対決 の商品レビュー
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2024/11/19予約 24 内密に行われていた医大受験の女子、多浪生の減点を記者の檜葉菊乃が追う。最終的な取材対象である大学理事の神林晴海も、女性差別の多い世界で生き抜いてきただけあり言質が取れない。ただふたりとも(特に仕事で)性差別されてきた為、思うところは同じ。他にも研修医制度や体力的な男女差など問題山積み。怒りや虚しさと共に、越えられない性差があることも現実で。差別は許されない。公平とはなんだろう、どうすればより良い方向に向かうのだろうか。考えることの多い読書でした。
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疑問に思ったのは、女性差別がテーマなのになんで女性と女性を対立させる構造にしてしまったんだろう…ということでした。タイトルもそのものズバリ『対決』だし。二人の女性が矢面に立って対決しなければいけなかった原因は男性が権力を握ってきた社会構造のせいですよね。 それは例えば作中で、男に...
疑問に思ったのは、女性差別がテーマなのになんで女性と女性を対立させる構造にしてしまったんだろう…ということでした。タイトルもそのものズバリ『対決』だし。二人の女性が矢面に立って対決しなければいけなかった原因は男性が権力を握ってきた社会構造のせいですよね。 それは例えば作中で、男に媚びてその権力を利用する女性を女性の地位を貶める存在と言及する場面がありますが、例えば性犯罪者の男性に対しては男性の地位を貶める存在とは言わないのに、女性だけがなぜ女性全体を代表するかのように常に正しくあらねばならないのか…女性を「良い女性」と「悪い女性」に分けて後者を叩くのもミソジニーなのでは。女性管理職が少ない現在の社会においてクォーター制を導入しようという議論があると必ず持ち上がる、性別ではなく優秀な人を選ぶべきだというもっともらしい意見とも同じ臭いを感じてしまいました。男性管理職が全員有能な訳では無いのに、女性のみに優秀さを期待される不平等な社会の構造そのものではないか、と。そうした描き方に、時々疑問を感じる部分もありましたが、ベテランで人気の男性作家が女性差別をテーマにして小説を書くのは世の中が少しずつ変わっていっている証拠だし、差別が少しづつ解消されているという希望を感じました。
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2018年の医大不正入試事件をベースにした社会派小説。 タイトル名からもっと大きな対決軸と思っていたが、報道記者と医大理事との女性対決だった。 女性差別と企業腐敗の複合問題がテーマになっているので結構複雑な課題だと思いました。 女性差別は自分が社会人になった時に男女雇用機会均等法ができたので、結構気にしているテーマですが、自分も男性なのでどこまで女性差別に対して当事者意識をもっているのか、過剰反応して逆差別になっていないか、などと悩むこともあります。 また、企業腐敗、不正隠蔽の問題も社会的にはあり得ない企業内ルールが、第三者からの指摘を受けて崩壊するのは現在も引き続いて起きていることです。 第三者代表が報道記者で、企業代表が医大理事としてとらえると、それぞれの立場や言い分も理解できなくはないものの、ハラスメントも含めて差別や不正の問題はそのために不利益を被る人がいるので、早急に対応するべきだと思いました。
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私立医科大学の裏口入学事件を発端として明るみに出た、入試における女子・多浪生への意図的な減点という不適切な事実。 この事実を追う新聞記者の檜葉菊乃と、大学理事の神林晴海の“対決”。 大学病院とマスコミという完全なる男社会で生き抜いてきた二人の女性の対決は、根っこの部分では同じ葛藤...
私立医科大学の裏口入学事件を発端として明るみに出た、入試における女子・多浪生への意図的な減点という不適切な事実。 この事実を追う新聞記者の檜葉菊乃と、大学理事の神林晴海の“対決”。 大学病院とマスコミという完全なる男社会で生き抜いてきた二人の女性の対決は、根っこの部分では同じ葛藤を抱えているという点ではなから決着はついていたんだろう。 ただ、女性差別の問題を女性同士の対決に持って行ったやり方は好きじゃない。 女性差別発言を繰り返した檜葉の記者仲間が、自分の身に降りかかって初めて問題に真面目に取り組むところが象徴的だなと思った。 やっぱり、差別をなくすには当事者意識が欠かせないってこと。世の中には様々な差別があって、それがいつ、どんな形で自分に降りかかってくるかもしれないのだから。
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フィクションと書いてあるが、実際にあった医学部の話を思い出した。正しくない事が行われていると分かっていても、それを公にする怖さを乗り越えるのは大変だ。 公益通報をする人もどれだけの葛藤があるんだろうと、最近のニュースの事も考えた。
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月村作品を初めて味わった 10年ぐらい前だろうか、新聞を賑わしたことを題材にした作品 自分の生き方を考える機会になった人はたくさんいるだろ 女性も力付けられた人は相当いるのではないかと思う
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医学部裏口入学事件から女子受験生多浪人生に対する採点点数変更がわかった そこで事務局上がりの理事神林と新聞記者菊乃 男性優位の社会で2人の女性がそれぞれ思う女性差別をなくすためにぶつかり闘う 思いは同じ女性差別をなくし維持向上
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裏口入学のスキャンダルに揺れる私立医大で、 以前から女性受験者の得点を一律下げて合否を 判定していたという証言を得た女性新聞記者の 檜葉。 裏取りを進める彼女が数ある取材対象者の中から 絞り込んだのは、同大学の女性理事である神林。 檜葉は神林から証言を得ようと接触をするが…。 ...
裏口入学のスキャンダルに揺れる私立医大で、 以前から女性受験者の得点を一律下げて合否を 判定していたという証言を得た女性新聞記者の 檜葉。 裏取りを進める彼女が数ある取材対象者の中から 絞り込んだのは、同大学の女性理事である神林。 檜葉は神林から証言を得ようと接触をするが…。 男性優位の社会で、別々の場所で苦労を重ねた 二人が目指すものは同じなれど、立場の違い から攻守入れ替わりつつ重ねる舌戦が見所 でした。 ハラスメント防止が認知されて久しいですが、 未だに旧態依然で組織に蔓延っている実態を 思い知らされると共に、「ならばどうするか」を 考えさせられます。 また、登場人物達も俯瞰してみれる読者から すれば一見アウトに思える人も、話が 進んでいけば簡単に断罪はできるものでは ないと思えます。今作が一筋縄ではいかない テーマを扱っている証左ではないかと思います。
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▼月村さんという作家さんは初めて読みました。エンタメ犯罪警察小説、みたいなところを主戦場とされているキャリアの小説家さんのようですね。これはまあ、言ってみれば「記者モノ」。 ▼数年前に実際にあった、 <医科大学が、軒並み、女子学生は一律減点して、つまり男子をえこひいきして合格...
▼月村さんという作家さんは初めて読みました。エンタメ犯罪警察小説、みたいなところを主戦場とされているキャリアの小説家さんのようですね。これはまあ、言ってみれば「記者モノ」。 ▼数年前に実際にあった、 <医科大学が、軒並み、女子学生は一律減点して、つまり男子をえこひいきして合格者を出していた> という案件が、言ってみればスクープされるまでの物語。ネタは事実で、物語はフィクションなんでしょう。 ▼何が「対決」かというと、 報道しようとする側 <全国紙の社会部の女性記者=シングルマザー40代後半くらい?> VS. 隠蔽しようとする側 <有名私大医科大学の女性理事(医師でなく事務方から這い上がった)=未婚50前後くらい?> という、どちらもつらい思い悔しい思いをいっぱいしながら、ずーっと男性優位職場で働いてきた女性同士の対決。 このふたりの心情のうつろい、気持ちの描かれかたが、いちばんの美味しい料理です。 ▼一方で、正直に言うと横山秀夫長編小説に比べれば。 全体のウルトラジェットコースター的なあの手この手な見せ場とミステリーの連続性・・・という見地では、劣ります。 つまり割と「中編」的な味わいの、一本線のスキッとしたお話です。 それはそれでそれなりには楽しめました。 ▼難しいな、と思うのは。 こういう題材になると、女性作家からすると「男にかけるかよ」 という噴飯な感情はあるだろうなあ。 ただそれはそれであんまり言っちゃったら 「あなたたちが嫌いな者たちの言い草を、自分でするんですか」 ということになるよなあ。うーん。 じゃあ女性作家が、初老男性刑事とか探偵の「人生の秋」みたいなものを書いたら・・・うーん。 まあでも面白いものは残るだろうなあ。 そういう妥当性はあるくらいの、マーケットの大きさはあるのではなかろうか。日本語小説市場っていうのは。 そう思いたいなあ(笑)。
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数年前に発覚した東京医大の女性受験生減点問題をモデルにした小説。主人公の女性新聞記者と女性大学理事それぞれの葛藤と二人の対決、二人を取り巻く古い価値観との対決、スピーディーな展開に一気読み。価値観やハラスメントについて考えさせられる一方でエンタテインメントとしても素晴らしい作品。...
数年前に発覚した東京医大の女性受験生減点問題をモデルにした小説。主人公の女性新聞記者と女性大学理事それぞれの葛藤と二人の対決、二人を取り巻く古い価値観との対決、スピーディーな展開に一気読み。価値観やハラスメントについて考えさせられる一方でエンタテインメントとしても素晴らしい作品。「奈落で踊れ」然り、実際に起こった事件を題材にした小説が凄く上手い。
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