレングラフが何もしていないように見えたとしても、満額きっちりいただきます、という契約スタイル。実際彼が法廷に立つことはほとんどなく、彼の依頼人は裁判が始まる前になぜか必ず無罪放免になる。たとえ依頼人が真犯人だったとしても……。 どうやって無罪にするのかというやり口がもちろん一番の見どころだが、それ以外ではまず毎回登場のたびに微細に描かれるスーツの着こなしが目を引く。ファッションに明るくないので私はもやっとしか思い浮かべられないのだが、それでもこう繰り返されると毎度衣装が楽しみになってくる。もやっとでなく脳内再現できないのが残念。 それから、「詩が好き」という点も彼の特徴。言ってしまえば悪徳弁護士(解説の杉江松恋さんがそう言ってるもんね)なわけだが、どこかエレガントで魅力的(?)に思えなくもない理由は、前述の身なりの良さに加え、詩を愛する一面を持っているところにあるだろう。短い作品ながら、冒頭には必ず詩が掲げられるし、セリフの中にもたくさん引用される。 あとがきや解説には、エラリー・クイーンはもちろん(というのは帯や宣伝文にもある通りこれは元々ダネイのお墨付きでEQMMに掲載されて世に出た作品だから)、エドワード・D・ホックやドナルド・E・ウェストレイクなど私が最近読むようになった二十世紀後半以降のアメリカ作家たちの名前がぞろぞろ登場する。ホックなんて、高い報酬と謎のこだわり仕事をする点は『怪盗ニック』に似てるなーと思っていたら、この作品とは浅からぬ縁があることがわかりびっくりした(私は断然ニック派!)。松恋さんによる弁護士もの系譜解説も興味深かった。 お決まりパターンの固定フォーマットは様式美さえ感じさせる。なかなかなダークヒーローぶりで、倫理とか道義とか人道とかを持ち出してしまうと読めないので、その点はノーコメント。終盤、ネタが尽きたのかその方がウケるものなのか、色事に流れがちになってきたところも好みではない。が、遊びと割り切りさえすれば、大人の楽しい気軽な一冊。読んで良かった!
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【エラリイ・クイーンのお墨つき。珠玉の短編集】どんな依頼人も必ず無罪にしてしまう弁護士エイレングラフ。その脅威の活躍を米ミステリの巨匠が描く短編を全収録。本邦初の作品集!
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