汚穢のリズム の商品レビュー
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汚穢…汚いもの、おぞましいもの、忌避されるものなどについてのエッセイとインタビューを集めたアンソロジー。家畜・屠畜、介護にまつわる排泄物などの問題、害虫や雑草、外来語などテーマは多岐にわたる。もっと難しい内容なのかと思って身構えていたが、意外に読みやすかった。遺伝子組み換え作物の話だけは、怖い、不安だという印象に終始していて今の時代にそんな低レベルの話なのか?と思ってちょっとびっくりしてしまったが。 特に比嘉理麻さんの「分かつ──豚が『汚くなる』とき」、福永真弓さんの「におう──腐臭の境界」の連続した二つのエッセイが面白かった。沖縄のどこの家にもいた豚たちが「臭い」ものとして隔離されていった過程、現在の養豚場の従業員たちの豚との付き合い方を見る前者のエッセイ。そして鶏を絞めて解体し始めると段々とし始める臭気、疎外されてきた臭気について書く後者のエッセイは、繋がりあっているようにも思える。「豚が汚く、くさいから、人間から遠ざけられたのではない。豚は、人から遠ざけられた結果、汚く、くさくなったのである」と比嘉さんは書いているが、福永さんのエッセイに登場する生き物の生の臭いに満ちた「丸い世界」は、まさにその豚が遠ざけられる前の世界のようだ。ペットを飼っているとペットの臭いはあまり気にならなくなってくるということがあるが、そのように家畜の臭いも以前には生活の一部として受け止められていたのだろう。それがいいとか悪いとか、言いたくはないけれど。
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私が読書体験に求めるものは、まさに「汚穢」を「のぞきこむ」事だったんだと気付いた。戦争、貧困、病気、老化、環境汚染…。そういう忌避したいものから今は逃れているけど、いつまでもそうじゃないとわかっているから、本を読むことでそれらをのぞきこもうとしていたんだ。 「自分個人の身体と生活...
私が読書体験に求めるものは、まさに「汚穢」を「のぞきこむ」事だったんだと気付いた。戦争、貧困、病気、老化、環境汚染…。そういう忌避したいものから今は逃れているけど、いつまでもそうじゃないとわかっているから、本を読むことでそれらをのぞきこもうとしていたんだ。 「自分個人の身体と生活のまわりに境界線をひいて、物質的・倫理的に汚染されたものを内部から取り除こうとする態度」「潔癖主義」、という文にはハッとさせられた。 きっと私は「生への〈構え〉のようなものを組み立て直す契機」として、汚穢をのぞきこみ続けるんだろう。
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仕事で読む必要があって読んだ本だったけど、思いの外、自分が普段関心を持っていることに近いところにあることが書いてある本で、興味深く読んだ。 汚穢と聖なるもの。その二項対立みたいなものは、いろんなところにある。様々なレイヤーに存在しているこの二項対立を次々に見ていくと、自分自身も色...
仕事で読む必要があって読んだ本だったけど、思いの外、自分が普段関心を持っていることに近いところにあることが書いてある本で、興味深く読んだ。 汚穢と聖なるもの。その二項対立みたいなものは、いろんなところにある。様々なレイヤーに存在しているこの二項対立を次々に見ていくと、自分自身も色々なことにこの線を引いて生きているなと感じられた。自分は、価値観の中にある汚穢と聖なるもののようなことが少し許せない気持ちでいて、汚穢の価値観を世の中に少しずつ浸透させたいように考えていたけど、むしろその浸透させることを良しとしないこと、そのこと自体を否定するという意味で線を引いていたなと、自覚した。 何かを良しとしようとすることは、他方、何かを違うとすることでもあり、それはいいことなのか悪いことなのか、簡単に態度を決められることじゃないと思ったし、決めなくてもいい、むしろその迷っている、考え続けている、という態度が案外いちばんしっくりくる態度なのかもしれないと思った。
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汚穢の相対性、「清潔さ」の暴力性。 気づきが多く、ショートエッセイ集なので空き時間に読めるのも良かった。 内容とは関係ないですが、こういう日常に潜む暴力性みたいなものって、そもそも敏感な人たちはこういう本を手に取って勝手に価値観をずらしていけるけれど、本来伝わるべき人たち(と勝...
汚穢の相対性、「清潔さ」の暴力性。 気づきが多く、ショートエッセイ集なので空き時間に読めるのも良かった。 内容とは関係ないですが、こういう日常に潜む暴力性みたいなものって、そもそも敏感な人たちはこういう本を手に取って勝手に価値観をずらしていけるけれど、本来伝わるべき人たち(と勝手に思ってしまってるだけかもしれないけど…)は、こういう本とか考えに関心を持ってない。しかもそういう人の方が多いから社会はなかなか変わらない。 どうやって伝えていくべきなんでしょうね。
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ショートエッセイ集なのでサラッと読める。汚穢というテーマに対する切り口は各々様々でありつつも、抽象化すると切り捨てられる具体の何かへの眼差しが共通していて心地よい。個人的には老人ホームのフィールドワークに関する章がグッときました。 タイトルと表紙から受ける印象ほどキツい内容はない...
ショートエッセイ集なのでサラッと読める。汚穢というテーマに対する切り口は各々様々でありつつも、抽象化すると切り捨てられる具体の何かへの眼差しが共通していて心地よい。個人的には老人ホームのフィールドワークに関する章がグッときました。 タイトルと表紙から受ける印象ほどキツい内容はない。
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市原佐都子さんのエッセイ衝撃 心の働き方自体を汚穢化することに対して、「コレクトネス」の潔癖さを思った
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死・身体・糞便・分泌物・生き物・生活空間・都市空間・言語規範といったテーマで「汚穢」を語るアンソロジー。広範なテーマを扱いながらも一つ一つが関連し合い、読後はきたなさやおぞましさを見る観点が広がったように感じます。嫌悪や恐れに興味がある方におすすめの本です。
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汚穢とは命が滲み出し境界に出現・侵入してくること、また忌避行動の結果現れるもの、としてゴキブリやゴミ屋敷、家畜、介護などを広く語っており面白かった。川崎市民なので、特にジェントリフィケーションの話が刺さった。においなのだ、問題は 都市が脱臭された人情を売りにしてもそんなものは上っ面で、ホントの共生は違うにおいの人同士が同じ空間を共有している状態を指すんじゃないの、はその通り。でもこの次の沖縄の養豚の話でもある通り、既に分離されてしまっているし、外部からの視線や発言に晒されて方向づけられてしまっているんよ
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