羽あるもの の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
夜伽(よとぎ)一巻(ひとまき)。 今までの吉田作品とは一味違う読み物。けれどやっぱり吉田作品らしい夜の静けさの漂う物語だった。 羽あるものにまつわる記述を筆写し、羽あるものに憧れを抱く"わたくし"。 そんな"わたくし"・野狐・和尚の3人による、いにしえの物語が静かに進んでいく。 それは戦の時代へと移りゆく、その前の時代のこと。 いずれ来るであろう戦の世から逆行し辿り着くは、嵐の前の静けさなのか。ただ一人、戦の恐ろしさ愚かさを知る野狐は2人に警告する。 「戰を回避するのです。それがわたしのつとめです」 この物語を紡ぐ吉田さんご自身が現代の我々に警鐘を鳴らしているのかもしれない。 「やがて、この者の背を割って、光そのものと思しき一対の羽がひらき、ついに大きく羽ばたいて、光の羽毛をそこかしこへ撒き散らす」 羽あるものの記述を探し求める"わたくし"は、いずれ羽を取り戻し夜空へ飛び立つことができるだろうか。 夜伽シリーズの先が楽しみで仕方ない。
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幻想的で綺麗。そんなことあるはずないような風景が思い浮かぶ。 私はとても好みだった。 古典的な言葉を調べながら、時折声に出しながら、大事に読んだ。 夕方に生まれたから、夕方にはまことの自分が生まれる感覚がある、といったようなセリフがあったが、とても素敵な感覚だなと感じる。 自分は...
幻想的で綺麗。そんなことあるはずないような風景が思い浮かぶ。 私はとても好みだった。 古典的な言葉を調べながら、時折声に出しながら、大事に読んだ。 夕方に生まれたから、夕方にはまことの自分が生まれる感覚がある、といったようなセリフがあったが、とても素敵な感覚だなと感じる。 自分は朝に清々しさを感じるが、朝生まれたのも理由なのかも、とも思えた。
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綺麗な幻想譚です。 「羽あるもの」について調べている白髪が生え始めた年齢の女性、彼女の相談相手である破戒僧、人知を超える野狐の3人(?)が主人公。時は特定されていませんが平安時代あたり、舞台は京の外れあたりでしょう。 あとがきにも書かれていますが、時代や物語の雰囲気に合わせた今ま...
綺麗な幻想譚です。 「羽あるもの」について調べている白髪が生え始めた年齢の女性、彼女の相談相手である破戒僧、人知を超える野狐の3人(?)が主人公。時は特定されていませんが平安時代あたり、舞台は京の外れあたりでしょう。 あとがきにも書かれていますが、時代や物語の雰囲気に合わせた今までとは違う文体です。とは言え、吉田さんらしい静けさ、柔らかさ、丁寧さは変わりません。 ある意味幻想譚らしく、その場その場は像を結ぶのですが、どこかフワフワとして内容が上手く頭に入ってきません。150ページにも満たない薄い本で余白も広い。祖pの沖になれば1時間もかからないで読めるでしょうが、丁寧に綴られた文章に合わせて、こちらも丁寧に二度読み。雰囲気をゆっくりと楽しみました。 扉には夜伽(よとぎ)一巻(ひとまき)とあります。どうやら「夜伽シリーズ」の始まりの様です
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吉田篤弘さんが、「ふだん使うことのない言葉」を鍛錬しつつ語られる、「羽あるもの」を求める人々(なのか定かでない存在も…)。文字とは? 言葉とは? 時の流れとは? そして、「語る」とは? シェエラザードのような「わたくし」、黙蓮寺の和尚、ただの狐ではなさそうな野狐。言葉遣いに錬れて...
吉田篤弘さんが、「ふだん使うことのない言葉」を鍛錬しつつ語られる、「羽あるもの」を求める人々(なのか定かでない存在も…)。文字とは? 言葉とは? 時の流れとは? そして、「語る」とは? シェエラザードのような「わたくし」、黙蓮寺の和尚、ただの狐ではなさそうな野狐。言葉遣いに錬れてない感が(失礼!)否めませんが、3人(?)の心の有り様を感じさせてくれました。 お話はまだ続くらしいと、あとがきにあります。月の光に淡く照らされた細道の先を見つめるように待ちましょう。
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これまでの作品とは世界観の異なったものでしたが、幻想的でこれもまた別の良さがあります。これが一巻(ひとまき)なので続きがありそうで楽しみです。
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著者あとがきにもあるように、今までとちょっと違うテイスト。 けれど、流れている空気感は同じで、ゆったりとした世界が続く。掴めそうで、つかめない、羽のような古典。
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地模様の入った素敵な和風の装丁。 これまでの吉田さんとはガラリと作風を変えた1作。 吉田さんカラーの古典といった風情。 「その者は、光をまとって書院の隅に立っていた。」 1行目から明らかにこれまでの吉田さんと世界観が違う。 主人公は両親を早くに亡くし、巫女に術を仕込まれた女性。...
地模様の入った素敵な和風の装丁。 これまでの吉田さんとはガラリと作風を変えた1作。 吉田さんカラーの古典といった風情。 「その者は、光をまとって書院の隅に立っていた。」 1行目から明らかにこれまでの吉田さんと世界観が違う。 主人公は両親を早くに亡くし、巫女に術を仕込まれた女性。 男衆が巫女に夜伽を求める慣わしとなった世。 彼女は、高貴な者に侍女として仕えたが夜毎語り手となって声を失ってしまった母親の霊を呼び、母の声と物語を取り戻す。 時が流れ、彼女は母の魂を呼び寄せなくとも夜伽を語れるようになっていたが、今の彼女は世を忍んで隠棲している。 そんな彼女の、静かで不思議な物語。 丁寧な文体が心地よい。 人が絡めとられているものとは何か、水の流れが意味するものとは、時の流れとは、魂とは何か。 羽あるものとは何を指すのか。 全体に独特の浮遊感が立ち込める中、彼女と、和尚と、野狐と、不思議な出来事が語られてゆく。 ☆傀儡女(くぐつめ) 旅回りの芸人の一座を傀儡目といい、女性の場合は傀儡女ともいう。 「あとがき」で吉田さんは、 「いかなる文体であっても、流れるように読めるものを目指しているのですが、今回ばかりは、流れに身をまかせるだけではなく、ひとつひとつの言葉を、小石を拾い上げていくように、ゆっくり読んでいただけたらと願っています。」 と仰る。 また、続編の可能性もあるとのこと。 楽しみだ。 「よくできた酒が体のあちらこちらで花を咲かせるかのごとく、沁みわたった文字のひとつひとつが、言葉として書かれた、それ以上のものをこちらに開示する。」 「あとには、しじまがのこされるばかり」 「およそ、断つことで、この身を養ってきた。」 「断たねば、いずれまた糸がほどけて、指にからみつく。」 「…香りというのは、消えいったものを、にわかに呼びもどす」 「甘く、やるせなく、なつかしくも、こころもとない」 「しかれども、わたくしはもう、そちらへもどらない。」 「文字は、見えるものと見えざるものの架け橋であり、それゆえ、双方にその身を委ねることができるのです。」 「その化け物は、はたして、われらの外にいるのか。それとも、われらの内より出でしものか。」
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丁寧に二度読み あとがきで篤弘先生も書いてらっしゃるとおり、 普段使いの言葉ではなく古典的。 一度目は文章に我が身をたゆたわせて身を委ねるように雰囲気で楽しみ 二度目はその物語の内容に思いを巡らし 現れている人物像に心の内で寄り添い そして、反芻を重ねうっとりと かの本を胸にいだ...
丁寧に二度読み あとがきで篤弘先生も書いてらっしゃるとおり、 普段使いの言葉ではなく古典的。 一度目は文章に我が身をたゆたわせて身を委ねるように雰囲気で楽しみ 二度目はその物語の内容に思いを巡らし 現れている人物像に心の内で寄り添い そして、反芻を重ねうっとりと かの本を胸にいだいて一場面一場面をこの身に写し込もうと 表現は違えども篤弘先生のこれまでの本のように どの人たちも生きている空気感がしっくりと馴染むのでした。 ひとつ 『彼方から』『彼方より』 二巻が楽しみです
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街に住む人の日常を描く事が作者の持ち味だと思うが今回は作風が全く違った。 時代は言及されておらず「はるか遠い昔の物語」として始まる。 主人公は羽あるものを探していく内に化けた狐や紙から文字が零れたりといくつもの不思議な体験をする。主人公の静かな性格や話し言葉の綺麗さにも惹かれた。
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待望の新刊。 まさに新境地でした。吉田篤弘さんの作品を読み続けてきた方からすると違和感? 私は吉田さんワールドは感じられませんでした。
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