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共感と距離感の練習 の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2024/10/01

私はおそらく普通より共感力が高い人間で、若いころはとくに、そういう性質により心が苦しくなることも多々あった。 歳を重ねるごとに「自分と他人のあいだにきちんと境界線を引くこと」を心がけるようになったけれど、元々の性質はそんなに変わっていないと思う。 でも、共感する、ということについ...

私はおそらく普通より共感力が高い人間で、若いころはとくに、そういう性質により心が苦しくなることも多々あった。 歳を重ねるごとに「自分と他人のあいだにきちんと境界線を引くこと」を心がけるようになったけれど、元々の性質はそんなに変わっていないと思う。 でも、共感する、ということについて深く考えたことはそんなになかった、と本書を読んで思った。自然発生的に起こってしまうもの、と捉えていたからだ。 女性はとくに共感だけで数時間話せてしまうようなところがあるけれど、「わかるわかる」と言いながら、その「わかる」について深掘りすることはほぼない。 著者の小沼さんはLGBTQのQにあたる、「クィア」に属するセクシャリティの持ち主だそう。「クィア」について調べてみたら「男性にも女性にもはっきり当てはまらない性自認をしている人の総称」とあった。 そして元々「わかるかも」が口癖になっていた時期があったそうで、それを友人に指摘されて以来、言わないことを心がけるようになったとのこと。 私は共感力は高いほうだと思うけど、セクシャル・マイノリティに関しては、かんたんに「わかる」とは言えない。自分がそうでないものを、心からはわかるとは言えない。 著者も「クィア」に関することではすぐに「わかる」と言われるのは抵抗があるのだろう、と感じる一節があった。 それはそうだ。生まれてからこれまで深く悩むことも多かったであろうことについて、かんたんに「わかる」とは言われたくないだろうと思う。それはセクシャル・マイノリティに限らず、人のあらゆる面において言えることだ。 共感してもらえて、誰かとわかり合えて、とても嬉しかったり安心することもある。一方で、かんたんにわかられてしまうことに抵抗を感じる場合も、やはりある。 共感についての話題以外でも、読んでいて、著者はとても繊細な方なのだな、ということを感じた。 日々のさまざまな事柄について、少し立ち止まって考えたり、違和感について見つめてみたりする。受け流すことで楽に生きられるようにはなるけれど、それを自分の心が良しとしない人間は、世の中に一定数いる。 共感力も想像力も、他者と良好なコミュニケーションを取るためには必要だ。だけど共感に関しては、時と場合を考えずに表明しすぎると、相手を傷つけてしまうこともある。 本書のタイトル通り、共感と距離感、セットで持つことが大事なのだと思う。ときに混ざり合い、ときに混ざり合わないでおくこと。わかり合えても人は独りだということは、けして哀しいことではない。 「相手になれそうなほどの共感力」を持つからこそ、距離感も同時に練習することが必要。自分が自分であり、他者と同化できるわけではないことを自覚するために。 そんなことを言いながら、最終的に、「わかるなぁ」と思いながら、読み終えました。それはまぁ、いいのかな。笑

Posted byブクログ

2024/09/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

シスジェンダーヘテロセクシャルとしてゲイの方の感性、苦悩を知ることができました。とはいえ著者も申している通り「この発言がゲイの当事者の1人の意見であり、総意ではない」ということを気をつけながら読みました。 一つ一つのエッセーで考えさせられる。特に企業とLGBTQが絡んでビジネスにされてしまっているところと、ryuchellの件。

Posted byブクログ

2024/09/16

表紙とタイトルだけで本書を手に取ったので、想像していなかった内容に戸惑いました。 普段気にもしていなかったけれど、自分が圧倒的に大多数側に分類されること、それでも日常で自分と異なる立場の人に対する差別的な態度に接すると自然に怒りが湧いてくるのだけれど、それはここでいう「わかる」に...

表紙とタイトルだけで本書を手に取ったので、想像していなかった内容に戸惑いました。 普段気にもしていなかったけれど、自分が圧倒的に大多数側に分類されること、それでも日常で自分と異なる立場の人に対する差別的な態度に接すると自然に怒りが湧いてくるのだけれど、それはここでいう「わかる」には、到底当てはまるものではないのだと思う、そういうことを考えたりしました。 自然に書かれている単語や表現にも分からないことが多くて検索しながら読みました。 こんなにも知らないのは、きっとそれらにこれまで触れてきても気づかずに通り過ぎてきたからで、それが「無関心」ということなのだと思いました。 ではどう考えればいいのか?なにか行動しなければいけないのか?今回はただ知ったということだけでも得るものがあったのか、色々と考えてしまいました。 著者があまりにも追い詰められ、思い詰めているようで読んでいてしんどくもありました。

Posted byブクログ

2024/09/01

シスジェンダーのゲイである著者による、クィアにまつわるエッセイ LGBTQとして一緒くたにせずにそのグラデーションをしる、なんてことは当然で、 この本は、そのグラデーションの深さ多様さをまざまざと見せつけてくる 普通などないのだし、異性愛者と言われることにドキリとした違和感を感...

シスジェンダーのゲイである著者による、クィアにまつわるエッセイ LGBTQとして一緒くたにせずにそのグラデーションをしる、なんてことは当然で、 この本は、そのグラデーションの深さ多様さをまざまざと見せつけてくる 普通などないのだし、異性愛者と言われることにドキリとした違和感を感じることから始めるしかない

Posted byブクログ

2024/08/24

大部分でマジョリティ側である私の言動は、何度も誰かを誤解し、理不尽を押し付け、傷つけたまま突き放して来たんだろう。怖いと思ったし、このままじゃだめだと思った。もっと知りたいし関わりたい。

Posted byブクログ

2024/08/21

ちゃんと中途半端でいたい 居心地が悪い。でもこれはきっと引き受ける価値のある居心地の悪さだ でも俺はずっと居心地が悪い 単純化して、相対化していた時の方がずっと生きやすい でももう戻れない。俺はきっとずっと中途半端だ。 この中途半端さは著者の言うちゃんとした中途半端さではなく、も...

ちゃんと中途半端でいたい 居心地が悪い。でもこれはきっと引き受ける価値のある居心地の悪さだ でも俺はずっと居心地が悪い 単純化して、相対化していた時の方がずっと生きやすい でももう戻れない。俺はきっとずっと中途半端だ。 この中途半端さは著者の言うちゃんとした中途半端さではなく、もっとタチの悪い中途半端だ。 自分の理解できる範囲のみ歩み寄り、自分の理解できないものは単純化、相対化して線引きする。そう言う中途半端さだ。居心地が悪い。 結局口を開いても開かなくても人を傷つけてしまう私は、自分と合った、傷つけても傷つけられてもいい人とひっそりと幸せに暮らすしかないのだ 男性女性という線引きが誰かを苦しめることのなることもわかっている でもそうした線引きが作ってきた歴史や文化を私は否定できない、したくない このしたくない、というきもちに もう思考を放棄したい めんどくせぇなと思う でも放棄してはいけないとも思う めんどくせぇなと思う 筆者とは全然違う人間だけど、文章から共感もあれど、同族嫌悪のようなものも感じる うるせえとも思う でもこれはきっと強者の意見だ 最近のSNS、ニュース、テレビ、いろんなものを見てると、人間の攻撃性だったり、他者に干渉したくなるのってもはや本能としてあるようにしか見えない。SNSなんてほんの一部でしかないことも理解してる。でもなんかもう無理じゃない?って正直思う。僕は考え続けたい。 でも結局、世界は、この言葉はもう使いたくないんだけど、他に言葉を知らないから使うけど、多様で、自分には及びもつかない人たちがたくさんいる。これは確実に。でも俺はマジョリティ側の人間だし、その社会構造の中で生きてきてしまって、どんどんいろんな視座を自分に吸収しようとしても実感としてわからないことがほとんど。 だから結局、合う人に会って、もうちっちゃい自分達の結界を降ろして、それをみんなが認め合って、干渉しない、ってことしかないんだと思う。 わかるけど、わからない。こんなことばっかりだ。

Posted byブクログ

2024/08/13

マイノリティであること(とそのために経験してきた困難)が、著者の思考をこんなに深く、深いのだけどたくさんの方向に目配せするようなものにしているのかなと思った。

Posted byブクログ

2024/08/07

感想 わかるということ。言葉に出してしまうと途端にチープになる。本当にこの人は共感してるのか。複雑に絡み合う糸。わかってほしいと思っている。

Posted byブクログ

2024/08/05

決して”わかる”とは言えない、けれどわかりたい、そんな気持ちをずっと持っているからこそ、当事者のエッセイに触れて自分で考えること、感じようと思うこと、そんなことを続けていきたいと思った

Posted byブクログ

2024/07/15

人に共感するにあたってこういうことが大事だよ、とわかりやすく示してくれるものではないが、この一冊を通して、人と自分を重ねたり共感したりする時の姿勢や語り口をたくさん見せてくれる本だなと思った。

Posted byブクログ