町なか番外地 の商品レビュー
江戸川のほど近くにある、4室だけの小さなアパート「ベルジュ江戸川」。 そこに住む人々が直面する悩ましい出来事と、それに住人たちが向き合えるようになるまでを描く連作短編ヒューマンドラマ。 ◇ 東京メトロ東西線。その電車から私が毎日見てしまうのが妙見島と呼ば...
江戸川のほど近くにある、4室だけの小さなアパート「ベルジュ江戸川」。 そこに住む人々が直面する悩ましい出来事と、それに住人たちが向き合えるようになるまでを描く連作短編ヒューマンドラマ。 ◇ 東京メトロ東西線。その電車から私が毎日見てしまうのが妙見島と呼ばれる、2本の川に挟まれた陸地の部分だ。2本の川と言ってもどちらも旧江戸川で、わりと大きな道路が橋代わりに渡されているとは言え、どう見ても孤島だった。そこを私は、通勤の行きも帰りもつい見てしまうのだ。 島の目印はラブホの大きな屋上看板。別にラブホに興味があるわけではない。 ただ、都会の陸地と切り離された立地を見ることで少しだけ日常から解放される気がする、その感じが気に入っているのだ。 何と言っても「少し」という感じがいい。完全には日常から離れたくないから。 考えてみれば、私がマッチングアプリに登録したのも同じ理由だったのかも知れない。別にカレシが欲しいというわけではなく ( いや欲しくないことはないのだけれど ) 、日常と少しだけ違うことをしてみたかったのだ。 してみてわかったのは、マッチングアプリというのはなかなか便利なツールだということ。大学卒業後に4年間できなかったカレシが、アプリを始めてから2年間で2人もできた。 最初から条件を絞り込んであるので、会ってみて全然好みではなかったということもない。 そんなことを考えているうちに、電車は南砂町駅に着いた。 ( 第1話「妙見島 ベルジュ江戸川201号室 佐野朋香」) * * * * * 小野寺さんお得意の、アパートを舞台にした連作ヒューマンドラマ。日常の人間関係の機微をテーマにしたストーリー。 各話とも本当によくある出来事をテーマにしているので、リアリティがあり共感しやすい。そして住まいや居住区の意義とその大切さを盛り込んだ少々ファンタジーめいた展開にほっとさせられる。 これまでも小野寺さんの作品には、そのようなコンセプトで描かれた作品が少なからずありました。だいたい同じような流れなのですが、それでも新作が出ると喜んで読んでしまうのです。 ストーリー的に、「主人公がひどいことにはならないというのが予想できるから」というのが大きな理由だと思いますが、それ以外にも2つあります。 1つは、主人公が結構いろんなことをウダウダ考えているのがおもしろいということ。 本作では、第1話の佐野朋香と第4話の新川剣矢のウダウダ具合いがいい。しかもこの2人をベルジュ江戸川の 201号室と 101号室というお隣ならぬ上下の関係に持ってきているのも、ご縁が期待できていい設定だと思います。 もう1つは、主人公がどちらかと言うと不器用で損をしがちな性格なので、つい応援してしまうところ。さらに、損な役回りになってウジウジ悩んでも最終的には前を向こうとするようになっていくところも、読んでいて安心できるから好きなのだと思います。 本作では、第2話の片山達児と第4話の新川剣矢がまさにそういうタイプです。ほっとけない、励ましたくなる、そんな不器用さがいい。 さて本作について、もう少し触れておきます。 4人の主人公は、自分の立ち位置がまだわからない、または決まっていない、そんな人たちです。なんせ不器用な人たちですから。 そして住んでいるのが、実は「番外地」と呼ばれるところで、東京か千葉かが微妙な地域なのです。この符号というか設定が特に、しゃれていていいと思いました。 物語の最後に、片山達児が 102号室を出て妻子とともに新天地へ向けて出発していく場面があります。 片山は仕事や家庭での自分の立ち位置についに気づいたことで、このベルジュ江戸川を退去 ( 卒業? ) するという、実によく考えられたラストでした。 ( あとの3人も退去が近そうな感じで、第4話に描かれています。)
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ベルジュ江戸川というアパートに住んでいる4人の日常を書いてます。 小野寺さん読んでると、江戸川にちょっと詳しくなれる気がする。
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特に何が起こるわけではないが 同じアパートの住民達の日々の心の機微をうまく物語にしている とても読みやすく、日常的過ぎて自分にあてはめたりしてスルスルと読めた
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最近、小野寺さんの作品の感想はいつも同じことを書いている気がするけど…今作も淡々と静かに日常が描かれた物語だった。 小野寺さんらしいと言えばそうなんだけど、時間が経ったらきっと内容を覚えていないだろうなぁ。 他の作品とも区別がつかなくなっていそう。
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番外地、どこにも所属しない場所。 メッセージがあるようなないような、 四つの物語。 それが小野寺さんの小説。
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ベルジュ江戸川という集合住宅に住む人のお話。 失敗の人生に目を背けたいと思う時もある。 だけど、失敗と思っていたことは単なる経験で、失敗ではないことがほとんどなのかもしれない。 見たいものも見えているものは違う、悲観しなくても案外幸せだし、幸せの種は身近にあるのかもしれない。
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私の好きな小野寺さんらしい優しさを沢山感じられて良かった。 ポプラ社から出てる小野寺さんの作品は 私にとってはハズレなし。
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なんてことない日常の物語。でも、なんてことない日常ってあまりなく、誰しも少しだけのなんてことある日々を生きてるって感じさせられる。少しのなんてことあるきっかけで変わるなんてことない日常が心地よい。
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心が暖かくなり、様々な愛を感じることのできる小説。 アパートに暮らす4人の各々のストーリーを楽しめることができます。 人はそれぞれ抱えているものがあり、住民の各視点や人生観を楽しむことができました。 アパートでの人との繋がりをいい意味で感じることができると幸せだなっと思います...
心が暖かくなり、様々な愛を感じることのできる小説。 アパートに暮らす4人の各々のストーリーを楽しめることができます。 人はそれぞれ抱えているものがあり、住民の各視点や人生観を楽しむことができました。 アパートでの人との繋がりをいい意味で感じることができると幸せだなっと思います。人として当たり前ですが、挨拶をすると後々の効果を得れると強いですね。 また、家族愛って素晴らしいと思いました。 気分転換に読むにはちょうどいい本でした。
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江戸川区のアパート4室に住む、独身女性、男性、3人家族を描く連作短編集。 マッチングアプリが登場するなど現代的な暮らしの悩みを割とサラッと表現する。小野寺史宜らしい。ただインパクトは弱めなので3ヶ月経ったら内容は忘れると思う。
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