ドクロ の商品レビュー
みな寝しずまった真夜中に、オティラはとうとう逃げた。1ページ目のこの1文で、この小さな少女が何から逃げて、雪の降る森の中を夜通し走っているのか、説明はないから想像が膨らむ。辿り着いたお屋敷にいた頭だけのドクロ、頭のないガイコツの襲撃、プロの殺し屋のようなオティラの一面。なのに後味...
みな寝しずまった真夜中に、オティラはとうとう逃げた。1ページ目のこの1文で、この小さな少女が何から逃げて、雪の降る森の中を夜通し走っているのか、説明はないから想像が膨らむ。辿り着いたお屋敷にいた頭だけのドクロ、頭のないガイコツの襲撃、プロの殺し屋のようなオティラの一面。なのに後味は不思議と温かい。ショートアニメの短編映画のようだった。
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柴田元幸さんの訳者あとがきを、少し引きたい。 “それにしても、何と大胆な語り方か。きわめて多くを読者の想像力に委ねている。 謎を元に物語をさらに拡げていくよう、読者はほとんど挑まれている。そういう、読者を信頼する姿勢がすばらしい。” それって、知りあうこともない作者との間で、...
柴田元幸さんの訳者あとがきを、少し引きたい。 “それにしても、何と大胆な語り方か。きわめて多くを読者の想像力に委ねている。 謎を元に物語をさらに拡げていくよう、読者はほとんど挑まれている。そういう、読者を信頼する姿勢がすばらしい。” それって、知りあうこともない作者との間で、一冊の本を通じて築ける最良の関係だと思う。 どうしてドクロは、頭だけになったの?って訊かれたら、こんな答えはどうだろう。 『ドクロとガイコツ』 男は自分の体が嫌でした。 いかめしく響く声も、分厚い胸板も、逞しく力強い両腕も。 その手は農奴を鞭打ち、隣国の兵を撃ち倒しました。 男はそんなことはしたくなかったのです。 でもそれは領主としての務めでした。 男の父親や領民は、喝采して褒めそやしました。 なんて男らしく、誇り高い領主様なんだろう! 男は亡くなるまで立派な領主として振る舞い続けました。 だから、墓地に埋葬されたときにはホッとしたものです。 これで肉体ともおさらばして、ほっそりと身軽な骨だけで過ごせますからね。 誰も骨に責任なんて求めはしません。 でもうまくはいかないものです。 夜な夜な散歩をするたびに、記憶が苛むのです。 体は覚えているのです。 男は怖くなりました。 わたしは、失った強さを、若い肉体を取り戻したいのだろうか? どっちが、本当の、わたしだったのだろう。 新月の夜にドクロはそっと転がってゆきます。 ガイコツと別れるのは、身を切られる辛さでした。生死が分つことなくずっと一緒にやってきたのですから。 もうこれで、どこまでも走ってゆくことも、梨の木に手を伸ばすこともないのです。 でもドクロは振り返りません。 夜風が吹き抜けて、ドクロを鳴らします。 そっと口笛を吹くかのように。
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森に逃げ込み、大きな屋敷に辿り着いた少女のために扉を開けてくれたのはドクロだった。民話を元に記憶が作り変えた物語を少しダークなタッチで描いた絵本。 ドクロと少女の奇妙な友情物語が、後半は素性の知れない少女のノワールに変わる。思えばドクロとの対面からして冷静だし、オティラは殺し...
森に逃げ込み、大きな屋敷に辿り着いた少女のために扉を開けてくれたのはドクロだった。民話を元に記憶が作り変えた物語を少しダークなタッチで描いた絵本。 ドクロと少女の奇妙な友情物語が、後半は素性の知れない少女のノワールに変わる。思えばドクロとの対面からして冷静だし、オティラは殺し屋稼業に従事してた子なのかな。 行動主体が一番の謎を残したまま終わるこの余韻は、直後に読んだキャサリン・レイシーの『ピュウ』とも共通していて、無口で目の座った感じもなんだかピュウを思わせる。オティラが何から逃げてきたのかと同じく、ドクロが自分の身体の元に戻りたがらない理由も明かされないのだが、語りたくない秘密を抱える者同士ができる限りの優しさを分け合うところにフォーカスを当てたお話なのだと思う。黒が印象的な色づかいだけに、淡いオレンジの陽が差し込む温室の場面が印象に残る。
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雑誌「MOE」に紹介されていて。 112ページ、章立てになった贅沢な絵本。 黒がベースであるものの、淡い暖色もあり立体的な絵画のようだ。 なんだか声を出してみたくなって、気分良く最後まで読んでしまった。 著者のあとがきになるほど。思い出を自分用に作り変えてしまうって確かにある...
雑誌「MOE」に紹介されていて。 112ページ、章立てになった贅沢な絵本。 黒がベースであるものの、淡い暖色もあり立体的な絵画のようだ。 なんだか声を出してみたくなって、気分良く最後まで読んでしまった。 著者のあとがきになるほど。思い出を自分用に作り変えてしまうって確かにあるし、それが新しい物語になるんだってなんて素敵なんだろう。
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好みが分かれそう。主人公の生い立ちはじめ、謎が多く残る。それを物語の余白ととるか説明不足と感じるか。著者あとがきも興味深い内容で、私は満足しました。他のクラッセン作品が好きな人は、これもきっと気に入るはず。
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うーん、もう一捻り欲しいと思った。 この小話感がリアルなのかも知れないけど。 少女の言動がなんか妙に達観した大人くさいのも評価が分かれるところかな。
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ドクロがナシを食べたりお茶を飲んでも当然そのまま出てしまうけど、おいしいって言うところがなんだかいい。絵の雰囲気も好き。
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ブラックユーモアが多めの私の大好きな作家です。 オティアは何かから逃げた先で、ドクロ(頭蓋骨)が住む屋敷にたどり着きます。 ドクロはオティアを屋敷に入れてあげ、色んなお部屋に案内します。 二人?は親睦を深めていったなか、ドクロはオティアにこう告げます。 「この屋敷にやってくる...
ブラックユーモアが多めの私の大好きな作家です。 オティアは何かから逃げた先で、ドクロ(頭蓋骨)が住む屋敷にたどり着きます。 ドクロはオティアを屋敷に入れてあげ、色んなお部屋に案内します。 二人?は親睦を深めていったなか、ドクロはオティアにこう告げます。 「この屋敷にやってくるガイコツがいる」 「頭のないガイコツは、私を探し回っている」 オティアは、ドクロがガイコツから毎晩逃げていると聞きガイコツを・・・。 ちょっと想像の上をいく結末で、オティアは敵に回したくないなと思いました。 この本誕生のきっかけが書かれてるあとがきも是非読んでほしい一冊です!
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