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インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2024/09/29

「開かせていただき光栄です」から始まるエドを主人公としたシリーズの三作目。これで完結と銘打たれている。 今作は安楽椅子探偵ならぬ獄中探偵となったエドの語りと回想シーンがそれぞれ交互に展開され、しっかりと追いかけないと話に着いていくのも難しい。けれどその構成がまた上手く、内容に惹き...

「開かせていただき光栄です」から始まるエドを主人公としたシリーズの三作目。これで完結と銘打たれている。 今作は安楽椅子探偵ならぬ獄中探偵となったエドの語りと回想シーンがそれぞれ交互に展開され、しっかりと追いかけないと話に着いていくのも難しい。けれどその構成がまた上手く、内容に惹き込まれる。 本編も大変面白かったのだがネタバレを避けると物語るのが難しい。ただ、巻末の解説が非常に良かった。解説の中で話の内容に触れるものは少ない印象だが、一般的な読者では気付くことが難しいところに専門家の観点から解説が加えられていて、またその内容が非常に興味深く、この三部作への畏敬の念を強くした。(「思えばこの三部作は、初めから小説の小説であった。」から始まる箇所) 生涯自分の記憶に残るシリーズになるだろう。

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2024/05/13

3部作の最終作、シリーズを通して濃くて骨太。 1作目から感じた読み物としての圧倒的質感を維持したままの完結は凄いと思いました。

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2024/01/04

皆川博子『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』(ハヤカワ文庫2023年11月印刷)を読んで――雑文。 通常は作品の感想を書きますが、今回は、ミステリのシリーズ三作目である事もあり、前作をも含めてネタ割りをせずに感想を書くのも辛いので、取り留めのない雑文になります。まあ、ふだんか...

皆川博子『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』(ハヤカワ文庫2023年11月印刷)を読んで――雑文。 通常は作品の感想を書きますが、今回は、ミステリのシリーズ三作目である事もあり、前作をも含めてネタ割りをせずに感想を書くのも辛いので、取り留めのない雑文になります。まあ、ふだんから取り留めのない感想を書いて居りますが。 もう言うてもよかろうが『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』は文庫版が出るまで待って読みました。前二作はハードカヴァーで買い、文庫版に付録が付いたので文庫版も買うたのですが、ハードカヴァーの方は已む無く手放したので、文庫版で揃えたいと思うたからです。今度も文庫版にはおまけが付くかという期待もあったのですが、それがなかった事は残念です。バートンズの短篇があった筈、どこかで纏めていただきたく存じます(できれば文庫サイズで、新装版等でも嬉しい)。文庫版といえば解説が付きものですけれども、杉江松恋氏の解説は読み応え有り、作品世界と距離を置き日常に帰ってくる道標として調度よく、まことに助かりました。 さて、皆川作品に於ける続編は、読むのに覚悟がいるというか、私が続編という物に求めがちな内容から少少外れる事が多い。まさかこんな事とは…!という展開が多い気がします。シリーズ一作目『開かせていただき光栄です──DILATED TO MEET YOU』は、比較的読み易いので皆川作品未読の人にも推奨できるという声もありますが、それはその通り。シリーズ未読の方はやはり一作目から読むのがよいでしょう。 ところで、私の大好きな皆川氏の近作『風配図 WIND ROSE』の続編(?)の話も聞こえて参りますが、紹介を読むだけで不穏で不穏で。楽しみです。

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2023/12/27

前二作を図書館で借りたものの、こちらがなかなか手元に届かなかったので、やむを得ず久しぶりに本屋で文庫版を購入。(オンラインで待つ時間すらも惜しかった。) 三部作はいずれも18世紀末のロンドン、アメリカを舞台にしたフィクションであるが、脇役には実在する人物が登場したり、史実がスト...

前二作を図書館で借りたものの、こちらがなかなか手元に届かなかったので、やむを得ず久しぶりに本屋で文庫版を購入。(オンラインで待つ時間すらも惜しかった。) 三部作はいずれも18世紀末のロンドン、アメリカを舞台にしたフィクションであるが、脇役には実在する人物が登場したり、史実がストーリーに重要な意味合いを持たせて描かれている。巻を追うごとに、エンタテイメント性より歴史小説の色合いが濃くなっていく。同時に主人公や仲間の苦悩の物語に対する比重も大きくなっていく。 発行は文庫版で一部が2011年、二部が2016年、三部は2023年と約10年をかけて完結となっている。私自身は一月に満たない間に読み切ってしまい、それぞれ初版で追いかけていた方々とは熱量が違うかもしれないが、間をおかなかったことで熱を冷まさず読み切ることができたのは幸運だったと思う。 主人公や周りで支える人物たちの苦悩が痛ましい。どの巻も最後の1ページに悲哀がこめられている。完結後も、連載されていたミステリマガジンでは読切短編がいくつか発表されている。今後はこちらを追っていきたい。2023年末にこのような素晴らしい作品に出会えてよかった。

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2023/12/27

三部作の最終作。だが、前二作とは舞台が変わり主要登場人物も大きく変わったので、未読でも問題なく読める。読んできた方からすると、やっぱりエドはエドだったと思うだろう。エドが選ぶから茨の道になるのか、茨の道があるからエドは選ぶのか、どちらも当てはまるか。三部作を通して、優しい表情をす...

三部作の最終作。だが、前二作とは舞台が変わり主要登場人物も大きく変わったので、未読でも問題なく読める。読んできた方からすると、やっぱりエドはエドだったと思うだろう。エドが選ぶから茨の道になるのか、茨の道があるからエドは選ぶのか、どちらも当てはまるか。三部作を通して、優しい表情をするエドはほんの数えるほどだったのではないだろうか。直接語られることのない最後の手紙。色々な感情が湧き上がる。せめてナイジェルと共にいられることを祈る。 物語は前作からそのまま続き、新大陸を舞台に語られる。エドは投獄されており、罪状は殺人であるという。殺されたとされるアシュリー・アーデンは、父が植民地の支配者、母が先住民のモホーク。新聞記者のロデリックが面会に訪れ真実を聞き出す現在の「調査」パートと、過去に何があったか語られる「犯行」パートが交互に記されていく。時は独立戦争の真っ只中であり、読んでいるこちらは国王派と愛国派の双方の考え、行動、立場などを知る。そして、両者に足を置くアシュリーの葛藤はなかなかに心苦しい。両パートから次第に分かってくる真実は、抗いたい心と抗えない運命の拮抗のようにも思える。まるでエドの生と死のようではないか?ロマンスとは深いな。

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2023/12/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

・シリーズ3作目。 ・「クロコダイル路地」で、バートンズの面々のその後がちょろっと描かれていたが、本作はそこでは描かれていなかったエドとクラレンスの、新大陸アメリカでの話。 ・アメリカ独立戦争の直前。上に新大陸とつい書いてしまったが、それは英国側の論理。先住民族を搾取する植民の物語でもある。 ・が、そこは皆川博子、アシュリーという中間者を設定し、異文化の衝突と交流を鮮やかに描く。 ・しかもアシュリーを、読者にとって共感しやすい本好きとした。解説に杉江松恋が言うように、書くことや語ることを前面に押し出し、どころかそれすら謎に取り込んで、小説の小説に仕立てる。これぞ小説の女王。「書いたものが届く」ことの奇蹟。 ・個人的には、中年になってウィリアム・フォークナーにようやく接近しているのだが、その前史をまさか皆川博子の筆で開陳されるとは。僥倖とはこのこと。 ・Podcast「コテンラジオ」のアメリカ開拓史パートも参考になった。 ・それにしてもこれで終わりか……と遠い眼をしていたら、なんと早川書房「ミステリマガジン」にスピンオフ短編がいくつか掲載されているらしい。 こりゃバートンズ短篇集、あるぞ! と哀しさ半分嬉しさ半分で、明日からもまた生きていけるのであった。

Posted byブクログ