ジャパン・ホラーの現在地 の商品レビュー
動画や漫画や小説の一大ジャンルであるホラーにて、今何が怖いものとされているのか、それぞれのカテゴリでその怖いものがどういう変遷をだどってきたのかを作家やオカルト研究家として活躍している吉田悠軌氏がTVプロデューサー、映画監督、配信者などのクリエイター側の人たちと考えていく論考集 ...
動画や漫画や小説の一大ジャンルであるホラーにて、今何が怖いものとされているのか、それぞれのカテゴリでその怖いものがどういう変遷をだどってきたのかを作家やオカルト研究家として活躍している吉田悠軌氏がTVプロデューサー、映画監督、配信者などのクリエイター側の人たちと考えていく論考集 いずれの章もおもしろく読んだけれど、おもしろかったのは民俗ホラーの箇所だった。私は地方出身ということもあり、恐怖の対象=田舎と短絡的につなげられることを遺憾に思っていたのだけれど、なぜそういうつながりができるのかの理由の一端が示されていた 今は都会にいる人はすでに数代に渡って都会で暮らしている人が多く、田舎全体を怖いもの、やばいものとしがちで、その内実なんかはあまり想像されない。だから容易にその地域ごと恐怖の対象となってしまう、というのがなるほどなあと納得したんであった ほかにもホラーはネットと相性がよく、だからこそ2ちゃんねる発祥のネット怪談などが隆盛を極めたみたいなこととかも書いてる。映画でも配信でもホラーものが好きな人は読んでみるといいかも
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編者の吉田悠軌氏と、テレビ、小説、実話怪談、配信、漫画……各界で活躍するクリエイターとの対談、論説等を通じて、ここ数年新たな盛り上がりを見せる日本ホラーの(文字通り)現在地と、その原点がよく理解できる良著。 ・令和の今TVでできるホラーをテレ東のプロデューサーが語った1章 ・『近畿地方のある場所について』を作者自らが語る2章 ・“書かれた”怪談と“語られた”怪談との差異について編者と黒史郎氏が議論を交わす3章 ・各媒体のホラー作品で変わらすの人気要素となっている“民俗ホラー”を、澤村伊智氏と民俗学の飯倉教授との鼎談で批評的に再確認していく6章 ・フィルム、ビデオカメラ+VHSテープからスマホ動画へ。心霊ドキュメンタリー映像の変遷と今後が語られる7章 ・現代ホラーを語る上で欠かせないファウンド・フッテージを作家・梨氏と語った8章 が個人的には特に面白かった。 "ホラー映画"の章がなかったのは少々意外だが、映画はもうそれだけで1冊が編めてしまうからか。 また、現代ホラーの最前線にいるクリエイターの多くが、その原点に2ちゃんねるの「洒落怖」を挙げていることはとても興味深い。ほんの少し前のような気もするが考えてみればもう20年以上前になるのか。 印象に残ったのは「読者による考察ありきのホラーに対しては早晩揺り戻しが来て、骨太な作品、キャラクターが立っている、小説として面白いものが来るのでは」といった8章での梨氏の考察。 確かにエンタメとしてホラーを愉しむならそういったものがあくまでも主流というか基本にあって欲しい……と勝手ながら思ったり、する。
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テレビ・ネット・小説・ゲームにおけるホラーを語る対談集。今もっとも勢いのある作者たちが語るホラーの軌跡は非常に興味深い。過去から現在までどのような下地、またその発展がなされてきたのかを知る事ができる貴重な資料とも言えます。ジャパン・ホラー好きは必見。
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2年前くらいから好んでホラー小説も読み始め、この本は澤村伊智さん、背筋さん、梨さん目当てで手に取りました。 各媒介でホラーに全力投球している方の話が読めて興味深かったです。 特に製作者側視点の内容は、「怖い」って単純だからこそ深い感情で、それへの到達を様々なアプローチで目指して...
2年前くらいから好んでホラー小説も読み始め、この本は澤村伊智さん、背筋さん、梨さん目当てで手に取りました。 各媒介でホラーに全力投球している方の話が読めて興味深かったです。 特に製作者側視点の内容は、「怖い」って単純だからこそ深い感情で、それへの到達を様々なアプローチで目指していくの、さすがプロ…と感じました。 最後のホラー漫画の章は、オタクの熱量を感じて楽しかったです。絶対「裏バイト」出てくると期待していたら言及されたので嬉しい。 高校生の時、夢中で洒落怖やホラー寄りネット小説をガラケーのちっちゃい画面で読んでいた記憶がある。けれどテレビの心霊番組は見なかったし興味も薄かったな、と思い出しました。今でもそうで、やはり小説や漫画のようにガッツリ虚構、というか物語性のある作品が好きなんだと思う。もっと言えば自分で考察するより朧げにでも答えが見える方が好みで、「ホラー」を楽しむのに向いてない性格だと気付く。笑 ホラーという大枠ではなく、小説の1つのジャンルとしてホラーが好きなのかも。でも実話怪談や映像作品など、今まで触れてこなかった分野にも興味が湧いたなあ。
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TV番組、文芸、怪談、ゲーム、ネット動画、漫画といったさまざまなジャンルのホラーの現在の状況についての対談および批評。 『近畿地方のある場所について』の著者が自作について語る2章、ジャンルとしての民族ホラーについての6章、心霊ドキュメンタリーについての7章、ファウンド・フッテー...
TV番組、文芸、怪談、ゲーム、ネット動画、漫画といったさまざまなジャンルのホラーの現在の状況についての対談および批評。 『近畿地方のある場所について』の著者が自作について語る2章、ジャンルとしての民族ホラーについての6章、心霊ドキュメンタリーについての7章、ファウンド・フッテージについての8章がとりわけ面白かった。 複数の章で2ちゃんねるオカルト板「洒落怖」がベースと語られている。現代日本のホラーの重要なルーツの一つなのだろう。自分も一時期、もう10年とかそれくらい前に洒落怖や未解決事件まとめに熱中して深夜まで読み耽ったものだった。 都会からやってきたよそ者が閉鎖的な村の因習に巻き込まれて恐怖を体験する、といった民族ホラー的な話が自分は好きなんだが、本書の話者たちの対談を読むとこれってオリエンタリズムだよな、とちょっと反省した。もっともフィクションとして楽しんでいるのであって実際にそんな場所があるとは思っちゃいないが。 答えを明示せず解釈を読者に考察させる作品は読者に負担を強いるから近々揺り戻しが起きるんじゃないか、という梨さんの発言に同意。後味の悪さ、据わりの悪さはホラーの醍醐味だと思うが、もう歳だから考察は面倒くさいし疲れるのでわかりやすく作ってくれ、という気持が自分にはある。イシナガキクエとか、不気味な雰囲気はあったけれど作品としては説明不足すぎて楽しめなかった。背筋さんは近畿地方について明確に解答を用意してあると本書で語っている。
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確固たる日常、正気や常識がおびやかされる不安や恐怖を楽しむのがホラーというエンタメなのだとしたら、現在の日本では、その日常の正気や常識を何がどういう方法でおびやかしているのかが一覧できる。怖い話は(後悔することになっても)「聞きたくなる」ものであり、「話したくなる」ものなのは、危...
確固たる日常、正気や常識がおびやかされる不安や恐怖を楽しむのがホラーというエンタメなのだとしたら、現在の日本では、その日常の正気や常識を何がどういう方法でおびやかしているのかが一覧できる。怖い話は(後悔することになっても)「聞きたくなる」ものであり、「話したくなる」ものなのは、危機意識などによる本能的なものなのだろうが、それゆえに聞き手が次の話者になって拡散していく、つまり参加型であり共同制作されるジャンルという一面を持っている。そして日常をおびやかすものである以上、その怖い話の中で日常のリアルをどう保証するのかが、話者の腕の見せ所であり、それによってより聞く人をどれだけ怖がらせるかにかかってくる。ネットにより多くの人の参加が可能になり多くのホラーが発信され、より怖がらせる技術が磨きに磨かれているのが現在なのだろう。もともと特定の宗教観に支配されない無神論者なのが日本人なので、安直に黒魔術とかサタンとかに着地しない発想の自由さがある上に、基本的にどんなジャンルにおいても精巧な技術を極めるのがどうも得意な民族なので、「より本物らしく(したがって)怖い」を今はここまでひねって創っているのだなぁと感心する一方で、特に本書で言及されているわけではないのだが、たとえば怨念や情念のストレートな禍々しさなどは韓国もののほうがエグく感じる。他国のホラーの現在地で比較文化論なども読んでみたいと思った。
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禍話のかぁなっきさん目当てで買ったけど出てくる人のほとんどを知っていたので大変おもしろく読んだ。文字の怪談と声の怪談の章が特によかった。吉田さんの目指す、引用、論考のための実話怪談のアーカイブ化がとても興味深いのでぜひ実現して欲しいと思う。
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感想 湿っぽい夏。夜歩いているとどことなく不気味な感じがする。そんな私たちの素朴な感覚。闇に溶けているものが何かわからない。そこがいい。
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ホラーというより、現代人がどういう時に不気味さとか違和感を感じるかクリエイター目線で語られてていて、今年読んだ本の中で1番面白かった。 発想の元となったコンテンツとか、どんな狙いがあったかを知れてワクワクした。 大森さん同い年か〜。。同じコンテンツ見ても全然違う視点もってそうで...
ホラーというより、現代人がどういう時に不気味さとか違和感を感じるかクリエイター目線で語られてていて、今年読んだ本の中で1番面白かった。 発想の元となったコンテンツとか、どんな狙いがあったかを知れてワクワクした。 大森さん同い年か〜。。同じコンテンツ見ても全然違う視点もってそうで一回話してみたい!なぜテレビでやる意味があったのか語ってるところもめっちゃ解像度高くて納得感あったし、何より業界愛を感じられて良かった。 今朝聴いてたコテンラジオの最新話で、最も楽しいのは自分と違う視点で捉えてる仲間の感想聴いてアハ体験する時って語られてたの思い出した。読書会また参加してみようかな。 こういうニッチ市場の業界人が語る本は何となく避けてたけどこれからは食わず嫌いして読んでみる。
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