彼らは世界にはなればなれに立っている の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「これは過去でも未来でもない、今だ。 目の前にあるのにあなたが見ようとしない現実だ。」 設定はファンタジーだけれど、「ファンタジー小説」でもなく「幻想文学」でもなく、現代をあてこすった、まさに「風刺文学」で、読んでいてひたすらに切実で、耳の痛い、寒々と恐ろしい内容だった。太田愛が小説を通じて投げかけてくるのは常に、「考えることを放棄してはいけない」ということ。 「戦争は結果にしか過ぎない。夥しい死は無数の人々の選択の結果、あるいは選択を放棄した結果、または、選択と思わずに同調した結果なのだ。」
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これまでの作者作品とは一変する描きぶり。最後には世の中を咎める感じなのは変わらないが、だとしたら今までの様に舞台を現実に近いものにした方が読みやすいかも。 作者作品は全作背景が細かいため、ファンタジー風にすると外国人作品の様になってしまう気もした。
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最初、現代日本が舞台じゃないのか…と敬遠していたが、読み始めると、さすが太田愛さんだ!ってなりました。オーディブルで先に『未明の砦』を聴いていて、それがちょっと合わなかったので、あまり社会派すぎるのも…と思っていたけど、多分『未明の砦』が合わなかったのは自分の問題に近すぎて、耳を...
最初、現代日本が舞台じゃないのか…と敬遠していたが、読み始めると、さすが太田愛さんだ!ってなりました。オーディブルで先に『未明の砦』を聴いていて、それがちょっと合わなかったので、あまり社会派すぎるのも…と思っていたけど、多分『未明の砦』が合わなかったのは自分の問題に近すぎて、耳を塞ぎたい話題だったからかも知れない。民選が廃止されても、中央府に芸術や文化を統制されても声を上げなかった多くの人々と同じように。 他の方のレビューに「一冊かけて道徳の授業をされた気分」という言葉があったが、確かに説教じみているところはある。しかし過去も未来にも、現在にも通じる話であり、この作品が鳴らす警鐘に耳を傾けるべきであるとも感じた。テーマは『未明の砦』とほぼ同じであるのに、こちらでは素直に受け取れたのは、ファンタジーという体裁をとっているためだと思う。ディストピアが完成するまでの「始まりの町」の歩みを4人の語り手を通して丁寧に描いている。太田愛さんの描かれる人物はどの作品でも魅力的だが、本作でも遺憾無く発揮されている。ストーリーの関係上、嫌な奴が多い本作だが、語り手たちはとても誠実で不器用だ。そんな彼ら彼女らの人生の物語として読み進めるうちに、作者の主張も自然に受け入れることができた。
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ありとあらゆる絶望がここに。 辛すぎて何度も挫折しそうになった。 だけど、目を背けてはいけない気がした。 メッセージ性が強い。 読むべき作品とは思うけど、個人的には好きとは思えなかった。
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巧みな状況設定のもと、一貫した理念のようなものが貫かれた素晴らしい作品だと思う。序盤は比較的静かに進行する物語も、中盤からレンジを広げジワジワとうねりを上げて迫る。架空の国、架空の町の出来事。だがそれは過去の、そしてすぐ先の日本の姿かも。差別が増幅し差別する側される側に二極化する...
巧みな状況設定のもと、一貫した理念のようなものが貫かれた素晴らしい作品だと思う。序盤は比較的静かに進行する物語も、中盤からレンジを広げジワジワとうねりを上げて迫る。架空の国、架空の町の出来事。だがそれは過去の、そしてすぐ先の日本の姿かも。差別が増幅し差別する側される側に二極化する社会。そして戦争へと向かい支配を強める国に対し、諦め抵抗もせず従順になる事の愚かさ、家族や仲間を失う事の哀しさ、戦争の愚かさを真っ直ぐ訴えかけるラストは見事と言うほかはない。こういう本を読む人々が増えれば、少しは社会も変わるかも。
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正直ファンタジーっぽいお話って苦手で、途中で無理かもと思ったけどこれはすごい! 生まれがこの土地でない者を羽虫と呼ぶ そんな羽虫を母にもつ男の子 褐色の肌を持つマリ 人が吸って捨てた葉巻を集めてタバコを作り貧乏人に売る葉巻屋 街の人に詐欺師と思われている魔術師 この4人がそれ...
正直ファンタジーっぽいお話って苦手で、途中で無理かもと思ったけどこれはすごい! 生まれがこの土地でない者を羽虫と呼ぶ そんな羽虫を母にもつ男の子 褐色の肌を持つマリ 人が吸って捨てた葉巻を集めてタバコを作り貧乏人に売る葉巻屋 街の人に詐欺師と思われている魔術師 この4人がそれぞれの目線で語ったとき、なぜか起こっていることが現代のリアルと共通する! 初めてファンタジーっぽいお話でのめり込むほどおもしろいと思えました!これは好き!
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ファンタジーは好きだが魔術師がいる世界観や近代的?な時代背景やら色んなものが不透明のまま話が進んでいき最終的にこれはあなたの国にも当てはまることなんですよ的な示唆に溢れすぎた文章で疲れました 丸々一冊かけて道徳の授業をされた気分です、げんなり
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太田愛の3部作とは全く異なる、若干ファンタジーじみたドラマ。舞台は中世の海外のイメージで、主に身分差による差別や迫害が描かれる。裏には現代への警鐘が流れていて、描写が辛いのでメッセージとしても強い。とは言え相性が悪く、とても読み進め難かった。4部に分かれてそれぞれ語り手も違うが、...
太田愛の3部作とは全く異なる、若干ファンタジーじみたドラマ。舞台は中世の海外のイメージで、主に身分差による差別や迫害が描かれる。裏には現代への警鐘が流れていて、描写が辛いのでメッセージとしても強い。とは言え相性が悪く、とても読み進め難かった。4部に分かれてそれぞれ語り手も違うが、特にカタルシスもなく、まあまあ淡々としている。作品としてはとても意義があるとは思うんだけど……。
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羽虫(移民)達がしいたげられる架空の街でおこったことを、4人の目線で語る。 『レーエンデ物語』の一章かと思うようなお話。 太田愛さんの鑓水シリーズとはガラリと違うものの、 現状を楽な方へ選択していくとこうなっていくのだ、という『天上の葦』でのテーマを彷彿とさせた。 最後は涙が出...
羽虫(移民)達がしいたげられる架空の街でおこったことを、4人の目線で語る。 『レーエンデ物語』の一章かと思うようなお話。 太田愛さんの鑓水シリーズとはガラリと違うものの、 現状を楽な方へ選択していくとこうなっていくのだ、という『天上の葦』でのテーマを彷彿とさせた。 最後は涙が出そうだった。
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太田愛さんの他作品と作風こそ違えど社会への警鐘という根本は一緒だと感じました 舞台は始まりの町、1人の流れ者が町から姿を消すことから物語は始まる なぜいなくなったのか、消えなければいけない理由があったのか 「この町は根が傷んでいるんだ、もうずっと以前から。深い所から腐っている...
太田愛さんの他作品と作風こそ違えど社会への警鐘という根本は一緒だと感じました 舞台は始まりの町、1人の流れ者が町から姿を消すことから物語は始まる なぜいなくなったのか、消えなければいけない理由があったのか 「この町は根が傷んでいるんだ、もうずっと以前から。深い所から腐っているのに、みんな気づかないふりをしてそれを認めようとしない。」
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