死の貝 の商品レビュー
なんとなく名前を聞いたことあったかなぁくらいであった日本住血吸虫症。 まさかこんなにも壮絶な闘いの歴史があったとは。 調査研究にあたられた全ての方に敬意を。 また、当時の流行地に住んでいた方たちの闘いの歴史にも頭が下がる思いです。 まさか、今に続く山梨での果樹生産が盛んになった元...
なんとなく名前を聞いたことあったかなぁくらいであった日本住血吸虫症。 まさかこんなにも壮絶な闘いの歴史があったとは。 調査研究にあたられた全ての方に敬意を。 また、当時の流行地に住んでいた方たちの闘いの歴史にも頭が下がる思いです。 まさか、今に続く山梨での果樹生産が盛んになった元の一つにそんな事があったなんて。 河川や用水路がコンクリートで整備される、そして関が作られる原因の中にこんな事があったなんて。 河川敷が整備される理由にこんな事があったなんて。 もちろん治水の意味が大きいのでしょうが、流行地に於いては違う意味もあったんですね。 世の中は知らない事だらけです。 ミヤイリガイについてのノーベル賞。いつか実現するといいなと思います。寄生虫について世界中に貢献したようですから。
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明治の頃の甲府、広島、久留米の人たちの絶望感が透けて見えるようだ。 そして同時に、ミヤイリガイを発見した宮入先生の感慨、ネコの解剖から日本住血吸虫を発見した桂田先生の激烈な興奮も感じられるような気までしてくる。 すごく良いノンフィクションだ。 現在の山梨県は桃とブドウの一大産地...
明治の頃の甲府、広島、久留米の人たちの絶望感が透けて見えるようだ。 そして同時に、ミヤイリガイを発見した宮入先生の感慨、ネコの解剖から日本住血吸虫を発見した桂田先生の激烈な興奮も感じられるような気までしてくる。 すごく良いノンフィクションだ。 現在の山梨県は桃とブドウの一大産地だが、それがそもそもミヤイリガイ根絶を目的として生息環境だった水田を埋め立てて果樹園へ転換していった結果だったのには驚かされた。公衆衛生対策が地場の農業と経済を変えた。
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江戸時代以前から山梨を蝕む、腹が膨れ死ぬ奇病。原因や発生過程を特定し対処法を考える医者、研究者、官民の闘い。 wikipedia三大文学の一つとも言われる日本住血吸虫の話。一つの病気を絶滅するのにこれだけの苦労と工夫があるのかと圧倒された。
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「Wikipedia3大文学」としても有名な「地方病(日本住血吸虫)」の治療に関わった医師の記録である。山梨県に発生していた病の解明と治療法を見つけるために、多くの人の努力と熱意があったかがわかる本である。 現在の日本で、寄生虫病とはほぼ無縁の生活をしている自分には到底理解し切れない恐怖、不安があっただろうと想像できる。現代の日本に生まれたありがたみを感じずにはいられなかった。 また、未知の病を研究するために、原因究明の方法や患者にどのようにアプローチするかも興味深かった。
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古来から日本各地に発生し、原因不明の奇病として恐れられてきた「日本住血吸虫症」。その寄生虫病との戦いの歴史を描いたノンフィクション作品。 本書は以前読んだ『羆嵐』、および『八甲田山死の彷徨』と共にWikipedia三大文学と呼ばれている。どれも実話を基にした壮絶なもので、対応する...
古来から日本各地に発生し、原因不明の奇病として恐れられてきた「日本住血吸虫症」。その寄生虫病との戦いの歴史を描いたノンフィクション作品。 本書は以前読んだ『羆嵐』、および『八甲田山死の彷徨』と共にWikipedia三大文学と呼ばれている。どれも実話を基にした壮絶なもので、対応するWikipedia記事がある。本書は「地方病 (日本住血吸虫症)」の記事が対応する。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%96%B9%E7%97%85_(%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BD%8F%E8%A1%80%E5%90%B8%E8%99%AB%E7%97%87) 100年以上に渡る寄生虫病との戦いは凄まじく、本書とWikipediaの「地方病 (日本住血吸虫症)」記事を読み、圧倒されてしまった。ただ、膨大な情報量にも関わらず、どちらも読みやすく整理・構成されている。小説を読み、記事を読み、その出典など関連情報を見たり、舞台となった地をGoogleマップで見たりしていると、果てしなく世界が広がる感覚を覚えた。地方病が蔓延していた頃には得られなかった膨大な情報がPCの前で得られる。 -------------------------------------------------- ・本書で扱われるのは、かつて「水腫脹満」、「地方病」などと呼ばれ、現在では「日本住血吸虫症」とされている奇病との戦いの歴史。この奇病は古くは江戸時代(1582年)の文献にも残っており、それが撲滅に至るまでの大正〜明治〜昭和にかけての戦いがわかる。その後、最大の有病地であった山梨県で平成8年(1996年)に地方病終息宣言が出されている。ひとつの病気を撲滅したというのは、これまでに日本のみが成し遂げた偉業であるとされている(海外では今でもこの病に苦しむ人が多くいる)。 ・この奇病に因んだ口碑(ことわざ)がまず印象に残る。これらの口碑が伝わっていた土地では、「水腫脹満」と呼ばれる病があり、手足は痩せ細り、太鼓腹になり、そうなれば確実に死ぬということが知られていた。その有病地に嫁いでいく悲運を表現している。 - 「水腫脹満 茶碗のかけら」 - 「中の割に嫁に行くには 買ってやるぞや 経帷子に棺桶」 - 「竜地 団子に嫁に行くには 棺桶を背負っていけ」 - 「嫁には嫌よ 野牛島は 能蔵池の葦水飲む辛さよ」 ・冒頭ページには当時の患者の写真が二つ掲載されている。ひとつは患者の大きく膨れた腹。そしてもうひとつは18歳の健康者、18歳/25歳の患者の3人が並んだ写真。健康者と患者の大きな違いに衝撃。本文中には、徴兵検査で特定地域にあまりにも体格不良者が多く見られたことから調査に繋がったという記載もある。 ・その他、衝撃的なエピソードに事欠かない。そして、戦前・戦後を跨いだ時代も感じさせる。 - 死を悟った患者が自身の死体解剖を願い出た『死体解剖御願』(原文が示される)。当時山梨県で初の病理解剖。 - 病気の原因解明に尽力し、愛猫を解剖に差し出した三神医師。 - 病原体が判明後も、その感染経路(経皮感染 or 経口感染)を解明するため、ウシを使った大規模な感染実験。 - 中間宿主であるミヤイリガイの発見とその後の涙ぐましい農民たちの駆除活動(ミヤイリガイの拾い集め)。しかし、貝の強い繁殖力のため効果なし。 - 地域住民への予防啓発活動と殺貝剤散布による駆除活動。 ・本書は全5章からなる。そのうち第4章の時点で、(1)病原体の日本住血吸虫の発見、(2)日本住血吸虫の感染経路が経皮感染であると解明、(3)中間宿主の「ミヤイリガイ」の発見、(4)ミヤイリガイの殺貝に生石灰が効果的と判明、(5)治療薬「スチブナール」の開発までができている。それにも関わらず、この時点で小説の半分ほどのページが残っている。原因や治療法などがわかってからも、地道な努力が必要だったことがよくわかる。 ・かつての有病地には、今も石碑や伝承館などがあるらしい。訪れることがあれば、見てみたい。日本住血吸虫症の解明から撲滅に至るまでは、とても多くの人の偉業が積み重なっていて、それらが現在の衛生的な生活に繋がっていると分かった。
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私が生まれた頃にも、こんな恐ろしい病気があったとは露知らず。しかも、故郷の近くで起きていた。 数千年も前からあったとされるこの病気。近代においてようやく原因と対策が出来るようになり、ここに至るまでの歴史を知ることで、『現代』の有り難みに気づく。 人々が撲滅したい、解決したいという...
私が生まれた頃にも、こんな恐ろしい病気があったとは露知らず。しかも、故郷の近くで起きていた。 数千年も前からあったとされるこの病気。近代においてようやく原因と対策が出来るようになり、ここに至るまでの歴史を知ることで、『現代』の有り難みに気づく。 人々が撲滅したい、解決したいという想いや熱意を感じることができ、改めて自分の存在の尊さを感じることができた
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すぐ近くに筑後川があるものの病気予防のために川で遊ぶことを禁じられていた、それを可哀想に思ってブリヂストンの石橋正二郎さんがプールを作ってくれた、というような事を久留米市に住んでいた頃に年配者から何度も耳にした。その話が気になり、日本住血吸虫とミヤイリガイについてはWikiped...
すぐ近くに筑後川があるものの病気予防のために川で遊ぶことを禁じられていた、それを可哀想に思ってブリヂストンの石橋正二郎さんがプールを作ってくれた、というような事を久留米市に住んでいた頃に年配者から何度も耳にした。その話が気になり、日本住血吸虫とミヤイリガイについてはWikipediaで読んで凡そは知っていたつもりであったが、本書を読み、正体不明の「風土病」について原因から治療法、根絶まで沢山の研究者の想いを感じた。 この病気を根絶する流れで、山梨の葡萄栽培とワインや筑後川河川敷のゴルフ場が出来たのは凄く興味深い。かつて、さまざまな方法で絶滅を目指したミヤイリガイが今では絶滅危惧種に指定されているのも、人間の身勝手さを象徴している。
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読む前は地方病も知らなかったし たかが病気を追う本か、と甘く見てた 読んただら体を張って命を張って 追求し続ける姿勢に圧倒された。 未知の病だったものにはこれ程の犠牲と 探求と地道な努力の上に現代の医療が あることに感謝してしまう
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単行本から26年。 今年、文庫本として刊行された。 日本住血吸虫症撲滅に尽力されたみなさんには頭が下がる。 補章で書かれている。 ミヤイリガイの発見はノーベル生理学・医学賞の受賞に十二分に価する。 地方病の終息を願い闘った人たち。 丁寧な取材を重ね執筆をされた小林照幸さん。 ...
単行本から26年。 今年、文庫本として刊行された。 日本住血吸虫症撲滅に尽力されたみなさんには頭が下がる。 補章で書かれている。 ミヤイリガイの発見はノーベル生理学・医学賞の受賞に十二分に価する。 地方病の終息を願い闘った人たち。 丁寧な取材を重ね執筆をされた小林照幸さん。 そのお陰で感染症について知る事もできた。 P321 ミヤイリガイと共生、共存をしてゆかねばなるまい。 単行本の『死の貝』というタイトルに 文庫版ではサブタイトル『日本住血吸虫症との闘い』が加えられたという。 その経緯を読むと、終息はしたけれど 感染症など、新たなウイルスとの共生、共存をどうするべきか。 いまも、闘い続けている人たちがいる。
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甲府盆地、片山地方、筑後川流域で発生する謎の病。 腹に水がたまって膨らみ、やがて動けなくなり死に至る。 原因は全く分からず、治療法もない。 発症すると、なす術もない。 この謎の病に、何人もの医師や住民たちが奮闘。 未知の寄生虫が原因ではないかという疑いが。 そして、それを媒介する...
甲府盆地、片山地方、筑後川流域で発生する謎の病。 腹に水がたまって膨らみ、やがて動けなくなり死に至る。 原因は全く分からず、治療法もない。 発症すると、なす術もない。 この謎の病に、何人もの医師や住民たちが奮闘。 未知の寄生虫が原因ではないかという疑いが。 そして、それを媒介する貝の存在。 日本住血吸虫症と呼ばれる病気との、百年以上にわたる闘いの記録です。 すごいノンフィクションです。
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