暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「ヒロシマ」という文字から原爆についての本と思い購入したが,いい意味で裏切られた。帝国の対外戦争を支えた船舶司令部の誕生から,敗戦による終焉までが記録されている。前線の戦闘部隊より軽くみられる中,戦術,戦略を支えるために奮闘する司令官。ガダルカナル以降,前線で悲惨な死を遂げる船員たち。冷徹な筆致から彼らの姿が生々しく浮かび上がる。絶望的状況の中で真摯に使命を全うした現場に対し,理念なき上層部の滑稽とも思える振る舞いには怒りを覚える。あの戦争の姿を理解する書物として必須の一冊である。
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これまで読んだノンフィクションの中でも最も心動かされた書の一つ。 陸軍の兵站が民間輸送船により成り立っていたことを初めて知る。日本のロジスティクスの貧弱さは、戦争の行方にとって致命症となった。今も、日本の経済や国民生活は船舶輸送に支えられているが、そこへの意識は低いと言わざるを得...
これまで読んだノンフィクションの中でも最も心動かされた書の一つ。 陸軍の兵站が民間輸送船により成り立っていたことを初めて知る。日本のロジスティクスの貧弱さは、戦争の行方にとって致命症となった。今も、日本の経済や国民生活は船舶輸送に支えられているが、そこへの意識は低いと言わざるを得ない。この現実への警鐘でもあると感じた。とにかく、傑作である。
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単行本でも読んでいたが、文庫化を機に再読。 陸軍の船舶輸送という地味だが重要な任務を遂行した2人の中将(田尻昌次、佐伯文郎)を描くことで、先の日本の戦争や軍隊の現実、そして、その本質が浮き彫りにされる。 冷静で良識的な中将がいたことに少し救われる気もするが、何よりその報われな...
単行本でも読んでいたが、文庫化を機に再読。 陸軍の船舶輸送という地味だが重要な任務を遂行した2人の中将(田尻昌次、佐伯文郎)を描くことで、先の日本の戦争や軍隊の現実、そして、その本質が浮き彫りにされる。 冷静で良識的な中将がいたことに少し救われる気もするが、何よりその報われない境遇に悲哀を感じる。 帯の宣伝文句に「なぜ”ヒロシマ”に投下されなくてはならなかったか。」とあるが、全くそういう話ではないので要注意。(せっかくの傑作を貶める詐欺的広告は残念でならない…)
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