血も涙もある の商品レビュー
「私の趣味は人の夫を寝盗ることです」 引き込まれる文頭。 3者の視点で書かれており、文の感じは好きでした。
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そもそも。今から〇十年前、絵のない物語の醍醐味を知るきっかけになったのも、こちらの著者でしたから。 いや~。流石っす‼ポンちゃん‼ あれから、年月が経ち。 これまで読んできた彼女の小説に登場した女性たちが綴っていた想いも、多少なりとも経験した上で、今この本を読んで良かったと思えた...
そもそも。今から〇十年前、絵のない物語の醍醐味を知るきっかけになったのも、こちらの著者でしたから。 いや~。流石っす‼ポンちゃん‼ あれから、年月が経ち。 これまで読んできた彼女の小説に登場した女性たちが綴っていた想いも、多少なりとも経験した上で、今この本を読んで良かったと思えた一冊でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
料理研究家の妻とイラストレーターの夫、夫の不倫相手は妻の有能な助手。設定だけ見るとドロドロの三角関係を想像してしまうが、1人の男を取り合う妻と愛人の話では決してない。 桃子は、不倫相手の妻である喜久江を敬愛してやまないし、喜久江も桃子の有能さを認めている。夫とのことを知って心は揺れるが信頼関係は揺るがない。桃子も罪悪感に苛まれる様子はない。 不倫ものでありながら終始軽妙洒脱だし、3人が交互に語る構成は、山田詠美が声色を変えながらしゃべってるように感じるくらい、作者が全面に出ていて、そこも楽しかった。 そして最終的には二人に去られた夫、沢口が実は自分は弱虫なんだと嘆く情けなさ。逆に喜久江には陰ながらずっと彼女を慕っていた男性がいたのだった。 今どきの恋愛小説は、性的マイノリティーとか含めてもはや何でもあり、複雑多様でめまいがしそう。男女の不倫なんて、テーマとしてはありきたりな感があったりもする。でも、この小説は、圧倒的に女性たちが優位であり、勝ち組であるところがとても今っぽいと感じた。
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久々山田詠美を読んで、語りかけるこの文が好きだったな、と懐かしく読了。同じ場面が夫、妻、愛人の視点で展開されて、恋愛の危うさと一筋縄ではいかない男女模様に久々ドキドキさせられました。
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久しぶりに山田詠美を読んだ。 この、3人とも憎めない不倫を描けるのは彼女だけかもしれない。 男と女は鍵と鍵穴の関係と言ってたけど、 その表現が好きだなと思った。
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日々時間に追われているからこそ、日々とは違う物語を欲する。そんな時にうってつけなのが、毒あり笑いあり、そして愛ありの、類い稀な人生への審美眼溢れる山田詠美さんの小説だ。出社の行き帰りで3分の2くらい、寝る前にちょこちょこ読んで読了。 著名な料理研究家(50歳)の助手をしている女...
日々時間に追われているからこそ、日々とは違う物語を欲する。そんな時にうってつけなのが、毒あり笑いあり、そして愛ありの、類い稀な人生への審美眼溢れる山田詠美さんの小説だ。出社の行き帰りで3分の2くらい、寝る前にちょこちょこ読んで読了。 著名な料理研究家(50歳)の助手をしている女性(35歳)の不倫相手は、その料理研究家の夫(40歳)。この3人のそれぞれの視点から、不倫の始まり〜終わりまでが描かれている。あらすじだけだとその辺のゴシップと変わりないんだけれども、これが詠美さんの手にかかると、恋愛の単純さと複雑さ、夫婦のどうしようもなさ、みたいなものがズシリと重くのしかかる。あちらこちらに珠玉の名文が光を放ちながら。3人とも、愛おしかった。
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不倫というドロリとした三角関係のはずなのに、軽快で、なんておもしろい人たちなの。 平和な不倫関係ではあるけれど、それが事を余計にややこしくさせていて、だから更におもしろい。
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不倫の三角形を形作る、愛人・妻・夫それぞれの視点からの日記風な文章で構成される小説。不倫もののドロドロや、どうなるんだろう?というハラハラ感で引っ張るお話ではなく、なんだか哲学的でエッセイっぽい淡々とした雰囲気の物語。
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のっけから仕舞いまで詠美節が炸裂しまくりで、読んでいて大変楽しい小説である。この前に、私が手にした彼女の作品はネグレクトを扱った「つみびと」だったが、それとこれとでは雰囲気が全く異なり、改めてその振り幅の大きさには感心させられるばかりだ。私にとって、軽妙洒脱な文章を書ける人は羨望...
のっけから仕舞いまで詠美節が炸裂しまくりで、読んでいて大変楽しい小説である。この前に、私が手にした彼女の作品はネグレクトを扱った「つみびと」だったが、それとこれとでは雰囲気が全く異なり、改めてその振り幅の大きさには感心させられるばかりだ。私にとって、軽妙洒脱な文章を書ける人は羨望の的でしかないが、なかでも山田詠美の、ヘビー過ぎず、かと言ってライト過ぎもしない、程良いバランスで成り立つ筆致への憧れは強い 高い人気を誇る料理研究家・喜久江、彼女の夫でイラストレーターの太郎、喜久江の助手且つ太郎の愛人・桃子。章ごとに、この三者が入れ替わり、それぞれの視点を一人称で語っていく構成が良い。フィクションにおける不倫ものの場合、兎角浮気をされる側の影が薄くなりがちだが、本作ではその立場にあたる喜久江の気持ちなどをちゃんと記述しているのが特長だ 料理は言うに及ばず、全てを卒なくこなす喜久江は傍から見れば完璧な妻に近いが、生活を共にする太郎からしてみれば、あまりにパーフェクトな故に却って窮屈さを感じた可能性も考えられる。彼が浮気を繰り返したのも、単に尻が軽い以前に、実はそこに根本の理由があったように思う。そんな太郎には桃子が謂わば砂漠のなかのオアシス的な存在なのだろうが、結局のところは都合のいい相手に他ならない タイトルに反して、この話には血や涙の流れる修羅場はない。喜久江も桃子も当然ながら心の葛藤はあるものの、それを表に出して事を荒だてる真似はしないのだ。不倫が明るみになった後、ふたりは仕事をするうえで公私混同を避けた実に冷静な対応を取る。その彼女らに較べると、太郎はいかにも甘やかされた子供みたいで、いずれは桃子も愛想が尽きて彼のそばを離れていく気がする 倫ならぬ恋を描いた小説を評するのに「愉快」という言葉が適切かはわからないが、読み終えて本を閉じるのが惜しいほどに面白い一作だった
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久しぶりに小説を一気読み。 高校生の時から山田詠美大好き。 そして40を超えたからこそ読み応えがあったこの小説。登場人物の3人ともに、わかるよその気持ち、となった。 若い頃はモモのような女性に憧れたけど、今は喜久江のような女性に惹かれる。そしてそんな2人に心底愛されている太郎は...
久しぶりに小説を一気読み。 高校生の時から山田詠美大好き。 そして40を超えたからこそ読み応えがあったこの小説。登場人物の3人ともに、わかるよその気持ち、となった。 若い頃はモモのような女性に憧れたけど、今は喜久江のような女性に惹かれる。そしてそんな2人に心底愛されている太郎はうだつが上がらなくて、小心者で、自分は何者でもないのに喜久江からもモモからも愛されることをなんの疑いもなく享受している図々しい男!でも言い表せないオスとしての魅力があるんだろう、詠美先生の作品の中の登場人物だから。 これを映画化したらだれが太郎を演じてくれるのかなー、と頭をよぎった。 大泉洋がもう少しだらしない体になったようなイメージ。笑 最近自己啓発本と実務書ばかり読んできたけど、こういう洒落たやりとりが楽しめる詠美先生の他の作品も読みたいと思った。
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