外岡秀俊という新聞記者がいた の商品レビュー
小説家として文藝賞を受賞したにも関わらず、新聞記者として朝日新聞社に入社し四十数年のジャーナリスト人生を送ってきた外岡氏のオーラル・ヒストリー。 ジャーナリズムの劣化が叫ばれる昨今、一人でも多くのメディアに関わる人たちに読んでもらいたいと思った。
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★あえてそう振舞わないスター記者★入社前に小説家としてのスタートラインに立ち、歴史観のある視野とミクロの現場取材を組み合わせて記者としても名を挙げ、朝日新聞の良心として編集局長を託されて1年半で退き、早期退職して在野で活動する。朝日新聞らしく作り上げたスター記者ではあるが、その一...
★あえてそう振舞わないスター記者★入社前に小説家としてのスタートラインに立ち、歴史観のある視野とミクロの現場取材を組み合わせて記者としても名を挙げ、朝日新聞の良心として編集局長を託されて1年半で退き、早期退職して在野で活動する。朝日新聞らしく作り上げたスター記者ではあるが、その一方で、本人はおそらくスター記者として扱われることに違和感も覚えながら自由にふるまえるポジションを享受するためにあえてその立場を暗に認めることにした、そんなバランスの人だったのではないか。 冒頭の2人の関係者の視点が秀逸。外岡本人は述べないが、赴任の際に部長がついてくるほどの鳴り物入りの入社だった。湾岸戦争の取材で戦争保険への加入を会社に求めたことについても、アフリカやアジアを取材していた外報部の”南”の人たちからは恵まれた立場へのやっかみを感じる。 新潟・横浜という2つの支局を経た後は、比較的自由度の高いポストで働く機会を与えられ、結局受けなかったが30代から天声人語の書き手として期待される。 とはいえ、本人の誠実さがまずはあるのだろう。小説家として生きるチャンスがあれば、不条理なほど拘束される新聞記者としての若い日々に見切りをつけそうだが、現場を回る記者の立場を崩さない。「社内で上を目指す気はない」というスタンスが、むしろ混乱期には編集局長などを求めらることになったのだろう(しかし53歳で編集局長になるとは朝日新聞は現場への権限委譲が早い)。退職後の講演を聞いたときは、むしろまったくアクがないことが印象的だった。 記者としては、現場で取材した人の声と歴史という軸を重ねられる深さが強みなのだろう。新聞記者を目指す人の憧れの姿だろう。オーラルヒストリーとして読みごたえがあったが、最後の映画の話よりは、褒めるだけでない関係者の話をもっと盛り込んでほしかった。
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