サヴァナの王国 の商品レビュー
素晴らしいのは登場人物の描き方が際立っていること。そのお陰でマスグローヴ家の面々はもちろんホームレスの人たちも個性的で人物の厚みが感じられた。 サヴァナを訪れたことはもちろんなく『真夜中のサヴァナ』を読んだだけだが、とても魅力のある町という印象を持っていた。この本でそこに新たにイ...
素晴らしいのは登場人物の描き方が際立っていること。そのお陰でマスグローヴ家の面々はもちろんホームレスの人たちも個性的で人物の厚みが感じられた。 サヴァナを訪れたことはもちろんなく『真夜中のサヴァナ』を読んだだけだが、とても魅力のある町という印象を持っていた。この本でそこに新たにイメージを付け足すことができた。 読後感も複雑で、とても厚みのある物語なのだと思う。
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奴隷制が存在していた南部にあって、“絶対に”存在してはいけないもの。それが、王国。何だか王国と聞いた第一印象では、よく分からないファンタジックな話が急に放り込まれた感じがしたが、読み進めるとその正体が分かる。当時の黒人達にとっては、正しく王国だった。ただ、自分達が自由に暮らすこと、それが許されない南部にあって、唯一の自由の地。だが、現代でもそんな王国の存在が許せない人間は存在していた。まぁ、新しい開発計画に着手したい人達にとっては、歴史的遺産や遺物というのは、邪魔でしかないのかもしれない。どんなに素晴らしい発見でも、口にしないだけで、計画が白紙に戻ったことを苦々しく思う人も居る。王国を調査する過程で判明する、黒人達に行われた非人道的な行為は、しかし、実際に起こったことなのだ。最後はうやむやになってしまった結末も、いかにも現実的な気がする。全てを白日の下に晒して、裁くことが出来たら楽ではあるが、実際にはそんなに上手くいかないものだ。そんなもやもやした気持ちを抱えながらも、人は生きていかなければならないのかもしれない。
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アメリカ南部のサヴァナを舞台にしたミステリー。黒歴史の上に成り立つ謂わば王国の既得権や人種差別など奥深い。個人的にジャクを応援していたので、終わり方が切なかった。
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2024/8/31読了 拉致された考古学者の発見した〈王国〉とは何? という話だが、原題が”The Kingdoms of Savannah”と複数形ということは、読む限りとことん腐っているとしか思えない、現代のサヴァナの権力構造をもう一つの〈王国〉に含めてのタイトルなのだろう。ストーリーを引っ張るのは、ジャクとランサムだが、要所を締めるのは、〈オールド・フォート〉の女当主モルガナ。ジャク達の報告から事件の背景を看破する洞察力と、最終局面での不利な状況をひっくり返す胆力、交渉力とを持ち合わせる女傑だが、サヴァナの腐敗構造を前に、為されるべき正義が為されず、それ故に性格が真っ直ぐすぎたジャク(今の〈王国〉に身内が居て、更にかつての〈王国〉にルーツを持つことを知ってしまったのも、ある意味悲劇だったか)が街を出ることになってしまう、という結末がなんともやりきれない思いにさせられる。
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★5 23年ゴールド・ダガー!アメリカ南部の街、人間の愚かな歴史と欲を描いた物語 #サヴァナの王国 ■あらすじ アメリカ南部、ジョージア州の都市サヴァナ。嘱託考古学者のストーニーは、バーに呑みにきていたところ、突然何者かに誘拐されてしまう。さらに一緒にいた友人ルークも刺されてし...
★5 23年ゴールド・ダガー!アメリカ南部の街、人間の愚かな歴史と欲を描いた物語 #サヴァナの王国 ■あらすじ アメリカ南部、ジョージア州の都市サヴァナ。嘱託考古学者のストーニーは、バーに呑みにきていたところ、突然何者かに誘拐されてしまう。さらに一緒にいた友人ルークも刺されてしまい、その後空き家で焼死体となって発見される。店のバーテンダーであり映画芸術を志すジャクは、ひとりストーニーの行方を追う。 一方、街で探偵業など様々な事業を行うモルガナ一家は、空き家の住宅開発業者のグースから調査依頼を受ける。そのメッセージは"石の王たちの宝物を守れ" というというもので… ■きっと読みたくなるレビュー ★5 これまたおもろしろかったなー。アメリカ南部の街サヴァナを舞台で、街の文化や歴史を知ることができるノワール小説。薄暗い雰囲気が漂う中、人間の強欲さや卑劣さが伝わってくる作品です。 まず推したいのは、都市サヴァナの緻密な描写。訪れたこともないのでネットで調べてみたんですが、それはもうバカンスたっぷりな観光情報がたくさんでてきます。 しかし本書ではそんな描写はひとかけらもない。黒人奴隷の歴史や背景、ホームレス難民の実情、腐敗した街の権力者たち… 観光地の裏側にある現実を、たっぷりと脳みそ焼き付けられていくのです。 またメイン登場人物であるジャクとランサム(モルガナ一家の次男)は、まさにその街の住民であり生活の基盤なんです。ダークな街で喘いでいる吐息をすぐ近くに感じることができ、読み手をサヴァナの暗部に誘ってくれる。 物語の前半はこの街や環境、人物の背景が語られる場面が多いのですが、中盤辺りから一気に物語が動いてきます。なぜストーニーは拉致されたのか、誰が犯人なのか、宝物とは何か、ありかはどこなのか、そして街に潜む秘密とは。ジャクやランサム他モルガナ一家の調査が少しずつ実を結び、徐々に恐ろしい背景が見えてきて… 脱皮できない蛇は死ぬと言いますが、ホントに人間って愚か。悲しみを通り越して、もはや絶望しか感じませんでしたね。 また本作は多くのキャラクターが出てくるのですが、みんな魅力的なんですよ。頑張り屋のジャクは可愛いし、過去の失敗を引きづってるランサムは哀愁があってシブイ。そして街に住む人々やホームレスたちも、怒りや悲しみを背負っていてパワフルさを感じるんすよ。ひとりひとりの人間性を豊潤に描いているのも本作の強みですね。 なかでもイチ推しは、モルガナ一家のドンである奥様モルガナ・マスグローヴ。彼女が超Coooolなんですよ、日本人俳優なら天海祐希さんみたいなイメージですかね。普段は家にいて怜悧な管理職みたいな感じなんですが、交渉や張りあいの場面になると、カッコ良すぎてもう完全に惚れちゃう。終盤なんてえぐかったよ… このシーンのためだけでも読む価値がありますね。 さすがはゴールドダガーを受賞した作品、テーマの深さとスケール感が想像以上でした。キャラもいいし、エンタメ性の伸び具合も良く、面白い作品でした! ■ぜっさん推しポイント さて『サヴァナの王国』とは何なのか? 本の装画を見ると、なにやら木々が生い茂り、狐がいるような場所なんだけど… 読む前はさっぱりわかりませんでした。しかし読み終わってから改めて見てみると、そこには生命の息吹と人間の繋がりを肌で感じ取ることができたのです。 我々は他者とどのように関わっていくのか、その結果どのように社会を形成していくべきか。SDGsも国際社会で叫ばれていますが、決して縁遠い課題にはせず、身近なこととして認識したいです。
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