この村にとどまる の商品レビュー
南チロルの小さな村で友だちと語り、笑い合う日々を送り教師を目指すトリーナ。しかしムッソリーニの支配でドイツ語での教育が禁じられ、地下活動で子どもたちにドイツ語を教える中で大切な友を失う。次にはナチスの迫害から逃れるために村を離れ、やっと戦争が終わり村に戻ったらダム建設で村が潰され...
南チロルの小さな村で友だちと語り、笑い合う日々を送り教師を目指すトリーナ。しかしムッソリーニの支配でドイツ語での教育が禁じられ、地下活動で子どもたちにドイツ語を教える中で大切な友を失う。次にはナチスの迫害から逃れるために村を離れ、やっと戦争が終わり村に戻ったらダム建設で村が潰されようとする。戦争や国策に翻弄される壮絶な日々がトリーナの目線から語られます。本文の後の地図と訳者後書きを読んで、地理的なイメージと何が起きていたのかを知って更に深まりました。私の中でここ数年のベスト本!
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娘が突然村から出ていった途中から一気読みしました。ダムに水没する村の運命はいろいろな事象の象徴と感じました。
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島国に住んでいると言語の違いというかすぐそこに言葉の違う人々が暮らしているということや、母語が脅かされるということがイメージしづらいと改めて思った。 娘のことも、故郷のことも、どうすればよかったのか?という正解はない。 戦争が愚かであるということは言うまでもないが。 まず娘...
島国に住んでいると言語の違いというかすぐそこに言葉の違う人々が暮らしているということや、母語が脅かされるということがイメージしづらいと改めて思った。 娘のことも、故郷のことも、どうすればよかったのか?という正解はない。 戦争が愚かであるということは言うまでもないが。 まず娘のことについてはもちろん戦争の問題と地続きだけど、なんというか、個々の問題をすべて「権力のせい」に帰結させてしまっている気がしなくもない。 もしかすると、自分には「国」というものへの帰属意識があるからある程度身軽になれるのであって、戦争によって時代によっていろんな国に併合されるだとか、強制的に言葉を変えさせられるような事が発生する土地では「国」ではなく「この地」こそが我らの還る場所というより強い意識が生まれるのかもしれない。 感想の全文は https://west-wing.hateblo.jp/entry/2025/01/19/184654
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表紙の写真の水面下にかつてあった村の人々の物語。 記録としての歴史は権力者や中央の都合でコーティングされたものが残るだけだが、個人の視点で語られる歴史は重みがある。 そこには息遣いがある。
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時代の荒波に翻弄されながら、 この主人公は結局は強く生き抜いたんだなと思った。 様々な場所で様々な知られざる歴史があり、 そこに住む人たちのささやかな生活がある。 翻弄されて苦しむのはいつも普通の人たちなんだよね。 キレイな絵だと思っていた表紙、 読み終わってもう一度ちゃんと見...
時代の荒波に翻弄されながら、 この主人公は結局は強く生き抜いたんだなと思った。 様々な場所で様々な知られざる歴史があり、 そこに住む人たちのささやかな生活がある。 翻弄されて苦しむのはいつも普通の人たちなんだよね。 キレイな絵だと思っていた表紙、 読み終わってもう一度ちゃんと見たら 写真だったと気づいて驚愕。 この本を読む前と読んだ後では、 表紙の印象がまるで違う。
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ヒトラーに対してネガティブなイメージ、知識しかなかった為、この地域の人達がナチスに希望を持っている時期があったと知り衝撃だった。ノンフィクションかと思ったらフィクションで、とはいえ娘のその後を知りたかったなと思った。どんなに勉強が好きな娘でも、学校に行かせてもらえないからって家を...
ヒトラーに対してネガティブなイメージ、知識しかなかった為、この地域の人達がナチスに希望を持っている時期があったと知り衝撃だった。ノンフィクションかと思ったらフィクションで、とはいえ娘のその後を知りたかったなと思った。どんなに勉強が好きな娘でも、学校に行かせてもらえないからって家を出ることなんて…そして一生会わないまま生きていくなんて…フィクションだなぁと思う。
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若者たちが逃げ出し、多くの兵士が帰ってこなかった。将来の可能性が奪われたこの村で。未来のことなどなにも考えず、ほかになんの確信もないまま、とにかく村にとどまりたかった。
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この印象的な表紙の写真が忘れられなくて、私も本書を買った。 国境にあるクロン村で生活するトリーナとエーリヒの壮絶な人生の物語。戦争とダム建設、この村では確かにこのような生活を強いられたであろうと想像する。 戦争や権力者は人の命や権利を虫けらのように扱う。 語り継がれなければならな...
この印象的な表紙の写真が忘れられなくて、私も本書を買った。 国境にあるクロン村で生活するトリーナとエーリヒの壮絶な人生の物語。戦争とダム建設、この村では確かにこのような生活を強いられたであろうと想像する。 戦争や権力者は人の命や権利を虫けらのように扱う。 語り継がれなければならない歴史がある。著者は熱く静かに書き上げた。私はこの物語を忘れない。
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水面にポツンと突き出た教会の鐘楼。 なぜこの風景はここにあるのか、 どうしてこうなったのか……。 抗うことの無力さ、 それでも前を向く力強さ、 物語としてこの風景を語ることで、様々な想いを水面に映すことになる。 「神さまは前だけを見るために、両目とも前に着けた」 新潮クレ...
水面にポツンと突き出た教会の鐘楼。 なぜこの風景はここにあるのか、 どうしてこうなったのか……。 抗うことの無力さ、 それでも前を向く力強さ、 物語としてこの風景を語ることで、様々な想いを水面に映すことになる。 「神さまは前だけを見るために、両目とも前に着けた」 新潮クレスト・ブックスらしい一冊でした。
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第二次世界大戦の後にダム湖に沈んだ北イタリアのチロル地方のクロン村に想いを馳せて、作者がそこに住む家族の来し方を創作した小説である。 おそらく表紙の写真は、ダムに沈んだ村の教会の鐘楼。美しい村だったというが、その写真の美しさからさぞかし、と想像できる。 ドイツ語を話す地域で、ド...
第二次世界大戦の後にダム湖に沈んだ北イタリアのチロル地方のクロン村に想いを馳せて、作者がそこに住む家族の来し方を創作した小説である。 おそらく表紙の写真は、ダムに沈んだ村の教会の鐘楼。美しい村だったというが、その写真の美しさからさぞかし、と想像できる。 ドイツ語を話す地域で、ドイツとイタリア双方に翻弄された村人、自分たちの美しい村を有無を言わさず沈められた人々。 その消えた人々が、どれほどの過酷な人生を強いられたか、小説で甦らせたマルコ・バルツァーノという作家の良心に打たれる。 地球上の隅々に人々の営みがある。 途方もない事実にクラクラする。
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