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ロシアより愛をこめて あれから30年の絶望と希望 の商品レビュー

4.2

6件のお客様レビュー

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2024/04/15

 ソ連の崩壊資本主義の台頭、経済の混乱、そして30年後のウクライナ侵攻。著者が海外特派員として現地の職員と働いた4年間の書簡。ロシアの大雑把で厚かましい人々への愛と憎しみに溢れている一冊。ロシアと日本や西側諸国との違いや著者が読んでいる本も楽しめます。1991年当時の日本社会の世...

 ソ連の崩壊資本主義の台頭、経済の混乱、そして30年後のウクライナ侵攻。著者が海外特派員として現地の職員と働いた4年間の書簡。ロシアの大雑把で厚かましい人々への愛と憎しみに溢れている一冊。ロシアと日本や西側諸国との違いや著者が読んでいる本も楽しめます。1991年当時の日本社会の世相や現在のウクライナ侵攻前日と当日の緊張と混乱が伝わります。

Posted byブクログ

2024/02/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

90年代前半のロシアに駐在した金平さんの駐在記だが、今のロシアや日本に続く問題についての鋭い指摘が続く名著だと思う。 エリツィンの考察や地獄の沙汰もカネ次第みたいな日常も細かく書かれていて面白かった。受験生でエリツィンというといつも酔っ払っているイメージが強かったがなかなかしたたかだったんだなぁと感じた。ソビエト崩壊後も、力を持つKGBや今やコスパ、タイパと効率重視の日本人には理解できないお役所対応の描写も面白い。 値段の割にまずい日本食とか、忙しかろうが自分の権利は守る!ロシア人。(しかしこのタイプ、日本でも増えてるし悪いことではないよなぁ) 著者がロシアを去るときに贈られた宝石箱に話も良かった。

Posted byブクログ

2024/01/16

集英社文庫 金平茂紀 「ロシアより愛をこめて」 2部構成の取材日誌 *1991年〜ソ連の社会主義終焉と直後の混沌とした状況 *2022年〜ロシアのウクライナ侵攻 現在から読むと、イデオロギーは終焉しても、新しい秩序が確立したのではなく、国家と民族の対立が起きたというこ...

集英社文庫 金平茂紀 「ロシアより愛をこめて」 2部構成の取材日誌 *1991年〜ソ連の社会主義終焉と直後の混沌とした状況 *2022年〜ロシアのウクライナ侵攻 現在から読むと、イデオロギーは終焉しても、新しい秩序が確立したのではなく、国家と民族の対立が起きたということになる 著者のメッセージ「独立と自尊を求めるウクライナもいい。偉大なるロシアの幻影を求める人々がいてもいい。だが、お互いに殺し合いをするのはやめて欲しい。国家とか民族とか、それがなんぼのものなのか」 社会主義終焉時の混沌とした状態 *ソビエトもマルクスレーニン主義を否定するところまできた *何かやたらと物をせびられる〜共産党の崩壊やKGBの失墜により市民を抑圧してきた重しがなくなった *貧富の格差の拡大〜階層間、地域間、ロシアと旧ソビエト諸国間 著者が、混沌としたモスクワから見た1991年の日本 *国際社会で日本に振り当てられているのはサラ金〜ロシアは物乞い国家〜サラ金と物乞いは歪んだ出会いしかできない *日本という国家が求めているのは、いつも平均より上〜均一な価値観によって支配された社会は、同質性や均質性を国民に強いる社会になる

Posted byブクログ

2023/11/26

《現地の現実はかくも想像と異なるのか》 ソ連崩壊時にモスクワで働いていたTBS特派員の書簡・日記。私は21世紀生まれでソ連を歴史でしか知らないが、当時の実態(政治情勢だけでなく市民生活も)を追体験できる迫力ある文章が綴られている。この本は加えて2022年からのウクライナ侵攻時のウ...

《現地の現実はかくも想像と異なるのか》 ソ連崩壊時にモスクワで働いていたTBS特派員の書簡・日記。私は21世紀生まれでソ連を歴史でしか知らないが、当時の実態(政治情勢だけでなく市民生活も)を追体験できる迫力ある文章が綴られている。この本は加えて2022年からのウクライナ侵攻時のウクライナ取材も同録されており、他のメディアでは伝わりにくい実情も記されている。日本の中での想像と現地の現実の差を意識させる、報道として良い本。

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2023/10/12

本書は著者がモスクワ駐在員として勤務した1991~1994年頃の約4年間、著者自身が経験した日常を知人宛への書簡としてまとめたものです。取材や調査を基に事実を描くスタイルではないので、当時のロシアに関する客観的な分析などが描かれているというわけではないですが、ソ連が崩壊し、クーデ...

本書は著者がモスクワ駐在員として勤務した1991~1994年頃の約4年間、著者自身が経験した日常を知人宛への書簡としてまとめたものです。取材や調査を基に事実を描くスタイルではないので、当時のロシアに関する客観的な分析などが描かれているというわけではないですが、ソ連が崩壊し、クーデターが発生した当時の不安定な状況下でのモスクワの空気感が良く伝わって来ます。 ソ連といえば、日用品を購入するにも行列で待たされるとか、警官や車掌といった公共性のある職業人が堕落して賄賂を握らせたらどうにでもなったりとか、ナショナルフラッグキャリアのアエロフロート航空の酷いサービスの内情など、そういう日常レベルでの混乱などがリアルに紹介されており、約70年の歴史を閉じた社会主義経済から資本主義へ移行する混乱を市民レベルで描いています。 この頃のロシアはルーブル安でインフレも激しく、国家としてもヨレヨレで、西側の援助なしでは成り立たないぐらい弱っており、冷戦終結で世界情勢はアメリカ一局に突き進んでいる様子も伝わって来ます。プーチンをはじめとする現在のロシアの指導者層が、この頃に味わった劣等感、屈辱感みたいなものが30年の時を経て暴走しているのが今のウクライナ侵攻なのか、と考えさせられました。 文庫化にあたり、ウクライナ侵攻が開始された直後のウクライナ、紛争が続いている状況下でのモスクワへの取材滞在中の様子が追記されています。緊迫するウクライナと、戦時中であることが感じられないモスクワの対照的な様子が、現地で実際に見聞きしていたからこその描写で描かれています。

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2023/09/27

存外にボリュームが在る感じの文庫本であったが、頁を繰る手が停め悪くなり、素早く読了に至った感じである。「一冊の本を読む」という中で、時間や空間を越えて行くというような、少し不思議な体験をすることとなった。 著者は放送記者として長い活動歴を有している。1991年から1994年にモス...

存外にボリュームが在る感じの文庫本であったが、頁を繰る手が停め悪くなり、素早く読了に至った感じである。「一冊の本を読む」という中で、時間や空間を越えて行くというような、少し不思議な体験をすることとなった。 著者は放送記者として長い活動歴を有している。1991年から1994年にモスクワ支局で勤務した経過が在り、その当時の雑記を出版していた経過が在る。それから30年を経て、戦争が始まるかもしれないとウクライナ取材に飛ぶが、移動中に開戦となり、ルーマニアに上陸して陸路でウクライナを取材した経過が在った。更に2022年末から2023年初めにモスクワを訪ねてみたという経過も在った。そのウクライナでのことやモスクワでの雑感を綴ったモノも発表している。 本書はその30年前のモスクワ、最近のウクライナ、最近のモスクワと「30年」の時間の経過が詰め込まれたような内容になっていて興味深い。 1991年と言えば、ソ連という体制が終焉へ向かっていた最中だった。そして「ソ連後」の混迷の何年かが、著者がモスクワで勤務していた日々だった。記者として送り出すコンテンツそのものでもない、支局を管理する立場での事務に纏わる事柄、暮らしの中での様々な出来事や想い、強く記憶に残る見聞等が、書簡形式、日誌形式で綴られていて、それが纏められている部分が本書の7割弱程度を占める。残りが最近のウクライナの件や、2022年末から2023年初めのモスクワ訪問の件だ。 「1990年代前半のロシア」というようなことに関しては、個人的にも少しは馴染みが在る。往時の著名人の名等も交る本書の文章で、余りにも色々な事が思い起こされた。そして綴られている種々の挿話も、「こういう話しは確かに聞いた」という内容が連なる。「30年前」という世界に飛んで行けるような内容だ。 同時に思った。「未だに言われる“ロシア”というモノの“イメージ”」というようなモノは、実は本書に在るような、1990年代前半辺りに言われていた事柄から造られたのかもしれない。「30年」と言えば、例えば「“昭和20年代”に対して“昭和50年代”」という落差が在るのだが、「ロシア」ということになれば最近でも「モノは在るのか?」と言い出す人が見受けられる。奇妙な様子だが、1990年代前半辺りの「モノが無い!?」は何やら強烈だったということなのかもしれない。 本書の場合、「戦争をやっている国の首都なのか?」と最近のモスクワの様子も在る。故に、未だに「モノが在るのか?」は奇異だと判るであろう。所謂“西側”で使われているクレジットカード類は、現在のロシアでは使えない。が、ロシア国内でのデビットカード方式のクレジットカード類は従前どおりに利用可能で、それを使って買い物が普通に行われている様子も本書に描写されていた。その「最近のモスクワ」に関する部分は、「あの頃」という程度に呼びたい1990年代前半辺りを知っているからこそ湧き起る感慨のようなモノも溢れていると思う。 ウクライナの件を綴った箇所は、滞在した街で防空壕に何度か非難する経験もしながら取材している様子が生々しい。そしてルーマニア国境辺りで、国外に脱出している人達を見る様子も、何か迫るモノが在る。こういう生々しい様子は、本書のように色々と伝わって然るべきだとも思う。 本書の末尾の方に、如何いう考え方であろうと、何を主張するのであろうと、それは随意にして構わないと思うが、「殺し合い」は止めて頂きたいというような文が在る。これには賛同したい。様々な歴史的な経過も辿って現在のロシアやウクライナが在る以上、色々な考え方や主張は在って当然だ。だからと言って「殺し合い」が善い筈は無い。それだけは避けて頂きたいと思う。 本当に「30年」を飛び交うような読書経験が出来る。古くから旧ソ連諸国と関わって、昨今の情勢に触れる中、色々な想いを抱く人達が在る。本書はそういう「想い」を吐露する内容でもあると思う。本書は、やや旧い本を再び世に問うに留まらない「今だから…」という企画になっていると思う。広く御薦めしたい。

Posted byブクログ