山のバルナボ の商品レビュー
人間の臆病さや、自尊心などを真正面から描写した作品。 自然の美しさや怖さなんかもテーマなのかなと思うが自分的にはそうした人間の描写が心に残った。
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ブッツァーティのデビュー作。 美しい景色、過去に囚われること、じっとなにかを待ち続けること、失った時間は取り戻せないこと……など、ブッツァーティのその後の作品たちの要素が詰まってるように感じた。 『タタール人の砂漠』に一番近い感じがするけど、こちらの方が読みやすかったと思うので...
ブッツァーティのデビュー作。 美しい景色、過去に囚われること、じっとなにかを待ち続けること、失った時間は取り戻せないこと……など、ブッツァーティのその後の作品たちの要素が詰まってるように感じた。 『タタール人の砂漠』に一番近い感じがするけど、こちらの方が読みやすかったと思うので少年文庫なのも頷ける。 ただ、こういった話は実際に自分がある程度年を重ねみて、失ってしまったものを思い出したり焦りや不安を感じることで共感できるものなのかもとも思うので、子どもたちが読んだ場合はどういった気持ちになるのか聞いてみたくもある。 挿絵も話に合っていて良かった。 辛く感じる場面はいくつかあったけど、カラスのくだりが一番辛かった。
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静かで滋味深い作品だった。いつもかっこよく、正しくいられたらいいけど、そうできないのが人間。「そうじゃない自分」が年輪として刻まれる度に、人生は太く、豊かになってゆく。
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ブッツァーティのデビュー作。『タタール人の砂漠』(one of my most favorite novels ever)への繋がりを感じる作品。タタール人の砂漠を読んだ方にオススメ。静かに流れる時間の中で、変わらない自然、年を重ねた人間の変わるところと変わらないところ、人間を取...
ブッツァーティのデビュー作。『タタール人の砂漠』(one of my most favorite novels ever)への繋がりを感じる作品。タタール人の砂漠を読んだ方にオススメ。静かに流れる時間の中で、変わらない自然、年を重ねた人間の変わるところと変わらないところ、人間を取り巻く環境の変化が淡々と描かれている。再読して、じっくり味わうのが良さそう。
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『タタール人の砂漠』で有名なブッツァーティの処女作の翻訳が出たとのことで取る物とりあえず本屋へ走った。『頭山』の山村浩二氏によるイラストふくめて子供向けとは思えない渋さだ。最近の子供たちはすごいものを読むのだなと驚いた。 舞台は峻厳な山にかこまれた森の奥。森林警備隊なる組織で活...
『タタール人の砂漠』で有名なブッツァーティの処女作の翻訳が出たとのことで取る物とりあえず本屋へ走った。『頭山』の山村浩二氏によるイラストふくめて子供向けとは思えない渋さだ。最近の子供たちはすごいものを読むのだなと驚いた。 舞台は峻厳な山にかこまれた森の奥。森林警備隊なる組織で活躍せんと胸膨らます青年がたんたんと歳を重ねてゆく。安っぽいドラマはなく、分かりやすい成長もない。人生は思い通りにはゆかず自然は厳しい。ただ山や森、動物たち、あるいは自然としての他人の存在感は清々しくて、個人の思惑から遥かに離れた所で確かに存在し続ける自然と人生のビターテイストが共鳴してスルメのような味わい深さがある。 こうしたすんなり飲み込めないお話は現代っ子には新鮮かもしれない。一体何なのだろうと心に引っかかり止まる時間が長い分だけ物語はその人と共に歩み続け心の栄養になるものだ。TikTokでツルツルになった脳みそには特に良い刺激になりそうな本だ。
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『タタール人の砂漠』で興味を惹かれ、何冊かの短編集を読んでその魅力にすっかりハマってしまったのだが、本書は、ブッツアーティの1933年発表のデビュー作。 これまでに読んだ限りでは、寓話や奇譚のような不思議な印書を与える作品が多いとのイメージを持っていたのだが、本書は全体的にリ...
『タタール人の砂漠』で興味を惹かれ、何冊かの短編集を読んでその魅力にすっかりハマってしまったのだが、本書は、ブッツアーティの1933年発表のデビュー作。 これまでに読んだ限りでは、寓話や奇譚のような不思議な印書を与える作品が多いとのイメージを持っていたのだが、本書は全体的にリアルなタッチで描かれている。 舞台となるのは、おそらくイタリア北東部と思われる地方の山岳地帯。隊長以下13人の森林警備隊員の一員として、主人公のバルナボは働いている。ある日、隊長が盗賊に殺されてしまった。犯人を捜そうと険しい山々を探索する隊員たち。バルナボも親しい隊員と一緒に何度も山に向かうのだったが、そそり立つ岩壁や峡谷、遥かに見える山頂付近の描写は見事だし、恐ろしさに震えながら進む慄きなどもハラハラさせられる。 あるとき、警備隊で警備をしていた火薬庫が武装した盗賊に襲われたのだが、近くにいたバルボラは怖気づいて身を隠してしまう。警備についていなかった責任を問われ解雇されてしまったバルボラは、その地を離れた。数年が経ち、同僚だった友人の誘いを受け、あの地に戻ったバルボラ。彼は隊に戻ることはできるのだろうか。 バルボラの後悔や苦悩には心痛むし、最期に彼の取った行動にもいろいろと考えさせられる。しかし全体を通して強く印象に残るのは、人間を簡単には寄せ付けない山々などの自然の描写や、たまたま助けることになったカラスとの交流など。 銃撃戦があったり、銃を持って盗賊と緊張して対峙する場面もあるのだが、決してストーリー展開の妙で読ませるような作品ではない。本書は児童書としての刊行だが、少年少女たちはこの作品を読んでどんな感想を持つのだろう、ちょっと聞いてみたいものだ。
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