マリエ の商品レビュー
アラフォー離婚をしてシングルになった女性の、生身の人間としての幸せについて描いたヒューマンドラマ。 物語は主人公のまりえの視点で描かれる。 ◇ 吐く息の白さに目を奪われながら、まりえは朝の空を見上げた。ここ数日の雨が嘘だったみたいに晴れ渡っている。冬...
アラフォー離婚をしてシングルになった女性の、生身の人間としての幸せについて描いたヒューマンドラマ。 物語は主人公のまりえの視点で描かれる。 ◇ 吐く息の白さに目を奪われながら、まりえは朝の空を見上げた。ここ数日の雨が嘘だったみたいに晴れ渡っている。冬の澄んだ空気の清廉さは、今日という日にぴったりだと思った。 「さて」とつぶやいたまりえは、出かける準備をするためベッドを離れた。 車が行き交う通りの向こうに、猫背で佇む姿を見つけた。森崎だ。まりえは歩道橋の階段を降りながら、2か月ぶりに会う男の顔を見た。 まりえに気づいた森崎も表情を和らげ、「悪いね、休みを取ってもらって」 と詫びる。その殊勝な態度は「ん」としか言わなかった以前とはずいぶん違う。 珍しく気を遣ってくれているのは、夫側から言い出した離婚の届けを出すために、今から2人で区役所に行くからだった。 まりえは40歳目前で離婚を決意した。夫が言い出してから2年を要した。離婚の理由として夫が挙げた「恋愛がしたいから」ということばに納得できなかったからだ。そんな夫への愛情が冷めた今では、もう未練はない。 こうしてまりえの結婚生活は7年半で幕を閉じることになったのである。 気持ちに踏ん切りがついたこともあり、届けを出すときは清々しささえ感じていたし、1人の身軽さは心地よいほどだ。 ワインバーで知り合った年配女性のマキさんは、「あんたもこれから恋愛できるわね」と微笑むが、まりえは今のところそんな気になれない。人生の幸せは人に気を遣いながら得られるものではないと痛感したからだ。 けれど、行きつけのフレグランスショップで「マリエ」という香水に出会ったことで、まりえは……。( 第1章「離婚、新しい香水、白いシーツ」) 全9章。 * * * * * 「マリエ」というフレグランス、なかなか妖しそうです。 マリエ(Malie)は「穏やかな」「静かな」という意味のハワイ語だそうで、破綻した結婚生活の残滓をきれいに拭い去り、心身を癒やしたいまりえにはぴったりです。 けれど、ショップで店主の林が新しい人生の門出にと勧めてきた「マリエ」のほうは、マリッジブーケをイメージして調香されたフレグランスでした。 次なる恋、そして結婚へとステップアップするアイテムとしか思えない香りを、まりえは買ってしまいます。 タイトルが「まりえ」でなく「マリエ」となっているのは、このフレグランスがまりえに大きな影響を及ぼしていくさまを描いているからなのかと思いました。 さらに林は、まりえに由井という若い男を紹介します。そしてその由井、当初は可愛げのある「年下の男の子」らしく振る舞っていたのですが、絶妙にまりえとの距離を縮めていき、やがてまりえと恋人のような関係になっていきます。 この年上の女性が好みだという由井もなかなか気持ち悪い ( 金銭を引き出そうとしないだけマシかも知れませんが…… ) し、林の持つ淫靡に傾いた ( マトモな倫理観とは思えない ) 感覚にも嫌悪感が先立ちます。そしてそれに翻弄されていくまりえが主人公なので、苦手なストーリー展開の作品でした。 ただ、「結婚」や「恋愛」についていろいろ考えさせられる作品でもありました。 恋愛の成就形が「結婚」だと思っていたので、孤独死への恐怖や、家電や建具等の不具合に1人で対処しなければならないことへの不安から「結婚」を望むのは、少し不純な気がします。 特にまりえは、夫との2年にも及ぶ離婚協議に嫌気が差し、独り身になった解放感を感じていたはずです。なのに結婚志向へと傾いていくのです。 ただし、まりえの婚活の姿勢はどこか煮えきりません。結婚相談所の紹介相手に対しても、由井に対してもです。 ( 由井の持つ観念は最後まで理解できませんでした。) ただ由井だけでなく、まりえの友人や先輩たちの結婚観や恋愛観にも首を傾げるようなところが多く感じられたので、それらのベースとなるのは究極の個人主義なのかもと思ったりもしました。 ( 相談所仲間の香織などまさにそんな感じですし、離婚を主導したはずの森崎が未練がましさありありの連絡をまりえに取ってくるのも自分勝手の極致だと思いました。) 登場人物のなかでは、飲み友だちのマキさんの潔さがもっとも好もしかったです。
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自分の意見を程々に持っている主人公。生涯独身とは異なり離婚してからの独身となり、周りの見え方や知らない世界、知らない価値観に触れて自分を更に知っていく。 他人の正解を私が決めてはならないし、私の正解を周りが決めることも違う。新しいことに触れることで、私も自身と向き合い、私の正解を...
自分の意見を程々に持っている主人公。生涯独身とは異なり離婚してからの独身となり、周りの見え方や知らない世界、知らない価値観に触れて自分を更に知っていく。 他人の正解を私が決めてはならないし、私の正解を周りが決めることも違う。新しいことに触れることで、私も自身と向き合い、私の正解を生きたい。
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現代の女性の生き方は多様化していて、結婚して子どもを育てるのだけがあたりまえではない。好きなように生きていいと寄り添ってくれているように感じた。恋愛なんて興味がないように振る舞うマリエも結局、恋愛がやめられない。気づいたらハマってて夢中になってしまっている。彼のいる生活に慣れてしまって、連絡がないことにもやもやしている姿に共感した。辛くなってやめたくても、好きという感情はなかったことにはできないから時が過ぎるのを待つしかない。恋愛感情なんてなくなればいいのにと苦しい恋愛をしている時は思ってしまう。
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‣ 私の幸も不幸も、私が決める。そう、決めた。 ‣ 好きな部屋に住んで、好きなものを買って、好きに生きたことを、孤独死なんていう言葉で回収されてしまいたくない。 ‣ そうなのだ、人は役割に流されて欲しいものや本当の気持ちを忘れていく。 ‣ 「対面を気にするのって怖いからですよね。人の目が、不幸になるのが、怖い。人と違う生き方をして失敗するのが怖い。ひとりぼっちになるのが怖い。そういう怖さを母は私にじわじわ伝えてくるんです。すぐ怖がらせてくる。それがすごく嫌なんですけど、でも、きっと、母も誰かに恐怖を植えつけられてきたんでしょうね」 ‣ 「わたしは、わたしの推しを愛することを誰かに認めてもらいたくなんてない」 ‣ 好きなものが欲しい、と思った。観月台先輩が出会った推しのような存在があれば。そうしたら、こんな些末な痛みなど簡単に薄れてしまうのに。 ‣ 知らない間にできていたポリープ。妊活しなくては宿らない命。私には見ることができない女である内臓。そこに押しつけられる社会の価値観。この体はどこまで私の自由になるのだろう。ほんとうはなにひとつ自由ではないような気もした。 ‣ 画面に並ぶ文字を見て、嬉しさが込みあげる。こういうことの繰り返しが虚しい期待を生んで、いつか自分を苦しくさせることを知っていても、浮きたつ感情を抑えることはできない。だったら、もう身をまかせるしかない。 ‣ 「みんな、いろいろよ。それぞれ自分にできる生き方をするしかないの。わかっているでしょう」 ‣ 話をしようと思った。ひとりになった日からの、いや、もっと前からの、私のささやかな冒険の話をあなたに聞いてもらいたい。 -------- 40歳を前にした女性が抱える生きづらさ。 「私が求めていた幸せってなんだっけ…」 ふと思うことはありませんか⁇ 明確な答えなんてない。 でも、模索し続ける人生があってもいい。 読み終わった後にはそんな風に思える(かもしれない)物語です
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アラフォー女主人公が離婚してから約1年間のおはなし。終始たんたんとした日常の出来事だけど、その間の新たな恋愛、婚活、母親との関係、それにそもそも離婚することになったきっかけを思い出したりする部分がすごくリアルでしみじみした。「繋がらないことで繋がってたい」って言う年上マキさんの乙...
アラフォー女主人公が離婚してから約1年間のおはなし。終始たんたんとした日常の出来事だけど、その間の新たな恋愛、婚活、母親との関係、それにそもそも離婚することになったきっかけを思い出したりする部分がすごくリアルでしみじみした。「繋がらないことで繋がってたい」って言う年上マキさんの乙女心わかるー。あと由井くん好き!
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大好きな千早さんの、1.2を争う大好きな本となった。 ”古い作品に触れたら、感じたことを話すのはいいことです。 友人でも家族でも誰でもいい。 そしたら古いだけの物語にも血が通う” ”彼との食事は鮮やかで生き生きしている” ”私がパートナーに望むのは世界を共有することなのかもしれない。 色や匂いを記憶に刻んで、また季節が巡っても思い出したい。 そして思い出してもらいたい” これが全て。 [ジャガイモのサラダ] ジャガイモを耐熱容器に入れレンジで火を通して潰す。 レモン汁とオリーブオイル、少々のマヨネーズで和える。 粗熱が取れたら、ほぐした鮭やたらこで和える。 [ガーダスープ] トマトと生姜と中華スープの素で簡単にスープを作る。 小麦粉をボールに出し水を加えながら箸で混ぜて ボソボソした塊を作る。 それを沸騰したスープにほぐし入れ、溶き卵を入れ火を止める。 *溶き卵に少し片栗粉を入れるとふわふわになる。
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離婚をして1人になった時少し寂しくなる。その時知り合った由井君, 由井君は本当にまりえを愛し最後までとは思っていないような気がする。何かあると逃げて行く.気が利く人は人よりたくさん見える人,見え過ぎる人は人の嫌いなとこまで見えてしんどい,恋は相手も傷つける。そのことを受け止める...
離婚をして1人になった時少し寂しくなる。その時知り合った由井君, 由井君は本当にまりえを愛し最後までとは思っていないような気がする。何かあると逃げて行く.気が利く人は人よりたくさん見える人,見え過ぎる人は人の嫌いなとこまで見えてしんどい,恋は相手も傷つける。そのことを受け止めるほどの男性は今はいない。ただ自分が傷ついた気持ちを今まで有った事を色々相手に話す。少し恩義目らしく、言わないところが良い所なんだけど、人それぞれだから、。
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同年代辺りの女性。離婚、恋愛、世間体。自分の思うように生きる事は、男を傷つけるかもしれない。 男女の適切な距離とは?引かれたレールのない時代だからこその、女性の生きることの難しさを突きつける小説
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2024.3.30 結婚って好きな人とするものだと思っていたのに、好きってだけでは難しい。だからといって条件が合う人を探して結婚するって、結婚の意義が分からなくなる。 この本は今の年齢だから深く考えられたと思う。
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元旦那の恋愛したいも そうですが 由井君の自分と付き合ってるのに なぜ婚活といこだわりも 男って何にも分かっちゃいないな と思っちゃうわ 時たま こんなにわかり合えないのに 一生一緒にいるなんて どんな罰ゲームかと思うのですが だからこそ 面白いというか ...
元旦那の恋愛したいも そうですが 由井君の自分と付き合ってるのに なぜ婚活といこだわりも 男って何にも分かっちゃいないな と思っちゃうわ 時たま こんなにわかり合えないのに 一生一緒にいるなんて どんな罰ゲームかと思うのですが だからこそ 面白いというか 意味があるんですかねぇ そう思わないとやってらんないわと思いながら読む
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