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画の悲み の商品レビュー

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2024/06/07

 国木田独歩氏の作品を読んだのは今回が初めてだと思うし、我が家の書庫にも彼の作品は初めてだ。  自らの絵の才能を自負していたものの一つ年上の絵が上手いと言われる少年をライバル視するも、彼の作品に接し、見事にその自負心が砕ける。その後、共に絵を描き共に中学校の寄宿舎で過ごす。ひとり...

 国木田独歩氏の作品を読んだのは今回が初めてだと思うし、我が家の書庫にも彼の作品は初めてだ。  自らの絵の才能を自負していたものの一つ年上の絵が上手いと言われる少年をライバル視するも、彼の作品に接し、見事にその自負心が砕ける。その後、共に絵を描き共に中学校の寄宿舎で過ごす。ひとりは故郷に残りひとりは故郷を出てそれぞれの歩みを進める。数年後、帰郷し見た変わらぬ故郷の風景と全く変わってしまった自分を顧みての最後の文章が綴られる。 闇にも歓びあり、 光にも悲あり、 麦藁帽の廂を傾けて、 彼方の丘、 此方の林を望めば、 まじまじと照る日に輝いて 眩ゆきばかりの景色。 自分は思わず泣いた。…と。  今までの情景が走馬灯のように浮かび、いつの間にか読み手の私も涙していた。この感覚はかつて読んだ三浦哲郎氏の「忍ぶ川」以来か…。

Posted byブクログ