AIは短歌をどう詠むか の商品レビュー
読書会をきっかけに、以前から気になっていた本書を図書館で借りた。移動中に読了。 タイトルに私が抱いた印象は「AIは短歌をよめるのか?!」という驚きと疑問。人の心が宿る短歌を、心を持たないAIがよめるのだろうか。 結論は、「現時点ではAIによる学習と人間の工夫により、短歌らしい...
読書会をきっかけに、以前から気になっていた本書を図書館で借りた。移動中に読了。 タイトルに私が抱いた印象は「AIは短歌をよめるのか?!」という驚きと疑問。人の心が宿る短歌を、心を持たないAIがよめるのだろうか。 結論は、「現時点ではAIによる学習と人間の工夫により、短歌らしい言語配列が可能となる」ということ。 AIに短歌を詠ませるために、膨大な既存のデータを覚えさせる。言わば、詠むために読む作業が必要なのだ。言い換えれば、AIが出力する短歌は、人間が過去に生み出した膨大な創作物の集積から生み出されたものであるといえる。 ひとにあって、AIにないもの。それは、短歌を詠む動機である。また、言語データとしてデータベース化できない個人の体験を含んだ短歌の創造も、ひとにしかできない。 逆に、AIにしかできないこと。それは短時間に数百の短歌を書くこと。 ひとはあたたかいとよく言われる。 「AIはあたたかい」この言葉の響きはどうだろうか。人は冷たくなることがあるが、AIにはそのようなことがない。そう思うとAIは確かに温かい。 AIと人のよむ短歌の違いから、人が短歌をよむ意義を再認識できる。 湯川秀樹さんは著作の中で『人間は具象以前の世界を内蔵している。そしてそこから何か具象化されたものを取り出そうとする。科学も芸術もそういう努力のあらわれである』と述べていることを思い出した。 AIとの付き合い方を考えるヒントになった。
Posted by
AIで短歌が創れるか? ここで紹介されるAIは上の句の入力を受けて、下の句を出力するというもので、お題に対して一句詠むというものではない。どちらかと言うと、次のフレーズを選択・抽出するものだ。それも予めセットされるある一定の言語モデルに準拠してだ。 なぜ、無限の言語モデルではない...
AIで短歌が創れるか? ここで紹介されるAIは上の句の入力を受けて、下の句を出力するというもので、お題に対して一句詠むというものではない。どちらかと言うと、次のフレーズを選択・抽出するものだ。それも予めセットされるある一定の言語モデルに準拠してだ。 なぜ、無限の言語モデルではないのだろう。そのあたりは今後さらに発展するのでしょうね。 現段階では、歌人の凄さが際立つね。AIが出力した句でも、歌人(本書では俵万智さん)が、単語1つ入れ替えるだけで見事な句になったりする。そっか、AIはまだ推敲はできないんだね。
Posted by
調整する前の短歌AIは説明的であり当然そうなるであろうことを出力し、それは面白くない。短歌の味わいが、ずらし、飛躍、ワンダーにあることをあらためて気付きました。短歌AI初夏の光とともにやってくる「午後の地下鉄ふくらんでゆく」→山手線がふくらんでゆくに添削。初夏の光、地上を走る山手...
調整する前の短歌AIは説明的であり当然そうなるであろうことを出力し、それは面白くない。短歌の味わいが、ずらし、飛躍、ワンダーにあることをあらためて気付きました。短歌AI初夏の光とともにやってくる「午後の地下鉄ふくらんでゆく」→山手線がふくらんでゆくに添削。初夏の光、地上を走る山手線、目には鮮やかですが、外は夏の陽、地下鉄ホームのもわっとした空気ごと入線してくる車両のことかと思うと短歌AIにもシンパシーを感じますがこれが説明的になる要素かもしれません。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「この本の目的はAIを駆使した短歌のつくり方を解説することにはありません。むしろ、AIが短歌をつくる過程を通して人が短歌をつくること、ひいては私たちが毎日扱う言葉について、新しい視点から考えることを目指しています」 残念ながら、「むしろ~」の考察は平凡です。文量もほとんどありません。大部分は「AIが短歌をつくる過程」です。この本の内容はこちらになります。 序 章 コンピュータで言葉を扱う自然言語処理について説明 第1章 新聞社の取り組みである短歌AIの概要 第2章 型を扱うAIの仕組みや挙動から短歌の定型 第3章 学習データによる言語モデルの生成の違いから作品に触れることの重要性 第4章 言語モデルの生成手法から歌をつくるための語彙選択 第5章 AIとの付き合い方 以下、お気に入りの箇所。 「永田さんは「自分の時間だけには嘘をつかないで」歌をつくり続ける、ということをおっしゃっていました。これは、過去の出来事や未来に起こりうることを頭の中で展開して短歌をつくるのではなく、まさに自分が立っている「いま」から、いまの自分にしかつくれない歌をつくるということです。そしてそれが、人生という有限の時間の中で歌をつくる人間の特権である、ということではないでしょうか」
Posted by
朝日新聞社で短歌生成 AI を開発している方が執筆した一冊。今熱い生成 AI に使われている技術のいくつかを、短歌生成 AI を語る中で簡潔に説明されています。「生成 AI って実際何をしているの?」という生成 AI への第一歩としてオススメの読み物だと思います。(数式は用いず...
朝日新聞社で短歌生成 AI を開発している方が執筆した一冊。今熱い生成 AI に使われている技術のいくつかを、短歌生成 AI を語る中で簡潔に説明されています。「生成 AI って実際何をしているの?」という生成 AI への第一歩としてオススメの読み物だと思います。(数式は用いず概念の説明に留められているので誰にでも読みやすいと思います!) また、短歌という創作活動を、AI を通して捉え直すことで、私のような短歌に真正面から向き合ったことのない人間でも短歌の面白さの一端を見られたような気がします。筆者の説明に乗りながら 「この設定の AI が作る短歌はだいぶおかしいな」 「これは AI 製だけどちょっと面白い?」 「いやぁ~でもその道の人の作るものには到底届いていないな」 と人や AI が作った色んな 31 文字を楽しむことができました。 そして、昨今議論が過熱している、「そもそも創作分野に AI が入ってくることの是非」という問いに対する筆者自身の視点も書かれています。もちろんイラスト、音楽、その他色々......とジャンルによっておかれている状態は異なるので一概には言えませんが、自分の専門と、知り合いで創作活動をしている人の声との間で、AI との距離感をつかみあぐねている私にとって、筆者の視点は今後の思考の重要なヒントになったように思います。
Posted by
丁度、AIが生成した短歌のクオリティの高さに驚き、これなら素人の私がわざわざ拙い歌をうんうん考えて詠む価値など無いのでは?と考え出した時に出会った本で、すぐに購入して読みました。 読んだ結果、己なりのAIとの上手い付き合い方をしていこう思え、趣味の短歌を続ける意味も見出せました。...
丁度、AIが生成した短歌のクオリティの高さに驚き、これなら素人の私がわざわざ拙い歌をうんうん考えて詠む価値など無いのでは?と考え出した時に出会った本で、すぐに購入して読みました。 読んだ結果、己なりのAIとの上手い付き合い方をしていこう思え、趣味の短歌を続ける意味も見出せました。ありがとうございます。 分かりやすい文章でAIの仕組みについても知れて良かったです。
Posted by
- 1