甘くない湖水 の商品レビュー
デビュー作なのか、力いっぱいぶつけましたっ、って感じがイタイ。あんまり文章の書き方も、取り上げた内容(女の愛憎)も好みでない。といいつつも読後は、同郷のエルサ・モランテらしさが余韻として残った。やっぱイタリア人というのは情感豊かな国民性だと思うが、文化的には(ペドロ・アルモドバル...
デビュー作なのか、力いっぱいぶつけましたっ、って感じがイタイ。あんまり文章の書き方も、取り上げた内容(女の愛憎)も好みでない。といいつつも読後は、同郷のエルサ・モランテらしさが余韻として残った。やっぱイタリア人というのは情感豊かな国民性だと思うが、文化的には(ペドロ・アルモドバル映画監督とか)必要以上に傷を治す方に持ってかないで、いかにより多くただれるか挑戦してるように思えるんだが。
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兄と私、双子の弟たち、母と父親。母は法を犯さないように自分の権利をまげることなくしっかりと主張する人で、貧困のなかで家を支える。そして父は現場で怪我をおったために下半身不随となり仕事ができなくなってしまった。そんな一家が湖畔の近くの集落に移住してからの、私の物語。 自分を押し殺し...
兄と私、双子の弟たち、母と父親。母は法を犯さないように自分の権利をまげることなくしっかりと主張する人で、貧困のなかで家を支える。そして父は現場で怪我をおったために下半身不随となり仕事ができなくなってしまった。そんな一家が湖畔の近くの集落に移住してからの、私の物語。 自分を押し殺し、気持ちを伝えることのない私。家や学校では中立の立場を保つ。空気のように、いないかのように。他の家に普通にあるものがない。新しいノートもペンも服もリュックも。携帯電話もテレビも車もスクーターも自転車も。 そして私は自分の持ち物であるラケットを壊した男の子の膝を殴打し、射的場で缶をすべて撃ち落とし、年上の同級生にビンタをくらわすし、自動車に火を放つ。 誰も私を顧みてくれない、私の気持ちを慮ってくれない、持っているものを分かち合う気持ちは周りにはなく、私を認識してくれる人はいない。 自分のなかにあるこういった思い、とくに成人式の祝に本人である私は本当にイヤでやめて欲しいと思う気持ち。周りが楽しんでいる空間で息苦しくなる気持ち。激情といったものの処理しきれなさが10代の頃に経験した思いと重なって苦しくなる。ここまで実行に移すということはなかったけれど。そして重なる部分がものすごくピッタリと重なるからこそ、重ならない部分だったりもはっきりと見えて、主人公の私と読者である私はちゃんと別の人間だと思ったりもした。ここは著者の覚書を読んでなおさら思ったところでもあった。 大人になって振り返った時に気づくものは当時では絶対に気づかなくて、息苦しさを感じながらも同時に自分の情にたいして落とし所のような部分も見つかってほっともした物語だった。
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