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「教授」と呼ばれた男 の商品レビュー

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2024/05/04

坂本龍一が亡くなって1年が経つ。亡くなってから音楽雑誌などで特別増刊が発売され、”教授”のメモワールとして多くの書籍が世に放たれたが、私はそのどれも手に取ることがなかった。それは端的に言って、その多くが過去のインタビューや新作発売時のレビューなどの寄せ集めに過ぎず、全く面白みを感...

坂本龍一が亡くなって1年が経つ。亡くなってから音楽雑誌などで特別増刊が発売され、”教授”のメモワールとして多くの書籍が世に放たれたが、私はそのどれも手に取ることがなかった。それは端的に言って、その多くが過去のインタビューや新作発売時のレビューなどの寄せ集めに過ぎず、全く面白みを感じるものではなかったからである。 しかし1年が経ち、ようやくこれなら読んでみたい、と思った作品が音楽や文学の批評家であり、音楽レーベルの主催者としても活動していた佐々木敦による本書である。 自身がリアルタイムに坂本龍一の作品を聴き始めた2000年代において、欠かせないエレクトロニカ・電子音響との邂逅におけるキーパーソンはアルヴァ・ノトことカールステン・ニコライである。そのカールステン・ニコライと坂本龍一との出会いを作ったのが佐々木敦であるという関係性もあり、彼による伝記であれば読んでみたい、と思ったのが大きい。 実際、本書ではしっかりと坂本龍一が残した1作品ずつを丁寧に批評するという視線に貫かれている。単なる人物伝というかエピソードベースのものではなく、最も大事な個々の作品に注目するというこの語り口こそ、自身が読みたかった”教授”の生涯であり、その点で非常に満足した評伝であった。

Posted byブクログ