北朝鮮に出勤します の商品レビュー
北朝鮮の庶民の生活や内情に触れることのできる稀有なノンフィクション本。南北経済協力事業で北朝鮮に造成された開城工業団地で、2015年春から1年間栄養士として従事した 20代韓国人女性の主人公が見聞・経験した内容を綴る。庶民といっても、開城工業団地で働く人達はそれでも北ではかなり優...
北朝鮮の庶民の生活や内情に触れることのできる稀有なノンフィクション本。南北経済協力事業で北朝鮮に造成された開城工業団地で、2015年春から1年間栄養士として従事した 20代韓国人女性の主人公が見聞・経験した内容を綴る。庶民といっても、開城工業団地で働く人達はそれでも北ではかなり優遇・裕福な階層とのことなので、これ以下の生活をしている大多数の庶民の生活を想うと哀しさを禁じ得ない。拙い文章が、かえって心に迫るノンフィクションになっている。
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中々知ることができない北朝鮮の日常が垣間見れて興味深かった。韓国の製品をどんなに良いと思っていても、常に北の製品を褒めちぎり、韓国のものをディスるのがウケる。 北での仕事を経験し、「これは平等だ、不平等だと判断するだけの情報を手に入れる自由がないことが問題」と語る筆者の言葉が深い...
中々知ることができない北朝鮮の日常が垣間見れて興味深かった。韓国の製品をどんなに良いと思っていても、常に北の製品を褒めちぎり、韓国のものをディスるのがウケる。 北での仕事を経験し、「これは平等だ、不平等だと判断するだけの情報を手に入れる自由がないことが問題」と語る筆者の言葉が深い。
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南北融和事業の一環として、北朝鮮側に作られた開城工業団地で働く韓国人女性の物語。彼女の立場というよりかは、1人の若い韓国の女性が今の北朝鮮を、彼女が接したごく一部の人たちを通じてどう見るかというのが伝わってくる一冊。
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開城(ケソン)工業団地とは 北朝鮮南部、韓国との軍事境界線付近にある経済特別区に設置された南北共同の大規模工業地帯。ソウルから車で約1時間。 北朝鮮側が土地と労働力、韓国側が資金と技術力を提供。 2004年に操業を開始、繊維、機械、金属、電子部品など百数十社が操業。 しかし201...
開城(ケソン)工業団地とは 北朝鮮南部、韓国との軍事境界線付近にある経済特別区に設置された南北共同の大規模工業地帯。ソウルから車で約1時間。 北朝鮮側が土地と労働力、韓国側が資金と技術力を提供。 2004年に操業を開始、繊維、機械、金属、電子部品など百数十社が操業。 しかし2013年に北朝鮮が地下核実験を強行したことにより、両国の関係が悪化、米韓合同軍事演習の実施を理由に、操業を一時中断。 その後再開されたものの、両国の関係はこじれたまま2016年操業停止となる。 そして同地に設置されていた南北共同連絡事務所は、2020年北朝鮮当局によって爆破された。 そんな工業団地の食堂に2015年春から2016年春まで約一年間を栄養士として著者は働いた。 月曜日の朝、キャリーバッグをもって観光バスに乗って休戦ラインを超え北朝鮮に入り、金曜まで働いたらまた同じバスで韓国の自宅に帰る、という生活。 別に強制されたわけでもなく、自ら応募して就職した。(就職先は韓国企業) 心配する韓国にいる家族や婚約者を置いて何故に? きっかけは大地震に見舞われたパキスタンでのボランティア活動、それが飢餓に苦しむ北朝鮮の子供につながり、食糧難を何とかしたいという気持ち、ひいては南北統一に役立ちたいというひたむきな思いを胸に選んだ仕事だった。 北の人のほとんどは、ひとりの時は純朴そうに笑いながら頭を下げる、二人以上になると、目を伏せて無表情に通り過ぎる。 万事そのように教育されている人たちは、韓国で自由に暮らしてきた著者には想像の付かないことばかり。時には傷ついたり、落ち込んだりしながらも北の人たちを理解し受け入れようとしていた著者だった。 とにかく北の人は見栄っ張りですね。 化粧品でも、日用品でも、北の製品の方が優れているとか(中国から入っているものも多数)自分たちはいつもお腹いっぱい食事をしていて、家の大きな冷蔵庫には食品がいっぱい入っているとか、そんなことはあり得ないとわかっていても、何も言い返せない、言い返さない。 著者が、週明けに韓国の食べ物をお土産に持ってくると、今はお腹がいっぱいだからいらないとか言って、置いておくといつの間にか無くなっている、食べたんじゃなくて、家族のために持ち帰る。あるいは食堂の残り物を、キムチの汁の付いたビニール袋に入れて家に持ち帰る。そういう人たちのことを著者は何も言えない、見て見ぬふりをする。 そんな人たちと友情のようなものを感じ始めていたのに、ある週明けもう開城に行かなくてもいいと告げられる。 あの工場の人たちはどうしているだろう、他の地域の子供たちは? 今日も北の人たちに思いをはせる著者です。
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南北経済協力事業として開発された開城工業団地。韓国から軍事境界線を超えて勤務し週末のみ韓国に戻る生活をして韓国人栄養士。北朝鮮の人々との交流と監視社会の現実。時に自家製キムチを持ち寄ったり打ち解ける場面もあるが、北朝鮮の核実験を機に事業は突然打ち切られてしまう。 北朝鮮の厳しい体...
南北経済協力事業として開発された開城工業団地。韓国から軍事境界線を超えて勤務し週末のみ韓国に戻る生活をして韓国人栄養士。北朝鮮の人々との交流と監視社会の現実。時に自家製キムチを持ち寄ったり打ち解ける場面もあるが、北朝鮮の核実験を機に事業は突然打ち切られてしまう。 北朝鮮の厳しい体制と少しだが心を通じ合う一般の人々。統一への道は険しいが本書には少しばかりの希望がある。
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本屋で見かけて、そのタイトルと帯に惹かれてジャンピング購入。昨年『金正日の誕生日』というバンドデシネを読んだ時、アジアに住む身として韓国と北朝鮮のことを何も知らなかったことに愕然としたことを思い出した。 韓国人女性である著者・キムさんは毎週ソウルからバスで軍事境界線を越え...
本屋で見かけて、そのタイトルと帯に惹かれてジャンピング購入。昨年『金正日の誕生日』というバンドデシネを読んだ時、アジアに住む身として韓国と北朝鮮のことを何も知らなかったことに愕然としたことを思い出した。 韓国人女性である著者・キムさんは毎週ソウルからバスで軍事境界線を越えて北朝鮮に出勤し、南北経済協力事業で北朝鮮に造成された開城(ケソン)工業団地で、北の従業員の方と共に栄養士として働く。そこでの日常を綴ったエッセイ/ノンフィクション。 「南から見る北」という構図を実は個人的に初めて知ったことに読みながら気づいた。国家という括り見ると日本人には到底理解できない南北の関係性だが、作中で出てくるキムさんと北の個々人のエピソードを見てると、国という膜で見えない繋がりってあるよな、、と感動と悲しみが同時に来た。 例えば北朝鮮には、一人では絶対に南の人と同じ空間にいてはならないという決まりがあるらしい。エレベーター内でもそれは同じ。そんな風に「ルール」はあるものの「ポリシー」はそう限らない場合があり、時に1対1で話すと南に関してとても興味を持って質問してくれたりする。ちょうどオリンピックシーズンに読んだこともあり、あぁ何故このような個々の繋がりのように、国家同士もうまくワークしないのだとなんとも言えない気持ちになった。 もっと丁寧な別れ方であってほしいと思った。別れたりせず互いに行き来しながら、どんな暮らしをしているか、どうやって歳を重ねていくか、子どもがどれだけ大きくなったかを見ることができればよかったのに。 旅先で読んだのもあり、経済格差の問題も強く感じた。話が逸れるが旅先は平均年収が日本の約1/10の国であり、それはつまり我々が「安い!」と言いながら300円払って買ったコーラや子供服は、現地人にとって3,000円の価値に換算される。本書曰く北と南も似たような格差があり、仕事中に南からのフルーツや日用品の差し入れに喜び、けれど決してその場で消費することなく、貧しい生活を強いられている家族に持ち帰る母親。他国を知って自国を知るとはホントこの事で、比較は良くないと分かりつつも、中を疑って外を知ることは重要であると再認識した。
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同じ国でも時代が数十年違うだけで、同じ時代でも隣の国に生まれただけで、こんなにも異なる人生を歩むことになる。 ものごとを考えられるだけの情報にアクセスできる自由さ。それがないことの恐ろしさ。
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南北経済協力の象徴として2004-2016年まで操業した開城工業団地で、北朝鮮の核実験等を受け、操業停止する直前までの1年ほど勤めていた南の栄養士さんの話でした。2020年には同地の連絡事務所が北朝鮮に爆破され操業再開は難しい様子です。北の従業員は南の人の暮らしむきに関心が高いも...
南北経済協力の象徴として2004-2016年まで操業した開城工業団地で、北朝鮮の核実験等を受け、操業停止する直前までの1年ほど勤めていた南の栄養士さんの話でした。2020年には同地の連絡事務所が北朝鮮に爆破され操業再開は難しい様子です。北の従業員は南の人の暮らしむきに関心が高いものの、南の人は自分の暮らしに精一杯で北の人に関心が向いていないと聞かされると同じ民族なのに無関心とは何事かと怒りだす。北の人は一方通行であり重過ぎる気持ちをぶつけ、そのうえ負けず嫌い。労働の現場を介した南北の人々の貴重な時間を垣間見ることになりました。
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「いつか店長先生がここを出たら、私たちに会いたいと思ってくれますか?思い出してくれますか?」 植え付けられた思想によって、対話にならないことがすごくもどかしく感じます。可哀想という言葉は上から目線でものを言うようで到底言えない。だって北の人達も私たちと同じように愛する家族を思い...
「いつか店長先生がここを出たら、私たちに会いたいと思ってくれますか?思い出してくれますか?」 植え付けられた思想によって、対話にならないことがすごくもどかしく感じます。可哀想という言葉は上から目線でものを言うようで到底言えない。だって北の人達も私たちと同じように愛する家族を思い、1日1日頑張って生きているのだから。時折り垣間見える本音に切なくなります。キム・ミンジュさんの夢が叶いますように。今より状況が少しでも悪くならないことを願いながら。
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国の体制は各国違って当たり前ですが、社会体制が大きく違う国で生まれ、教育を受け、生活する人たちの現実を見聞きすることは難しいことこの上ありません。 まったく違う社会体制の中で生きている人びとのこと、そんな彼らと仕事をすることの難しさを伝えてくれるノンフィクション。 本だからこそ...
国の体制は各国違って当たり前ですが、社会体制が大きく違う国で生まれ、教育を受け、生活する人たちの現実を見聞きすることは難しいことこの上ありません。 まったく違う社会体制の中で生きている人びとのこと、そんな彼らと仕事をすることの難しさを伝えてくれるノンフィクション。 本だからこそ心静かに読むことができました。
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