しをかくうま の商品レビュー
意味は全然わかんないけど、読んでてとっても楽しい。作品全体が詩みたいだし、馬みたいでもある(今わたしたちが持ってる"ブレイン"とは全く違う基準で動いているような、という意味で)。 根安堂(ネアンドウ)家おもしろすぎるし、途中で出てくる順番記号は競馬の順位や予想...
意味は全然わかんないけど、読んでてとっても楽しい。作品全体が詩みたいだし、馬みたいでもある(今わたしたちが持ってる"ブレイン"とは全く違う基準で動いているような、という意味で)。 根安堂(ネアンドウ)家おもしろすぎるし、途中で出てくる順番記号は競馬の順位や予想も連想させるし、あとヒとビの話は普通にすき。 「彼の頭上にまず降りかかってきたのは不幸の極致にあるものだった。雨だ。」 読んでる途中から、どうしても馬に乗りたくなってホーストレッキングを予約しました。ということは、この詩は概念を書いてるんじゃないんだな、だからこんなに面白いんだなと思いました。
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人が最初に馬に乗るようになったストーリーと、「しをかくうま」を愛する競馬の実況アナウンサーのストーリーとが交差し、物語が展開していく。 御伽噺と現代、未来の話を、物語の中のアイシャドウ、まぶたの話と同様、順序を入れ替えて展開しているように感じた。 人名の羅列の部分などは、洪水が...
人が最初に馬に乗るようになったストーリーと、「しをかくうま」を愛する競馬の実況アナウンサーのストーリーとが交差し、物語が展開していく。 御伽噺と現代、未来の話を、物語の中のアイシャドウ、まぶたの話と同様、順序を入れ替えて展開しているように感じた。 人名の羅列の部分などは、洪水が起きているような感覚で、言葉遊びというか、いちいち読むのではなく、眺めるものだと感じた。(名前は詩だということらしいし) 競馬は、徹底的に交配したという意味を持つサラブレッドをその名の通り遺伝子レベルで分析し、交配を繰り返し, 管理、生産している。 これが人間で行われる日が来るとしたら・・と考えたことがあり、それを小説にする人がいた・・と思い、 作者は、競馬を絡めた話を書きたかったのだろうという印象を受けた。 題名から想像した話とは随分違っていて、正直、何がどうなったのか、よくわからなかった・・という感想しか持てない。 そもそも人が馬に乗るようになったストーリーで、”乗れ”という声が聞こえたという部分で、実際の馬が人に自分の背中に乗ってほしいという態度をとることは、まずないので、そこに違和感を感じたからかもしれない。 終わりの方に出てくるニューブレイン、オールドブレインの話は、AIの話なのだろうが何となく、考えることを司どる大脳新皮質と本能的な爬虫類脳を連想した。 ニューブレインか、オールドブレインかは分からないが、読み手のブレインにバグを生じさせるのが目的のストーリーなら成功しているといえる。 自分には文学的な素晴らしさが、よく分からないのだろう。 作者にとっては、意味があるのだろうが、この登場人物が必要なのか?と感じたり、一見どうでも良さそうな細い設定に、こだわる人なのかなという印象が強く残った。
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結構好きなんだけれど、なんというか、さらなる踏み込み方がありそうというか、もっと馬自体の美に踏み込んでいたほうが私はこの小説を好きになっていただろうと思う
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序盤に、これは何かの修行か?と思うぐらい読み難いパートがあるけど、その後ネアンドウファミリーの登場から一段と面白くなる。どこまでも馬ファーストの世界線。
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おしゃれすぎる。 ミステリの後に読んだからなおさら文章に酔いしれた。 最近の本ではお決まりとなっているが、もう一度読みたい。特にこの本は、もう一度読まなければならない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
芥川賞受賞したタイミングでリリースされたので読んだ。実際に書かれた順序としては芥川賞を受賞した『東京都同情塔』を執筆する前に本著は書かれている。かなりミニマルな設定で馬に関してこれだけスペクタルに書くことができるのがかっこいいし文学的に新しい挑戦する気概をたくさん感じた作品だった。 時間軸が過去、現在、未来と用意されており、それぞれ馬をテーマに物語が駆動していく。最初に読んで想像するのは手塚治虫の『火の鳥』だ。『火の鳥』は仏教の輪廻転生をテーマとし時代を通じて類似した登場人物が現れる。本著は似たようで微妙に異なる、ニーチェが唱えた永遠回帰を踏襲して物語を構築している。同じことの繰り返しでしかないということは各時間軸における重複しかり、小説の構成として冒頭と終盤に同じ内容が出てくる点も含め複合的に反映されている。(馬の名前にもエターナルリターン!) 馬の起源から始まり移動手段として人間が馬を使うに至るまでの壮大な過去パートと競馬の実況アナウンサーが競走馬の名前の文字数制限(9→10文字)の変更を起点とする現代パートのギャップがオモシロい。前者は抽象度が高く後者の物語を補完するように馬の概念を改めて語り直している。馬のことをここまで真剣に考えたことがないので、その歴史的な情報量の多さに圧倒された。言われてみれば、誰が最初にあの動物に乗ろうと言い出したのか。しかも移動手段としての馬は割と近過去なのかなど色々と気付かされた。そしてSFめいた展開も含む後者がメインディッシュである。競走馬における交配の最適化を人間と比較することで歪さを浮き彫りにするあたりからしてキレキレ。『東京都同情塔』でも描かれていたような、すべてが計算され偶然性が排除され最適化されていく社会に対する警鐘が多い。また言葉遊びもたくさんあって固有名詞がカタカナ太文字で書かれており「これは10文字?」と気になり出したら最後、前述のエターナルリターンのように意味がかかっているのかなと全部気になってくる。著者自身がヒップホップに造詣が深いことも影響しているのだろうか。タイトルのように死を欠く/詩を書くといったラップ的なダブルミーニングの多用が読んでいて楽しい。イースターエッグとして大量に忍ばせつつ物語の推進にも寄与している。単なる言葉遊びにとどまらないからこそ芥川賞を取ったことを本著でさらによく理解できた。次の作品もどんな仕掛けが用意されているかとても楽しみ。
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私には難解すぎた作品だった。 競馬に対する愛情、馬と人類の歴史がここまで 密接につながっていることが、深く伝わった。 結局「しをかくうま」とは一体何だったのか 九段節が濃縮に詰まった作品だと感じました。
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競馬実況では名実況というものがあって、それはいかに実況者の熱意を視聴者に伝えられるかどうかで判断されているように思う。 そんなに単純ではないのか。馬の名前をいかにして伝えるかに重きを置いた主人公は、馬に愛される。 人と馬は心を通じ合わせることができる等と言われているが、人間は馬の...
競馬実況では名実況というものがあって、それはいかに実況者の熱意を視聴者に伝えられるかどうかで判断されているように思う。 そんなに単純ではないのか。馬の名前をいかにして伝えるかに重きを置いた主人公は、馬に愛される。 人と馬は心を通じ合わせることができる等と言われているが、人間は馬の考えることには到底及ばない気がする。 遺伝子を残すため種牡馬は交配する(正確に言うとさせられている)。それを人間にも求めるDNAという会社の何が悪いのだろうか。人間はまだ交配の意思を自分で決定できるから良いだろう。 主人公は馬のためなら何でもできる。遺伝子をくれと言われればくれてやるし、馬のために全財産投げ打ってもいいほどだ。そこまで深く傾倒できることは羨ましいことだ。
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タイトルも意味不明だが内容もぶっ飛んでいた。静かに。そしてその世界観が何故かとても心地よかったのだ。何故だ。 松浦理英子の犬身を読んだときも同じように心震えるものがあったことを思い出した。
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【言葉を使うヒト、の行く先…】 主人公がTV局での競馬の実況の仕事をしている世界と、もう一つの異次元的な世界とが、交ざり合っていく。 この題名が平仮名なのは、あえてその意味を固定せずに言葉で遊んでいる節があるー「詩を書く馬」「死を欠く馬」。 詩や言葉について、幾度も触れられている。 一頭でも多く馬の名前を電波に乗せるという使命感。 馬に付けられる名前。その言葉の重み。 語順。 ヒトが言葉を生み出す過程。生物としての進化、分岐。 人工知能を内在化する未来のヒト。 結果と意義。なんのための言葉?何のための進化?みたいなところを問うているような、でもはっきりとは示さない構成。ニーチェとかサルトルとかの思想を知っていると理解が深まるのかな。そういった部分が難しかった。 とにかく私にはまったく新しい切り口で、言葉を持つ人間界を少し相対化するような、逆に馬を少し神聖化するような、ユニークな視点で描かれた作品。 正直最終的に、漢字をずっと見てたら漢字じゃなくなる現象の、言葉バージョンみたいになってしまったような部分がある。
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