晩年 の商品レビュー
1番印象に残ってるのは、道化の華。 まさか、小説の途中途中で、太宰自身の考えが入ってくるなんて夢にも思わなかった。 今まで小説を読んできた中で初めてのことだった。
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岩波文庫から『晩年』が出版されたので読んでみました。岩波文庫は注釈が付いているので読みやすかったです。注釈なしの他の文庫で挫折して途中で放り投げた人は、再チャレンジにいいと思います。 さて『晩年』ですが、太宰治の最初の創作集で15作品を収録。巻末の解説には、名だたる文人たちと解...
岩波文庫から『晩年』が出版されたので読んでみました。岩波文庫は注釈が付いているので読みやすかったです。注釈なしの他の文庫で挫折して途中で放り投げた人は、再チャレンジにいいと思います。 さて『晩年』ですが、太宰治の最初の創作集で15作品を収録。巻末の解説には、名だたる文人たちと解説者が、『晩年』が最も優れている作品集としてあげています。自分は、新潮文庫の『きりぎりす』の方が面白い短篇がよくまとまっていて好きなのですが、これ如何に?とはいえ何作か良かったものもありました。 『思い出』 主に幼少期から少年時代にかけて、自らの人生を振り返る自伝的小説。『津軽』で鍵となるタケが登場します。それにしても、自然派と言えば聞こえはいいですが、壮大な暴露大会と化しているのは、当時の親族はどう思ったのか気になるところ。 『地球図』 キリスト教布教に信念を抱くローマからの使徒を、新井白石らが審問する歴史小説。当人の心情を考えると、とても悲しく思いましたが、当時のキリスト教の背景にある、闇の部分を考えると、これも仕方ないことだと思いました。 『道化の華』 太宰治の心中事件を、後に『人間失格』の主人公である大庭葉蔵と、僕という人物が客観的に外から評しながら語りかける様は、ロシア文学やフランス文学の作者から読書へのツッコミのようで面白い。あと、なぜ自分は小説を書くのだろうと自問するところが好き。 『猿面冠者』 小説を生み出す苦しみを、ギャグを織り交ぜながら書き連ねる様が面白い。別に書かなくても牛乳配達でもいいじゃないかと自虐的に語っているところが面白い。 『彼は昔の彼ならず』 貸家に入居してきた住人が、仕事もせずに家賃滞納したまま居座るダメ人間に翻弄される話し。この男、嘘ばかり言っていて、森鷗外『青年』のモデルは自分だと言ったところが面白かったです。 あと、『魚服記』『猿ヶ島』『ロマネスク』も秀作です。『雀こ』は津軽弁が、さっぱりわからなかったです。 追記: 岩波文庫で長年放置されていた太宰治ですが、ここにきて刊行ラッシュになる模様。 (予定) 『富嶽百景 女生徒 他六篇』(2024年9月) 『走れメロス 東京八景 他五篇』 『十二月ハ日 苦悩の年鑑 他十二篇』 『惜別 パンドラの匣』 『ヴィヨンの妻 桜桃 他九篇』 (既刊) 『右大臣実朝 他一篇』 『津軽』 『お伽草紙 新釈諸国噺』 『斜陽 他一篇』 『人間失格 グッド・バイ 他一篇』 『晩年』 つまり、既刊の中でも書体の古い『富嶽百景 走れメロス 他ハ篇』の収録作を分けるみたいです。ワイド版も、そのうち分けるのでしょうね。
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