四重奏 の商品レビュー
音楽だけじゃなくて、解釈して錯覚してる事なんて沢山ある訳で、なんだか共感してしまった。 読んでるこちらも取り込まれてる気分。
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ちょうどTVで小澤征爾特集を見たばかりで、もう指揮をしなくてもそこにいるだけで良い音が集まるのがスゴイと感じたところだったので、タイミングとしてはドンピシャだった。 実際に映像を観て、ね?素晴らしいでしょうと言われても、素人なので正直よくわからなかった。 ただ、これが本だった...
ちょうどTVで小澤征爾特集を見たばかりで、もう指揮をしなくてもそこにいるだけで良い音が集まるのがスゴイと感じたところだったので、タイミングとしてはドンピシャだった。 実際に映像を観て、ね?素晴らしいでしょうと言われても、素人なので正直よくわからなかった。 ただ、これが本だったら有名な著者の作品だったら、ん?と思っても素晴らしいと言ってしまうかもしれない。 本の内容としては、何が正解というものでもないのだろう。 そんなに両陣営、お互いを嫌がらなくてもとは思った。
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テーマ的には前作の「風を彩る怪物」と近いが、オリジナリティに悩む段階からさらに進み、音楽の楽しみとは何か、私たちが音楽を聴いて「感動」している時、いったい「何に」感動しているのかといったところに重心が移行している。 この作品が少し弱いなと感じるのは、鵜崎の「音楽の喜びは、技術に...
テーマ的には前作の「風を彩る怪物」と近いが、オリジナリティに悩む段階からさらに進み、音楽の楽しみとは何か、私たちが音楽を聴いて「感動」している時、いったい「何に」感動しているのかといったところに重心が移行している。 この作品が少し弱いなと感じるのは、鵜崎の「音楽の喜びは、技術に基づく錯覚である」というような、ある種の「陰謀論」が前面にですぎていて、それが対立している「音楽作品や、名器、巨匠の偉大さ」だったり「作曲者からのメッセージ」や「それを読み解く、演奏者の解釈」だったりといったものとの二項対立ばかりに目が行ってしまうところだと思う。 だけれど、このお話のテーマは、「正しい解釈、正確な演奏」に対する「自由な解釈」や「音楽そのものの喜び(おそらくはチクセントミハイの言うフローであり、ホイジンガが言う遊びの楽しさ)」といった主人公と由佳の関係性に代表される、もう一つの二項対立が、鵜崎の提示する二項対立にすりかえられていくところであって、この作品はこうしたすり替えを弁証法的に乗り越えたところにその解決を本来持っていければ、大きな感動につながったんだろうと思う。 でもこちらでの感想を読むと、ほとんどの人が、由佳の死の真相が「しょぼい」と感じてしまっているように、由佳の人生は上記の方向で進んでいたはずなのに、それが死の謎と直接には無関係で終わってしまっているところに、問題があったのではないかと思う。 これでは由佳は死に損だし、主人公も由佳の死から、大きなものを学んで、前進していくというようにはなりえない。そういう意味で少し残念な作品ではあった。 ただ挑んだテーマの大きさから考えると、この先への期待を残している。
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音楽家の苦しみ喜び、その人生の一部分を書いているところがとても面白かった。 オーケストラで弾く一チェリストが、オーケストラの他の楽団員をどんなふうに見て捉え、後ろから聴こえてくる音がどんなふうに聴こえているのか、なども興味深く読んだ。 ある天才的技巧を持つ鵜崎というチェリストは...
音楽家の苦しみ喜び、その人生の一部分を書いているところがとても面白かった。 オーケストラで弾く一チェリストが、オーケストラの他の楽団員をどんなふうに見て捉え、後ろから聴こえてくる音がどんなふうに聴こえているのか、なども興味深く読んだ。 ある天才的技巧を持つ鵜崎というチェリストは、「人間は音楽なんて理解していない。すべて錯覚だ」と言う。人々が魅了される演奏とは、よい演奏の模倣と、演技力や先入観による「錯覚」を上手く使えば出来上がるとする考えかた。 主人公の英紀も、鵜崎のこの考え方にはまっていきそうになる。そして、それを読んでいる私もはまっていく。この考えに同調すると、全てが無意味に思え、人間不信が加速してしまう。 物語の最後には、そこに希望を持たせて、例え各々が一部分ずつしか解釈できないとしても、そして、その解釈が本当かどうかはわからないにしても、解釈しようとし続ける、対峙し続けることが大事と向かわせる。 しかし、鵜崎の言葉を知る前の自分にはもう戻れない気がする。おそらく、鵜崎の言っていることの方が真実に近いと思っているからだ。ただ、それが真実だから仕方がないと完全に閉じて生きて演奏していくだけの強さは私にはない。 音楽って何だろう?と改めて考える。楽しい、励まされるなど言っている人をよく見かける。私は楽器を演奏するが、正直、楽しいとか、力をもらえるとか、慰められるとか、よくわからない。多くの曲は、すぐ飽きてしまいその良さをわかりきれない。流行りの音楽はうるさいと感じる。同じ演者が演奏していたら、あっという間に飽きてしまう。(ただ、数人の奏者だけは一音一音聴き惚れてしまう。そういう演奏家を巨匠というのか、と思っている)自分がとても時間をかけて練習し向き合った曲は辛うじて聴いていて興味が続くが…。 ただ、かなり稀に、他では得難い言いようのない高揚が訪れることもある。 音楽をやっていると、正直苦しいことの方が多い。正解のないものに永遠と向かい、その曲を一応区切りとして練習し終える時は、辿り着けないところを諦めるしかない。 こんな苦悩を、ややミステリーを混じえ描いていた。終わりは好きではなかったが、それ以外はかなり面白かった。
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分からないじゃなくて、理解しようと試み続けるのがきっと大事なんだと・・・ 甘いものに目を奪われ、誘蛾灯に飛び込まないように気をつけないとダメですね。
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ミステリー小説なのかな?と思ったらほとんどが音楽に対する葛藤でした。音楽好きとしては嬉しいのですが、ミステリーにハマった身としては少し物足りなく、-星1です。
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模倣と錯覚。 こういう音楽✕ミステリーもあるんだな。 ただ、主人公の心理が、今一つ分かりにくい。最後も、そこへ来るかという感じ。
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面白かった。この世界にのめり込んで読みました。仕事中も続きが気になって仕方ないくらいに。音楽に造詣が深い訳でもないし、おそらく楽器の善し悪しも聞き分けられないと思うけど、悲しいかな「錯覚」はあると思う。でも音楽を聴くのは好き。小松さんの好感度が高い。
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音楽の素養は全くないが、良かった。 チェロ奏者の話だが、どんな生き方を選んでも遭遇する普遍的な話だと思うので、幅広い層に読んでもらいたい。 「人間は何も理解できない」──でも〈解釈〉し続けるしかない。 絶望の中に一筋の希望を見出すようなラストに感動した。とても良かった。
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