ヴィンデビー・パズル の商品レビュー
「待った! エンジンを切れ!」 重機の音がやんだ。操縦していた男が運転席から顔を出す。「なんだよ、どうかしたのか?」 「見なよ、ありゃあ……脚だぜ!」 という冒頭からすぐに引き込まれた。1952年に西ドイツ北端のヴィンデビーの湿地で見つかった「湿地遺体」。それはおよそ2000...
「待った! エンジンを切れ!」 重機の音がやんだ。操縦していた男が運転席から顔を出す。「なんだよ、どうかしたのか?」 「見なよ、ありゃあ……脚だぜ!」 という冒頭からすぐに引き込まれた。1952年に西ドイツ北端のヴィンデビーの湿地で見つかった「湿地遺体」。それはおよそ2000年前、鉄器時代に生きた子どもの遺体だった。 その遺体をめぐる事実の欠片を拾い集め、作家の想像力でもってその子の物語を紡ぎ上げていくという営みを、作家はこの本の中で惜しげもなく見せてくれた。作家の探究と創作への熱量をひしひしと感じながら、ページをめくっていった。 歴史ー物語ー歴史ー物語ー歴史という構成が面白かった。「歴史」の章では、作者が湿地遺体に関心を寄せて探求を進めていく過程や、物語を書こうと思った動機、死の結末へと向かう宿命に対する苦悩を打ち明けている。そして、「物語」で「湿地遺体」として見つけ出された一人の子どもが生きた人生が描き出される。物語の拠り所となる忠実の探究と作者の思い、そしてそれが物語として羽ばたく様子を見ることができる喜びを感じた。 女に押し付けられた役割に抗い、女の子たちの生きる道を拓こうとしたエストリルト。体が弱くても自然を愛し、科学的に世界を見ようとしたヴァリク。二人の子どもたちが、生きる苦しみを味わいながら勇気を奮い起こし、「勇敢で善いおこない」をして命を落とす物語に感動した。 「鳥の骨のボタン」「カラフルな布」「武者結び」など、物語を彩る重要な要素も、ゲルマン人の生活や、湿地遺体から生み出されたもの。作者は、鉄器時代の人々の営みも目の前に鮮やかに描いて見せてくれた。
Posted by
1952年、西ドイツ北端のヴィンデビーという町で、泥炭の中から紀元前後に亡くなった少女の遺体が発見された。なぜ泥炭の中で亡くなったのか、削げ落ちた左側の頭髪にはどんな意味があるのか。作者の頭の中で遺体はエストリルトという少女となり物語を紡ぎ出す。 湿地遺体(ボグ・ボディ)の存在...
1952年、西ドイツ北端のヴィンデビーという町で、泥炭の中から紀元前後に亡くなった少女の遺体が発見された。なぜ泥炭の中で亡くなったのか、削げ落ちた左側の頭髪にはどんな意味があるのか。作者の頭の中で遺体はエストリルトという少女となり物語を紡ぎ出す。 湿地遺体(ボグ・ボディ)の存在を知った作者が、亡くなった当時の資料を元に物語を考えていく。途中で追加された事実により主人公が変わった結果、本作には2編の物語が収録されている。物語としては面白いのだけれど、如何せん死因の背景を知る手がかりがほぼ無いため、作者の想像によるところが大部分を占めていて、歴史物語としての楽しみは無い。作者が調べ上げた事実について述べる章が物語の冒頭に設けられているが、科学読み物として面白いわけでもなかったのが残念。物語の雰囲気が壊れてしまう感じもする。物語か、科学読み物か、どちらかにもう少し寄せてジャンルをはっきりさせたほうがよかったのではないかと思う。
Posted by
かつて「ギブァー記憶を注ぐ者」に衝撃を受けました。同じ作家ロイス・ローリーの最新作です。 1952年にドイツのヴィンデビーで実際に発見された2000年前の遺体を元に、何があったのか、何故死ななければならなかったのかを想像し、物語としたものです。 期待しすぎた為、物足りない感じがあ...
かつて「ギブァー記憶を注ぐ者」に衝撃を受けました。同じ作家ロイス・ローリーの最新作です。 1952年にドイツのヴィンデビーで実際に発見された2000年前の遺体を元に、何があったのか、何故死ななければならなかったのかを想像し、物語としたものです。 期待しすぎた為、物足りない感じがありました
Posted by
1952年に北ドイツの泥炭地で発見された紀元前後の若い遺体。湿地遺体(ボグ・ボディ)と呼ばれている。発見当初は少女と思われていたが、後年科学的調査の進歩により16歳の少年とわかる。作者は、泥炭地のおかげでリアルに残された遺体を見て、その少女の物語を想像する。又、後年少年であると覆...
1952年に北ドイツの泥炭地で発見された紀元前後の若い遺体。湿地遺体(ボグ・ボディ)と呼ばれている。発見当初は少女と思われていたが、後年科学的調査の進歩により16歳の少年とわかる。作者は、泥炭地のおかげでリアルに残された遺体を見て、その少女の物語を想像する。又、後年少年であると覆された事を踏まえて、少年の物語も想像する。どちらも、若くして沼地で命を落とすという結末だけは、初めから決められている。そういう状況で作家はどう発想するのか。二つのストーリーだけでなく、現代に残された事実からの発想についても作者自身が示して見せる。ユニークな作りの本である。
Posted by
- 1
