別れを告げない の商品レビュー
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ノーベル賞納得。登場人物の生活と重ねて語られるから,より感じ入るところがあるんだと思う。 しかし歴史を知らなすぎて解説がなかったら理解できなかっただろうと思う。齋藤真理子さんに心から感謝。
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2023年 フランスのメディシス賞受賞 2024年 フランスのエミール・ギメ アジア文賞受賞 作家のキョンハが、虐殺に関する本を出してから悪夢を見るようになる。 精神的にも辛いからか生きるということすら考えられずに何度か遺書を書くことも。 友人のインソンは、済州島の村で母親の介...
2023年 フランスのメディシス賞受賞 2024年 フランスのエミール・ギメ アジア文賞受賞 作家のキョンハが、虐殺に関する本を出してから悪夢を見るようになる。 精神的にも辛いからか生きるということすら考えられずに何度か遺書を書くことも。 友人のインソンは、済州島の村で母親の介護をして看取り、その後木工を作っていた。 彼女から連絡を受けてキョンハは駆けつけた…。 済州四・三事件を思わす描写もあり、それは誰かの話の記憶なのか、インソンとの繋がりのなかでの夢か幻かと感じるようなところもある。 キョンハとインソンの結びつきと二羽のインコの生死。 歴史の痛みを感じながら彼女たちの痛みを感じるような、なんとも複雑な気持ちになる。
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主人公のキョンハはソウルの病院に入院中の友人インソンから済州島に残したインコに餌と水を与えてほしいと頼まれる。済州島の家に着いたキョンハの前にソウルにいる筈のインソンが現れ、インソンの母親のジョンシムが綴り、インソンが書き加えた悲惨な文書に直面する。そしてキョンハは、自分の夢に侵...
主人公のキョンハはソウルの病院に入院中の友人インソンから済州島に残したインコに餌と水を与えてほしいと頼まれる。済州島の家に着いたキョンハの前にソウルにいる筈のインソンが現れ、インソンの母親のジョンシムが綴り、インソンが書き加えた悲惨な文書に直面する。そしてキョンハは、自分の夢に侵入する悲惨な光景が済州島で始まったことに気づき、米ソ冷戦下でおきた済州島4.3(ササム)事件にまつわる家族の悲惨な過去を知らされることになる。1948年の4.3事件は「済州島を、左翼の拠点の赤い島と規定し、共産主義者を殲滅する為に韓国軍が無辜の島民3万人以上を無差別に虐殺した」事件。インソンは母親が目撃した凄惨な悲劇を語る。平和な村を焼かれ、済州空港の滑走路の下に埋められ、海岸で撃たれ対馬まで波に流され、穴に捨てられ、雪に覆われ、永遠に消息不明になった家族や島民の悲劇。人間の中に潜む獣性が、国家権力の発動で良心により封じ込められた檻から、平和な村の無辜の人々の命を奪う為に解き放たれる悲劇が赤裸々に語られる。
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ノーベル文学賞の本は初めて読みました。「ノーベル文学賞はその作家の作品、活動の全体に対して与えられるものであって、一つの作品に対して与えられるものではない。」に、納得の作品でした。この作家さんは命を削って書いているのだろうなと感じました。感想が書けない。何を言っても薄っぺらくなっ...
ノーベル文学賞の本は初めて読みました。「ノーベル文学賞はその作家の作品、活動の全体に対して与えられるものであって、一つの作品に対して与えられるものではない。」に、納得の作品でした。この作家さんは命を削って書いているのだろうなと感じました。感想が書けない。何を言っても薄っぺらくなってしまいそうで。
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韓国の歴史が全くわからないので訳者あとがきがかなり助かったし、読んでようやく本編についてなるほどと思った。最初から割と暗かったけど、途中からより一層暗くなり、しかし何が起きているのか正直よくわからなかったため。 うーん、「哀悼をやめない」という決意の本だったな。哀悼をやめないということは、ひいては「起きていた事実を忘れない」ってことだろう。日本って国内ジェノサイドあんまないよなーと思ったけど、日本が朝鮮を植民地化したことで分裂だなんだの話になってるわけで、そんな呑気な感想を抱いている場合ではない。歴史問題で揉めがちだが、そりゃ揉めるだろうというか、反日感情を抱いていて当たり前だし、うちらが韓国に言えることなど何もないのではないかと思った(実際のところ何で揉めてるのかとかはよくわからん)。若い人は親日ですよ、とか聞くけどね。そんなことがあってなんで逆に親日で居られるの?と思うけど、じゃあ原爆落としたアメリカが嫌いかと言われたら別に普通だから、まあそういうことなのか……。なんか、予備拘禁の話とか、昔の話だから……とは言ってられないくらい現代でも起きそうだなと思った。だって攻め込まれそうな時に先手打てるようにしよう!って今そんな機運になっちゃってんだから。適切に運用されるならいいけど、思想犯とかにも同じことやり出しそうで怖いね〜。健康に大きな恐怖を持たぬまま死にたい。
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済州島の4.3事件を生き延びたインソンの母親、PTSDと認知症に苦しむその母親を介護し思いを受け継ぐインソン、主人公である作家のキョンハは二人の追い求めている事実を幻のような中で知る。済州島はリゾート地のイメージでこんな凄惨な過去があったことを知らなかった。人間はどこまでも残酷に...
済州島の4.3事件を生き延びたインソンの母親、PTSDと認知症に苦しむその母親を介護し思いを受け継ぐインソン、主人公である作家のキョンハは二人の追い求めている事実を幻のような中で知る。済州島はリゾート地のイメージでこんな凄惨な過去があったことを知らなかった。人間はどこまでも残酷になれる生き物なんだなと思う。本書の題名『別れを告げない』は『哀悼を終わらせない』という著者の強い意味らしい。本作品の内容もとても深くノーベル文学賞に選ばれたのも当然というくらい、本当に素晴らしい作家に出会えて嬉しかった。
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憑依体験に近い。 作者の想いを通じて痛みと傷とアイデンティティの苦しみを体験するような読書時間だった。 インソンの指の描写で私は試された。この痛みを受けて、先に待っているであろう更なる痛みを読み受けられるかと。しかし作者はキョンハを私に共に居させてくれた。 私は体験する。キョンハ...
憑依体験に近い。 作者の想いを通じて痛みと傷とアイデンティティの苦しみを体験するような読書時間だった。 インソンの指の描写で私は試された。この痛みを受けて、先に待っているであろう更なる痛みを読み受けられるかと。しかし作者はキョンハを私に共に居させてくれた。 私は体験する。キョンハになり、インソンになり時にインソンの母になり。強いられた沈黙の意味を考えよ、その中で生きた時間を味わえよと。 現実か夢なのか流動する時間が、雪、血、風、鳥、火で混ざっていくが混沌というより美しいのだ。読んでいいてこんなに苦しいのに何故こんなに震えるような美しみを感じるのか。キョンハの見た事を感じた事を忘れていけないと感じる。これが継承、語り継ぎなのだと思った。
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ノーベル文学賞はアジア初の女性作家、韓国のハンガンさんが受賞しました。そのネットニュースを見て早速アマゾンで買おうとしたら売切れ
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あとがきより。「この小説でインソンが、やや教科書的ともいえるほどに事件の解説に努めているのは、ハン・ガン自身が、今の韓国社会で四・三事件への理解がいまだ十分ではないと考えていることを意味するのかもしれない。」 済州島四・三事件とは、戦後の朝鮮半島に米ソが進駐する中、南だけで単独選挙を行うことへの武装蜂起によるものである。
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1948年済州島四・三事件をモチーフとした話。作家には、済州島事件の犠牲者であり親族を探し続ける活動をしていた母を、帰省して介護のうえみとった友人がいて、長く会っていなかった。ふいにソウルで緊急入院中の友人から、入れ替わりで済州島の家で鳥の世話をしてほしいと向かった時は大雪で、大...
1948年済州島四・三事件をモチーフとした話。作家には、済州島事件の犠牲者であり親族を探し続ける活動をしていた母を、帰省して介護のうえみとった友人がいて、長く会っていなかった。ふいにソウルで緊急入院中の友人から、入れ替わりで済州島の家で鳥の世話をしてほしいと向かった時は大雪で、大変な思いで友人宅に着いたあと、現実なのか、夢なのか、ソウルで入院しているはずの友人を近くに感じ、友人が見聞きした多くの済州島犠牲者について語る話を疲れた体でこそ引き受けることができる。心身の痛み、寒さ、疲労と事件が相まって、知ろうとする苦しみを乗り越えれば何か見えるはずと読み進めた本でした。
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