私たちはいつから「孤独」になったのか の商品レビュー
鬱症状に病名を与え、神経伝達物資など原因への理解が進み、鬱病が増えていくように、孤独も同様に、市民権を得て近代のものと扱われるのだが、それは本当だろうか。ngramの分析は面白くてたまに私も利用するが、これは年代別の文献における単語の頻度をグラフ化したもの。この分析により、孤独が...
鬱症状に病名を与え、神経伝達物資など原因への理解が進み、鬱病が増えていくように、孤独も同様に、市民権を得て近代のものと扱われるのだが、それは本当だろうか。ngramの分析は面白くてたまに私も利用するが、これは年代別の文献における単語の頻度をグラフ化したもの。この分析により、孤独が近代のものだというのが著者の主張の一つ。これに対する反論は前述の通り、感受していても症状として扱わなければ知覚されない。 一方で、本当に昔の人は孤独じゃなかった説を考えてみる。というか、現代だって、我々は本当に孤独となり得るのか。社会的つながりは消費生活の中で隔絶しようがない。天涯孤独とは、身寄りが一人もいない状態を指すようだが、家族と死に別れ、独居老人になったとしても、完全に孤独になるのは中々難しい。むしろ、家族はいるが友達がいない状態、ある意味では軽度な症状で「孤独」を感じやすくなったという方が分かりやすい。これは、本書でも書かれる通り、他社との比較で感じるものであり、昔の人も似たような状況だったと思うが、相対的に感じる孤独は、今より少なかったはずだ(少なくとも、SNSで陽キャのマウントPRを見なくても良いだけ)。 本書は、孤独という感情がどのようにして現代社会で形成され、理解されるようになったかを探る本。孤独が単なる「一人でいること」から、否定的な欠乏感を伴う複雑な感情群へと変化した歴史を紐解く。近代以降にどのようにして社会的な問題として認識されるようになったか、またその背景にあるジェンダー、エスニシティ、年齢、社会経済的地位などの要因についても詳述される。 私はどちらかというと孤独が平気であり、むしろ、ずっと人がいる状態は疲れる性質だ。従い、みんなが孤独な社会というイメージにあまりネガティブな印象がない。ソロキャンプみたいで楽しいのでは、とすら思う。
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孤独について、政治的か社会学的なアプローチをしているのかと思いきや、それは最初と最後くらいであり、どちらかといえば過去の作家たちが言及してきた孤独への批評に近い。 孤独=Lonelinessという言葉は18世紀から19世紀にかけて生まれた言葉とのこと。それまではSolitude...
孤独について、政治的か社会学的なアプローチをしているのかと思いきや、それは最初と最後くらいであり、どちらかといえば過去の作家たちが言及してきた孤独への批評に近い。 孤独=Lonelinessという言葉は18世紀から19世紀にかけて生まれた言葉とのこと。それまではSolitude=ひとりでいることを表す言葉が使われていた。 わざわざLonelinessという単語が現れ、浸透していったということは、Solitudeだけでは表せない感情が生まれたことを意味する。では、その感情とはなんなのか。それが本書の主題である。 本書内でも書かれているが、孤独には対義語がない。 よく、既婚と独身が対になって言い表される。これはたしかに対なのだが、たとえば「ずっとひとりは寂しいだろうから早く結婚したほうがよい」などと言う時、この場合の「ひとり」はSolitudeではなくLonelinessを表している。解決策が結婚かどうかはとにかく、とにかく孤独を早く解消したほうが良い、ということだ。 孤独とは、ある種の症状のようなもので、ひとつの状態である。風邪や湿疹に対義語がないのとおなじ意味で。 本書では、孤独にまつわる諸問題も書かれているが、孤独のプラスの面も書かれている。ただ、そのほとんどは凡庸な人間には関係のないことだ。 哲学者や小説家の思索とか、有名人が喧騒から離れるための隠遁生活とか、可愛い子には旅をさせよ的な成長のための通過儀礼とか、そのような孤独のポジティブな面はたしかにあるだろう。ただ、それはほとんどの孤独な大人には関係ないことである。
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イギリスの孤独の文学史に孤独の映画史が加わったものである。孤独を扱った有名なイギリス文学を説明しているのだが、日本人にとってはその文学の孤独の場面がそれほど記憶にないかもしれないので、いまいちピントこないかもしれない。イギリス文学を新しい眼で見て卒論にするテーマの参考にするにはい...
イギリスの孤独の文学史に孤独の映画史が加わったものである。孤独を扱った有名なイギリス文学を説明しているのだが、日本人にとってはその文学の孤独の場面がそれほど記憶にないかもしれないので、いまいちピントこないかもしれない。イギリス文学を新しい眼で見て卒論にするテーマの参考にするにはいいのかもしれない。
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本書の副題The History of an Emotionと言う副題にひかれて読んでみた。感情史と言う学問の本はほとんど読んだ事が無かったので構えて読んだが心理学、哲学、神経科学に関する理論的で難解な記述はあまり無く専門知識の無い人にも興味深く読める。 センセーショナルなものは...
本書の副題The History of an Emotionと言う副題にひかれて読んでみた。感情史と言う学問の本はほとんど読んだ事が無かったので構えて読んだが心理学、哲学、神経科学に関する理論的で難解な記述はあまり無く専門知識の無い人にも興味深く読める。 センセーショナルなものは何も無いが孤独と言う感情の複雑さをエピソードを交えて丹念に追っており、自分は対処の難しさを感じたが筆者はそれなりの社会政策に対する批判や提案を提示しており、決して派手さは無いが学者として誠実な態度を感じる。 ただ孤独と言う感情群が近代以降誕生した情動だと言う主張は普遍宗教の衰退、産業資本主義の進展、社会共同体の解体など説得力は十分にあるのだが、Lonlinessと言う言葉の発明それ自体が孤独感情の社会的知覚を促進するフィードバックも確かにあると思う。普遍感情としての孤独も否定出来ないと思う。
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主はイギリスにおける孤独のテーマであり、イギリスの文化的背景にそれなりの知見がないと少し共感は浅くなるかもしれない。 孤独を見つめる視座とテーマが幅広く、訳者あとがきにもある通りシンプルに題材が広い点は魅力の一つ。 孤独に対して何か明確な課題提起と解決があるようなものではない。
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ざっとしか読んでないけど。孤独がここ2、3百年の話だとは思わない。ブッダの生きた4000年前から、人を求め、人に裏切られ、傷つきながらも幸せを求めて生きてきたのではなかったか。人の社会において意図や意志や感情のすれ違いは、かなり昔からあるのではないか?孤独は、食欲や性欲や睡眠欲や...
ざっとしか読んでないけど。孤独がここ2、3百年の話だとは思わない。ブッダの生きた4000年前から、人を求め、人に裏切られ、傷つきながらも幸せを求めて生きてきたのではなかったか。人の社会において意図や意志や感情のすれ違いは、かなり昔からあるのではないか?孤独は、食欲や性欲や睡眠欲や排泄欲くらい、人間に織り込まれた感情なのではないか?と思った時に、読む価値がないように思われた。
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出版社(みすず書房)のページ https://www.msz.co.jp/book/detail/09655/ (目次、概要、序論の抜粋)
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