陽炎の旗 の商品レビュー
山の民から、海の民への物語。
2024年11月読了。
実を言うと、この本は30年以上の間、読めずに遠ざけてきた本だった。前著『武王の門』に、又北畠顕家卿を描いた『破軍の星』に、自分の心、より大袈裟に言えば≪自分の魂を吸い取られる程≫魅了されてしまったからだ。
『武王の門』の続編が出...
2024年11月読了。
実を言うと、この本は30年以上の間、読めずに遠ざけてきた本だった。前著『武王の門』に、又北畠顕家卿を描いた『破軍の星』に、自分の心、より大袈裟に言えば≪自分の魂を吸い取られる程≫魅了されてしまったからだ。
『武王の門』の続編が出たと聞いた時、日本史を嗜んでいる人なら誰しも、その後の史実を理解しており、「喪われた南朝の末裔の物語」等、悲し過ぎて到底読めないと、ずっと思ってきたからだった。
しかし、今の自分は若かった頃ほどの〈熱狂〉は無く、征西将軍宮懐良親王の子、月王丸の物語を受け入れる様な歳に成っていた。大分遅れたけれど。
月王丸側からではなく、九州探題の今川氏側の視点から物語が語られていったのには、当初面食らった気分だったが、考えてみれば『懐良親王の子孫の歴史など何処にも遺されていないのだ、当たり前じゃないか』と気付かされた。それを受け止められた時、この物語に自然と惹き込まれていった。
足利頼冬がジョーカー的な存在で話を掻き回したが、〈足利義満が自ら天皇に成ろうとしていた説〉等も実際に有るので、「こういう展開に成るんだぁ…」と一つ一つ納得するような思いで読み進めた。虚実皮膜の間を中々に上手くアレンジされていて、読後感も良かった。
ただ、ただ、どうしても前作を何度も読んで涙した自分からすれば、「月王丸よ、それで良いのか?!」と云う寂寞感の様なものを感じてしまい、『海の果てに消えていった有る貴種の物語』として諸手を挙げて最高だとは言えなかったのも又事実である。
北方南北朝シリーズは、コレで30年越しにようやく全て読破したが、「判官贔屓」と嗤われてもやはり『南朝方への切ない想い』は変わらなかった。そして最後まで〈足利尊氏〉を書けなかったのであろう著者の、(どれほどの資料を読み込んでも見出せない)尊氏と云う男の胸の内の不可思議さに、一人の人間として改めて興味が湧いてきた。
この人と楠木正成は、本当に〈何を考えて生きていたのか〉分からない部分が多過ぎるのだ…(だから北方版『楠木正成』もつまらなかった)。
さらなる歴史研究の促進を望みたい。でも、自分が生きている内に「何か新たな資料」が出てくるような事も無いんだろうなぁ…。
左衛門佐
足利直冬の子で剣豪として世を忍んで生きる来海頼冬、征西将軍兼良親王の子で高麗を拠点に海賊行為を行う月王丸とその子竜王丸、朝廷を倒し自らが王となる野望を密かに持つ足利義満。南北朝統一をめぐり三巴の争いを繰り広げる。戦いの臨場感はさすがであるが、フィクション性が高く全然入ってこなかっ...
足利直冬の子で剣豪として世を忍んで生きる来海頼冬、征西将軍兼良親王の子で高麗を拠点に海賊行為を行う月王丸とその子竜王丸、朝廷を倒し自らが王となる野望を密かに持つ足利義満。南北朝統一をめぐり三巴の争いを繰り広げる。戦いの臨場感はさすがであるが、フィクション性が高く全然入ってこなかった。
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足利頼冬という人について、この作品で初めて知った。足利幕府は、その立ち上げから、いろいろ、ややこしいしがらみがある感じで、いつ崩壊してもおかしくない組織だったけど、最盛期の義満の時代に、すでに危なかったということか?最後に頼冬が倭冦になる決意をするところは、なんでか、晴れやかな気...
足利頼冬という人について、この作品で初めて知った。足利幕府は、その立ち上げから、いろいろ、ややこしいしがらみがある感じで、いつ崩壊してもおかしくない組織だったけど、最盛期の義満の時代に、すでに危なかったということか?最後に頼冬が倭冦になる決意をするところは、なんでか、晴れやかな気分になった。
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生まれながらの将軍・義満の野望とは何か――かたや征西将軍・懐良親王の、かたや九州探題・足利直冬の一子が相まみえる時、それぞれの宿運が激突する!
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