ソコレの最終便 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
終戦間際の満州を舞台にした冒険小説。 戦時下の惨状を描きながらも、爽やかな読後感は、凄惨極まりない戦場で失われがちな、人間本来の優しさや、正しくあろうとする足掻きを、愚直なまでに貫き通す主人公たちの姿がもたらしたものに他ならない。 昭和20年8月9日。陸軍大尉朝倉九十九率いる一〇一走行列車隊に、日本軍の秘密兵器列車砲を回収、本土決戦に備え大連港から積み出せとの特命が下る。 大連からの輸送船の出港のタイムリミットと、日ソ中立条約を反故にし北から迫るソ連軍。分かりやすいくらい分かりやすい、舞台設定。 その中で、隊員たちの他、道中に加わる避難民らとの反発や理解、協同による作戦遂行のエピソードに、それぞれの登場人物の性格、背負って立つ背景、生い立ちが織りなされれば、ただただ満鉄の軌道のごとくの物語の展開に身をゆだねていればOKという、大衆エンタメ小説。 どうやって登場人物を考案し、どうプロットを組み立てたかが目に見えるような展開だった(笑) 登場人物も分かりやすく、ヒロインは17歳の勝気な看護婦雲井ほのか。任務と人命を天秤にかける朝倉とことごとく対立するのは既定路線。 満鉄の老整備士の知恵と技術で危機を脱し、配下の隊員たちの活躍を、場面場面で追っていく。 砲隊長の金子が内地に残してきた妻子のことを語れば、あぁ、これはもう死亡フラグだな、というのも分かりやすいくらい分かりやすい。 佐賀県出身の著者。 大連を引き上げた避難民を乗せた船が目的地の神戸ではなく長崎佐世保に寄港するのは、故郷の近く、長崎の惨状を描くためであろう。 朝倉の出身地も長崎市内とした。殿を務めるため大連港に居残った朝倉に代わり実家を訪ねる雲井と迎える姉との対面は、涙なくして読めない場面だった。
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装甲列車が存在していたこと自体を知らなかった。さらに終戦間際にソ連と戦いながら大連を目指す。死闘だ。 そこに女性看護師がとても良い存在感を出している。 8月にこそ読むべき本であった。
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戦争の無情を語るありがちなストーリーだが、ソコレという装甲列車の大連までの軌跡は読み応えがある。戦争物語はおもしろいと同時にどうにもおもしろいと思う気持ちが気持ちよくない。
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終戦日直前を描いた戦争小説は多々ある。 なぜ、もっと早く終戦にならなかったのか。 そのタイミングで起こる悲劇が、世界各地で起きたはずだ。 本作の舞台は満州。 陸軍列車第四連隊の朝倉は、満州のあるものを日本に輸送するように関東軍から指令を受ける。 それは、戦艦大和の主...
終戦日直前を描いた戦争小説は多々ある。 なぜ、もっと早く終戦にならなかったのか。 そのタイミングで起こる悲劇が、世界各地で起きたはずだ。 本作の舞台は満州。 陸軍列車第四連隊の朝倉は、満州のあるものを日本に輸送するように関東軍から指令を受ける。 それは、戦艦大和の主砲を凌駕する装甲列車、通称ソコレだった。 昭和二十年、8月9日、列車連隊は牡丹江を出発し、8月16日のリミットを目指してソコレ九十四式の回収へ向かう。 しかし、時同じくしてソ連が日ソ不可侵条約を破棄して満州に押し寄せていた。 虎口でソコレを回収、鉄道橋爆破により大回りで哈爾賓、新京を経由し大連を目指す。 その途中途中で彼らが遭遇したのは、日本人の死体の山と、押し寄せるソ連兵だった。 終戦末期の満州を舞台にしたロードムービーともいえる戦争小説。 多くの犠牲を払った彼らの努力は、すべて無意味だったのか。
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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO82303620V20C24A7BE0P00/
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命を惜しむな。名こそ惜しめ。 兵隊の命を一銭五厘の価値にしか見ない関東軍幹部から、満州深部に配属された朝倉九十九は火砲列車を大連に運ぶ任を受ける。 が、敗戦間際のロシアの侵攻を受け朝倉率いる列車隊は窮地に陥る。 殺し殺される戦争の論理の前に現れた人道の倫理を貫く17才の雲井ほのか...
命を惜しむな。名こそ惜しめ。 兵隊の命を一銭五厘の価値にしか見ない関東軍幹部から、満州深部に配属された朝倉九十九は火砲列車を大連に運ぶ任を受ける。 が、敗戦間際のロシアの侵攻を受け朝倉率いる列車隊は窮地に陥る。 殺し殺される戦争の論理の前に現れた人道の倫理を貫く17才の雲井ほのか看護婦は、戦争の論理に抗い正しい行いで朝倉に影響を与えてゆく。 朝倉は軍隊に対する疑念を抱える将校であり、現代の倫理と共鳴する考えを持つ人間なので読者は彼に共感を持つ。ただ、彼は軍人であり部下を率いる身分だけに、人命を軽んじる軍隊に拒否感を持ちながらも、軍命に従わざるを得ない役職であった。 戦場を舞台に極限の環境の下で人間の善意を貫く葛藤を、朝倉が善意に傾倒していく姿が悲しくも心暖まる。 単なる戦争物ではない感動があった。
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