響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のみんなの話 の商品レビュー
第116回アワヒニビブリオバトル テーマ「ムシ」で紹介された本です。ハイブリッド開催。 2024.7.2
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もう北宇治の物語は読めないと思っていたのでそれだけでも嬉しい一冊。 同時に読み終えると同時に「今度こそ本当に終わりなんだなあ」と感傷に浸ってしまう一冊。 もし新たな北宇治の物語が紡がれるとしても、それは「響け!ユーフォニアム」というタイトルではないはずだ。 寂しくもあるが、長年本...
もう北宇治の物語は読めないと思っていたのでそれだけでも嬉しい一冊。 同時に読み終えると同時に「今度こそ本当に終わりなんだなあ」と感傷に浸ってしまう一冊。 もし新たな北宇治の物語が紡がれるとしても、それは「響け!ユーフォニアム」というタイトルではないはずだ。 寂しくもあるが、長年本読みしていればこういう別れも数多経験している。だから寂しくなったら読み返せば戻ってこれるのも理解している。 それでもやっぱり、寂しいもんやね。ありがとう。
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この本、特に奏視点の「幕間・クラーヴェ」は、前作『決意の最終楽章』の解決編として書かれたものだと思います。 『決意の最終楽章』は構成を読むのが難しい本で、コンクールでの勝利や進路など様々な伏線を回収しつつも、シリーズ最大の異物である黒江真由が、なぜか全国大会オーディションからフェードアウトしていきました。 普通、久美子のスピーチに対して、真由からの何らかの反応があるはず。 それなのに、このカタルシスに至らない物語展開でしたから、大いに戸惑ったものです。 当時は、久美子と真由との価値観の対立が平行線を辿ることで、久美子の部活への姿勢や進路選択への原動力とするとともに、メタ的には物語の圧力に屈しない作者の現実主義を示したものと解釈していました。 この点、シナリオを原作とは変えたアニメ12話の方が、エンターテインメント的に飲み込みやすかったと思います。 久美子は奏者としてオーディションには負けてましたが、演奏において嘘がつけない真由の心に迫り、自己のこだわりや恐怖を自覚しながら実力主義を貫きます。 久美子は、価値観の異なる真由に対しても、言葉を「響かせる」ことができたということ。 それは1年生編からの久美子の行動原理(いざこざへの居合わせから黄前相談所へ)や主要なテーマ(実力主義、「特別になりたい」、百合)を止揚して、物語的なカタルシスとともに久美子の成長を示したと思います。 久美子は試合に負けて勝負に勝った。優勝! …と思わされたアニメ12話放映直後に発売された本書、どんなものが出てくるか期待していたところ、「幕間・クラーヴェ」でとても驚かされました。 原作では、真由こそが試合に負けて勝負に勝ったというのですから。 「みんな幸せになるのがいちばんいい」という真由の価値観を貫いたからこそ、オーディションでは熱量が足りずに落ちたと。 この自己を差し置いて他者の幸福を願う価値観について、『決意の最終楽章』を読んでいた当時、私は本気で受け止めていませんでした。 メタ的にも、宮沢賢治や衛宮士郎ではないのだから、現実主義色の強い綾乃文学でこの価値観を貫けるキャラが存在できるわけがないと、完全にミスリードしていました。 そして、ミスリードは、北宇治の実力主義に染まりきった久美子や奏においても同じでした。 真由はあれほど同じ主張を繰り返していたのに、この頭の良い2人が、半年以上も真由を理解できず恐怖や敵意を抱いていました。 その奏が、「幕間・クラーヴェ」では真由に頭を下げ、完敗を、真由の価値観が本物だということ認めます。 また、『決意の最終楽章』で久美子は、転校の経験とか、強力に目指すべき目標がないとか、実力で他者を追い落としてしまって失敗したとか、そういったことから真由が自分に似ていると評しました。 しかし、これもミスリード。 「幕間・クラーヴェ」で、奏は真由を「頑固」と評します。 この自らの価値観に対する頑固さこそ、久美子と真由が本当に根っこのところで似ている部分だったはずです。 原作は、価値観の対立をずっと描いてきました。 それは時には乗り越えられましたが(久美子とあすか、久美子と奏)、では、頑固者が2人揃ったらどうなるか。 『決意の最終楽章』で繰り返された「辞退しようか」のやりとりは、両者が頑固だということの表れでしかなかった。 頑固者が揃ったからこそ、平行線のまま、カタルシスに至らない。 カタルシスに至らないことを、当のキャラクターが望んでしまう。 真由は、自分にスポットライトが当たって、自分が救済されることなんて望んではいなかった。 だから、『決意の最終楽章』は言わばミステリーの出題で、「幕間・クラーヴェ」はその解決編です。 私はこのミステリーを解くことができませんでしたが、アニメ3期という補助線を得た上で、この5年越しの解決編に大いに唸らされました。 今こそ奏が真由にしたように、武田先生に頭を下げたい気持ちで一杯です。 最後に、「未来への約束」で、久美子と真由が、見つめ合って、息を合わせることができたことが本当に嬉しいです。 橋本先生が言い続けてきた「音を楽しむ」ことの一側面が、コンクールを離れたところで実現されましたね。 原作は、本作においてカタルシスに至ったというわけです。
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読み進めてくうちに、とうとう終わってしまうんだなと思ってしまいました。それと同時に、11話の未来への約束を読んでる間、頬が緩みっぱなしでしたが、ずっと続いてほしい。幸せが終わってほしくないと思いました。奏と真由、真由と久美子の関係がいい関係になって凄く安心しました。卒業後、久美子と真由は会わないのかなと思ってましたが、良好な関係が続きそうでよかったです。 麗奈と久美子の「愛してる」ゲームも最高でした。 特に印象深かったのが、~閉幕・パストラーレ~の久美子が奏に「北宇治を頼んだよ」といった後に、二人の目線の高さは、今や同じだったという言葉です。こうやって次の代へと受け継がれていくんだなと、感慨深かったです。 自分にとって、”特別”な作品でもある本作が、アニメでも、原作でも終わりを迎えることは寂しさもありますが、その分、ありがとうございました。の一言に尽きます。 感無量です。 そして、北宇治の音楽は続いていくのです。
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終わってしまった、。久美子の物語がとうとう終わってしまった。ずっと追いかけてきたから、とても寂しい。でも、北宇治高校吹奏楽部の音楽はこれからも続いていくし、久美子たちの物語もえがかれないところで続いていく。そう思うと、なんだか自分も頑張ろうと思えた。 短編集ということもあって、とてもとても読みやすい。3年生編が重くて、読むのに大量のエネルギーがいったけど、今回のはそういうのはなかった。 むしろ、小話が多くて、これまで見えてなかった北宇治高校吹奏楽部の部分を知ることができた。 かなで視点の物語(幕間)がとてもいい。これまで頑張ってきた久美子先輩が報われるように、自分の思いも叶うように、黒江真由と対峙してて、かなでの本音がありありとわかった。 個人的には、音楽つよつよ3人集の昼ご飯でのやりとりよかった。麗奈が照れてる写真を久美子に見られたくないっていうのは、ほんと特別な関係だからこそだもんなって思ったけど、みどりちゃんに押されて背徳感溢れることしてんな〜見抜かれるよって思った。 みっちゃんが前に立っているときと、りりりんが前に立っているときの部の雰囲気、その違和感に気づける久美子は教師向き。集団の雰囲気の機微に気づいて、先手先手で動けるのは才能の1つ。教師になってからも、久美子のやり方で頑張ってほしい。 3年生編では、高校卒業したら、久美子と真由は絶対に会うことはないと思ってたんだけど、今回の『未来への約束』で一気に変わった。これからもきっと会う機会はあるんだろうな。そのときはぜひ3年生編での真由のムーブを笑い話として語ってほしいな笑 これからも北宇治高校吹奏楽部の音楽が続いていきますように。
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発売時点で最新刊となる本書は、アニメ「響け!ユーフォニアム3」と同じ、主人公が3年生の時期を扱った短編集。
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