文化の脱走兵 の商品レビュー
ほのぼのとした章もあれば、とにかく今の国内外の情勢に直結して胸が痛くなる章もあり。 憎しみ合うくらいなら文学に逃げればいい。 文化を愛することが権力に対するレジスタンスになる。 そう言うことを考えさせられた気はした。
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おっとりとした温かい文章の中、反戦・反原発の強い意志が込められていて、奈倉さんのエッセイはやはり好きだと思う。 引用されている数々のロシアの詩も全部知らなかったので紹介していただいてありがたい。 ゲームのチャットで、ロシアやウクライナ、周辺国の方々と交流されているのも、そういう手...
おっとりとした温かい文章の中、反戦・反原発の強い意志が込められていて、奈倉さんのエッセイはやはり好きだと思う。 引用されている数々のロシアの詩も全部知らなかったので紹介していただいてありがたい。 ゲームのチャットで、ロシアやウクライナ、周辺国の方々と交流されているのも、そういう手があるのかと感心した。外国語の習得は大変な努力がいるけど、それに見合った見返り(大変言葉は悪いけど)は現代だからこそしっかりあると思わされた。 そうやって外国に住む人との距離が近くなっているのに、戦いは始まり、長引き、たくさんの人が殺される。誰も止められない。私たちはどういう時代に生きているのだろう。
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『人間はあきれるほど忘れっぽく、目新しいことを言っていると思い込んでいる人物に限って過去の過ちを繰り返す』『文学は憎しみの連鎖を止めるための、人類の大切な共通財産である』 感慨深いものがある。
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「文化の脱走兵」まずそのネーミングが良い。 これはエセーニンが脱走兵を称えた詩にヒントを得てつけたものだと言う。「ロシアで1番の脱走兵になった」と誇り、「僕は詩でしか戦わない」と表明したエセーニン。 武器で戦うのではなく、文化で戦う脱走兵。 奈倉有里のロシア文学ネタがやっぱり一...
「文化の脱走兵」まずそのネーミングが良い。 これはエセーニンが脱走兵を称えた詩にヒントを得てつけたものだと言う。「ロシアで1番の脱走兵になった」と誇り、「僕は詩でしか戦わない」と表明したエセーニン。 武器で戦うのではなく、文化で戦う脱走兵。 奈倉有里のロシア文学ネタがやっぱり一番面白い。「つながっていく」のエピソードはゾクゾクした。偶然なのか必然なのか、人と人が繋がっていく醍醐味に痺れた。 そして何より、一番驚かされたのは、柏崎移住。すごいなあ、この人は。おそらく姉弟共通の凄さとみた。「文学キョーダイ!」で知った家庭環境もまた、この人の行動力と真っ当な勇気を形成させたのだと思う。 思いもよらぬ発想に驚いた。 奈倉有里すごいです。
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ロシア文学研究者の名倉有里さんのエッセイです。随所にロシアの詩歌が散りばめられ、とても美しい詩ばかりで心が洗われ、落ち着きます。 今までロシア文学に触れたことがほとんどなかったので、正直驚いています。正確に言えば何に驚いているのかというと、知らずのうちに私も『ロシア=悪』の感覚で...
ロシア文学研究者の名倉有里さんのエッセイです。随所にロシアの詩歌が散りばめられ、とても美しい詩ばかりで心が洗われ、落ち着きます。 今までロシア文学に触れたことがほとんどなかったので、正直驚いています。正確に言えば何に驚いているのかというと、知らずのうちに私も『ロシア=悪』の感覚でいたこと。私の中で『ロシア=ロシア人』だったからです。とても怖いことです。 プーチンの支持率が高いことから、戦争肯定はロシア人の総意だとなんとなく思っていました。 でもそんなわけない。調べれば、考えれば、知ろうとすればちゃんとわかるのに。 最終章の『柏崎の狸になる』で、 “柏崎原発を人類の当事者として考えたい”とおっしゃったその言葉は、私の胸に刺さりました。
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「クルミ世界の住人」で一気に惹きつけられ、ロシアの素敵な詩がたくさん綴られていたし、先生がテープに一冊分朗読を入れてくれたエピソードも好きです。書き留めたい文章が沢山ある本でした。
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奈倉さんのエッセイを読んでほしい人は、子育て中、あるいは子どもを持とうと思っている人かもしれない。 子どもの資質を理解して、抑えず、曲げず、かと言って甘やかしすぎることなく育てれば、子どもは勝手に伸びていって、自分がしたいこと、すべきことを知り、それが社会にとってもプラスになる、...
奈倉さんのエッセイを読んでほしい人は、子育て中、あるいは子どもを持とうと思っている人かもしれない。 子どもの資質を理解して、抑えず、曲げず、かと言って甘やかしすぎることなく育てれば、子どもは勝手に伸びていって、自分がしたいこと、すべきことを知り、それが社会にとってもプラスになる、ということが、身に染みてわかるというか。 奈倉さんのエッセイを読むと、いかに両親や祖父母が奈倉さん(多分弟さんも)の資質を理解し、奈倉さんが深く感じ、考え、想像することを妨げなかったということがわかる。 子どもの頃に新潟の祖父母の家で感じた多幸感は、こちらにも伝わってきて、切ないほどの気持ちになった。こんな気持ちを感じた子どもが悪い人間になるだろうか? 姉は翻訳者で研究者、弟は作家と聞くと、どう教育するのかと思う人がいるだろう。同じような職業についていても人格者であるとは言えないし、幸せだとも言えないが、奈倉さんの本を読むとまず人間として信頼できる人だなと感じる。そういう人が翻訳や文学研究をすれば、それは社会や、とりわけ弱い立場の人にとって害になるはずがないのである。 マスコミで「東大生のおすすめ」「子どもを東大に入れた親の子育て」みたいなものがしばしば取り上げられるが、それを好んで見ている人は子どもを東大(は無理でも高偏差値の大学)に入れたいのだろうか。なんだかその発想が間違いのように思えてならない。 幸せな子ども時代を送らせてあげること。好奇心、興味を妨げず、広げ、伸ばす教育(必ずしもお金をかけなければいけないものではない)。大人になってきちんと働き、私利私欲に走らず、感情に振り回されず、社会をより良くできないか考え、行動する、そんな人になってほしいと、まともな大人なら思うのではないか。(他人を踏み台にしてでも私利私欲に走って金持ちになってほしいという親もいるのだろうが。) そういう人には参考になることばかりが書いてあると思うのである。 ロシアやウクライナに住んでいる友人達の立場や気持ちを深く汲み取って、安易にインタビューなんかしない奈倉さんの深い優しさに感じ入った。 戦争に反対するやり方はいろいろある。戦争に限らず、自分がどうしても受け入れられないことを強いられたとき、どうするか。そのやり方についても考えさせられた。
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「クルミ世界の住人」から「文化は脱走する」まで。 美しく、読みやすい文章から紡ぎ出される世界に引き込まれ、あっという間に最後のページまできました。 人と人とを分断しているものは何なのか。 人と人とがつながっていける世界のヒントが満ちているエッセイ集でした。
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「地球上に爆弾を落としていい場所など存在しない。それを確認しあうかのように、私たちは花や作物や夜空の写真を送り続ける。いつか爆弾が降らなくなったら、私たちはこの巣穴から出よう。カザフスタンで集合して、一緒に魚釣りをしにいこう。」(p149巣穴の会話) 本書は2022年から202...
「地球上に爆弾を落としていい場所など存在しない。それを確認しあうかのように、私たちは花や作物や夜空の写真を送り続ける。いつか爆弾が降らなくなったら、私たちはこの巣穴から出よう。カザフスタンで集合して、一緒に魚釣りをしにいこう。」(p149巣穴の会話) 本書は2022年から2024年にかけて月刊誌『群像』に書かれたもの。どんなに“今”が苦しくてもその先を信じる。諦めないで生きのびる。私たちの父や母、昔のひとがそうやって生きて来たように。私も“巣穴の手入れ”をしながら生きなければ‥
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現在の「悪夢のなかを生きているような時代」においてでさえ、著者は文学に力があることを確信しており、それが読んでいて心地よい。定期的に読み返したい。
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