宗教の起源 の商品レビュー
ダンバー数(=人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限、150人)を提唱した筆者が、宗教がなぜ人間社会に生じたのかを宗教の各構成要素を切り口として考察した本。 久しぶりにこういう本をドシッと読めて楽しかった。 「コミュニティの規模が増えると統治が難しくなり、...
ダンバー数(=人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限、150人)を提唱した筆者が、宗教がなぜ人間社会に生じたのかを宗教の各構成要素を切り口として考察した本。 久しぶりにこういう本をドシッと読めて楽しかった。 「コミュニティの規模が増えると統治が難しくなり、そのコミュニティを維持するためのストーリーが必要になる。それが宗教」というよくある語り口を丁寧に解説していく。 そこに追加して人間が持つ特異なメタ認知能力が、ストーリーの納得感を高め、宗教の発展に寄与したという視点が新鮮でよかった。
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宗教の起源について、人類学と進化心理学の専門家である著者が迫った。そもそも霊長類は外敵脅威から身を守るため集団で結束して生活するが、その集団の規模は脳の大きさによって決まっており、人間の場合は身近な共同体や個人の社会ネットワークには150人という上限が存在する。それを超えた集団を...
宗教の起源について、人類学と進化心理学の専門家である著者が迫った。そもそも霊長類は外敵脅威から身を守るため集団で結束して生活するが、その集団の規模は脳の大きさによって決まっており、人間の場合は身近な共同体や個人の社会ネットワークには150人という上限が存在する。それを超えた集団を作ろうとすると、規模の拡大に合わせてストレスや集団内の暴力を減らす方法が必要になるが、宗教はそのための効果的な仕組みとして発達したとする。 宗教の起源へのひとつの明快なアプローチであった。
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人間の認識能力と集団生活が宗教を生む。自然や集団の中で起こる理不尽な出来事を感じ取りそれをホモサピエンスの認知能力の力でメンタライジング(目に見えない世界を想像する段階の深まり。普通の人は五次まで扱える)することで超越的な存在を想像してきた。集団的な陶酔もツールとして使うシャーマ...
人間の認識能力と集団生活が宗教を生む。自然や集団の中で起こる理不尽な出来事を感じ取りそれをホモサピエンスの認知能力の力でメンタライジング(目に見えない世界を想像する段階の深まり。普通の人は五次まで扱える)することで超越的な存在を想像してきた。集団的な陶酔もツールとして使うシャーマニズム宗教が生まれる。陶酔感は大脳のエンドルフィン分泌により生み出される。その想像を共有できて互いに関係を持てる共同体はダンバー数の150人くらいまで。これも大脳の認識能力が制限している。人が外敵からの防衛を目的として大きな共同体を作る段階ではシャーマニズム宗教の手には負えなくなる。宗教はよりシステマティックに教義がまとめられて組織化され教義宗教になる。教義宗教はより大きな人数を内包できるが、構成員の帰属意識は低くなる。そのため常に内部に新たな思想の極が生まれ、カルト化する可能性を孕んでいる。 人間の脳の機能により陶酔感、集団意識が生み出され宗教が成立し、人間の脳の限界により、その規模は制限されて分裂し、カルトが生まれる。しかし人間のメンタライジング能力は超越的な存在をなんとなく求めてしまう。皮肉な堂々巡りのようでもあるけどそれが人生や世界の成り立ちなのかもしれない。
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なんとなく、タイトルと目次を見て読もうと思ってみたのだけれど、 よく見ると、ダンバー数(人間の安定した社会集団の上限はだいたい150人くらい)で有名な著者によるものだったと知り、楽しみにしながら読んでみた。 この本は、タイトルからすると、宗教の考古学的な研究や宗教の歴史研究のよ...
なんとなく、タイトルと目次を見て読もうと思ってみたのだけれど、 よく見ると、ダンバー数(人間の安定した社会集団の上限はだいたい150人くらい)で有名な著者によるものだったと知り、楽しみにしながら読んでみた。 この本は、タイトルからすると、宗教の考古学的な研究や宗教の歴史研究のように思えるが、そうではない。 宗教の中身の問題ではなく、宗教があることが人間社会においてどのような役割を果たしているのかについての本になっている。 結論から言うと、人間の集団は本来の自然な規模であるダンバー数、100~200人を越えて(ある程度)機能しているわけだが、社会集団を機能させるための調整機能を宗教ははたしている。 また、シャーマニズム的な宗教から、やがてより複雑な教義的宗教が現れるようになってきた過程について、集団の規模が大きくなってきたこと、それにより、より大きな集団をまとめるための方法が模索された結果ではないか、と著者は述べている。 その他、枢軸時代に亜熱帯地域に現在の世界宗教となっているようなものが出現している理由や宗教の中でカルトやセクトなど分裂の起きる理由なども考察されている。 あくまでも個別の宗教の中身、教義の是非を問うようなものでなく、 人類学的、心理学的分析に基づいて社会と宗教の関係を見ていくような本になっていた。 日本人には宗教は馴染みうすいことも多いが、世界は宗教で動いているとも言われる。 そう言った目線で見るのには役立つ本だと思った。
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レビューばブログにて https://ameblo.jp/w92-3/entry-12837448160.html
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歴史の解説かと思って読み始めたが、科学解説だった。 人間が親密性を感じながら生活できる集団のサイズの上限は150人で、それを超えると分裂が始まる。それにより大規模な宗教には必然的にカルトが生まれる。 解説によると、その150人という数をこの本の著者の名前からダンバー数というらしい...
歴史の解説かと思って読み始めたが、科学解説だった。 人間が親密性を感じながら生活できる集団のサイズの上限は150人で、それを超えると分裂が始まる。それにより大規模な宗教には必然的にカルトが生まれる。 解説によると、その150人という数をこの本の著者の名前からダンバー数というらしい。
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宗教は人間の脳が大きくなるにつれ、共同体の規模が大きくなるにつれ、必然的に生まれた。 宗教の最大の意義は共同体を安定的に維持すること。 人間が親密さを持って接することができる人数の上限は150人前後。共同体の人数がこの数を越えると帰属意識が薄れていく。それを防ぎ共同体を継続し...
宗教は人間の脳が大きくなるにつれ、共同体の規模が大きくなるにつれ、必然的に生まれた。 宗教の最大の意義は共同体を安定的に維持すること。 人間が親密さを持って接することができる人数の上限は150人前後。共同体の人数がこの数を越えると帰属意識が薄れていく。それを防ぎ共同体を継続して維持していくために儀式を伴う宗教で人々を団結させる必要があった。儀式や歌は人々を高揚させトランス状態に導く。トランス状態に入ることで巨大な共同体につきものの人間関係のトラブルはリセットされる。 周囲と一体感を得ることでエンドルフィンが分泌され幸福感が起こり、NK細胞が活発化して免疫が高まり、利他的な気持ちになって共同体の結束を高める効果もある。宗教すごい。調査によると信仰心のある人の方がない人より健康で幸福な傾向にあるという。 集団が150人規模を超えると人間関係の緊張度が増すと何度も繰り返し述べられる。やはり人間にとって他人はストレスの源なのだとの感を強くした。phaさんや鶴見渉さんによる「集団を閉鎖的にしない」「常に外にゆるく開いておく」という工夫やサードプレイス概念の正当性を裏付けている。 カルトの創始者は統合失調症と類似の精神的傾向があるという。幻視や幻聴といった神がかり的な体験が病いの症例とたしかに似ている。イエスやブッダもそうだったのかもしれない。 宗教は衰退していると言われるがそれはあくまで一部の先進国に限った現象であり、経済格差が大きい国では裕福でない層を中心にさかんに信仰されている。人間の営みで宗教に代わるものはなく、時代とともに中身は変わったとしてもなくなることはおそらくない。
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