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ヘルメス の商品レビュー

3.3

24件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    7

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

    0

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2024/05/23
  • ネタバレ

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序盤。構成の妙。 よくあるパターンとはいえ、ワクドキ製造型の視点じゅんばんこスタイルは大好物です。 最大のナゾ「ルキ」の存在をうまく使った語りの視点変換。「ルキ」を一人称。それ以外を三人称一元視点にすることで不気味さや読めなさが香ばしく沸き立つ。ムフムフしてしまう。 「地上の世界は〈空〉の気まぐれに翻弄され続けた。」 確かに。〈空〉って怖いんだなと再認識。 海の怖さは地震大国の住人として意識せずにはいられないけれど、空、大気で起こる自然現象を論理的かつ平らに列挙されると、至極正当な恐怖だった。 「自然の脅威」なんて十把一絡げで便利な言葉を無感覚に使いすぎて鈍麻してるけど、間違いなく怖い。 ただ、やはり地上で生まれ死んでいく者としては、恩恵と畏れに抱かれるこの世界こそが人間の舞台だと思っちゃうんですよね。 まあ、年中全力で紫外線から逃げているわたしはヘルメスに潜るべきかもしれないですが。 しかしルキの早期退場で、推進力の屋台骨がボッキリ。 なんだろうなー。 設定最高山田宗樹。 安定の読みやすさ山田宗樹。 好きだからハードルが上がってるのも否めない。が。 今回、リアリティとファンタジーのバランスがギクシャクしてるというか。 いや、違うな。決して現実味があるわけじゃないけど、振り切れ感が足りないというか。そんだけ振りかぶったんだから、全力で振り下ろしてくれ。的な。 テーマとしては色々詰め込まれている気もするし、「もしもこんな未来がほんとに来たら」の妄想が捗るのはやっぱりさすがの山田宗樹。 しかし読後のこの余韻というか、あらゆるポイントに対する余地というかは、この話用のものじゃない。モンヤリとした、じゃない感。 なんか悔しい。 でも最後のオチは、映画のエンドロール後に出てくるエピソードの匂いがして嫌いじゃない。

Posted byブクログ

2024/05/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白かった! 2日で一気に読み切った。 特に一章の地下シェルター実験、集団心理、宗教。どうなるのかどきどきしながら、読み進めた。 二章で時間が進んだことに驚いた。少年は新しい神様にでも祭り上げられるのかとはらはらしたが、まさか死んでしまうとは。幸せになってほしかった。でもリアリティはあった。医療技術やAIの進歩、特にマイメンターの設定が細かく、面白かった。考えさせられる部分もあり、よかった。 三章で、あーこう収束するんかーとなった。最後は念で戦うというのが可笑しかったが、双方のトップが信じていないところが、実際そんなもんかも、と思った。

Posted byブクログ

2024/02/07

初めて読む作家。最初は地球に小惑星が衝突するという社会を描く極めて古典的なディストピア又はパニック小説かと思ったが、そんな簡単な内容ではないらしい。よくある衝突騒ぎまでの人間の様々な葛藤を描くのではなく、運よくパニックを回避した後の人間の挙動に注目を当てた小説。しかも、普通なら一...

初めて読む作家。最初は地球に小惑星が衝突するという社会を描く極めて古典的なディストピア又はパニック小説かと思ったが、そんな簡単な内容ではないらしい。よくある衝突騒ぎまでの人間の様々な葛藤を描くのではなく、運よくパニックを回避した後の人間の挙動に注目を当てた小説。しかも、普通なら一旦衝突を回避したら希望に満ちたユートピア世界が永遠に続くと言うのが定番だったが、ここは少し捻ってくる。この様に、ちょっと切り口に工夫を加えるだけで、こんなに面白い小説ができるだなんて、SFの可能性は無限大ですね。 些か初期設定に納得できない所がある。2029年ってもうすぐやって来るが、さすがに小惑星の軌道なんてスパコンで簡単に求められるだろう。ギリギリ直前にならなくても、衝突するかしないかは簡単に判別できると思うのだが。そんなに科学力が弱い設定なのか?そうか、これは今我々が生きている次元の話じゃないんだ。どこかのパラレルワールドの話なんだ。SFだもん、それで、納得した。 そして、地球に寸前の所で衝突しなかったこの小惑星には2029JA1と名付けられたが、これがまた再び地球に衝突するという話が湧き上がって、再び人類を震え上がらせるなんて、ちょっと強引、虫の良すぎる設定じゃないの?そして再衝突の予想日が2099年7月27日ですって?ちょっと安易な設定、ていうかふざけてません?これって、ノストラダムスの大予言で有名な「1999年7の月」の100年後と言う事でしょう!もう忘れかけていた事柄とはいえ、流石にいくら何でも流用しすぎでしょう。確かにインパクトはあるかもしれないが、若者には全く響かないことは間違いなし。そして、2029JA1は最後に誰にも予想できない状況になる。これが人類に対して永遠に関わる訳だ。恐れ入りました。もーー、強引にも程がある。 そう、思い起こせばノストラダムスのことは当時かなり話題になった。1999年7の月が近づけば近づく程、恐怖が日本社会を席巻しメディアもこれを煽った。この私でさえ、五島勉の本を買ってくまなく隅から隅まで読んで勉強した記憶がある。丹波哲郎の映画も見た。小松左京の「日本沈没」の二番煎じ感は拭えなかったが。そして、アンゴルモアの大将軍(大王)はどのような形で現れるのかドキドキしながら6の月を過ごしていたのが懐かしい。やがて7の月になって一日一日がとても長く感じられた。夏休みになったら、一日中テレビにかじりついて、何か大ニュースが発表されないかハラハラしていた。そして遂に、7の月は終焉を迎えた。まさしく、この小説の登場人物になった気分。だが、不思議なことにあまり怒りは湧かなかった。ああ、やっと危機を回避したんだという安堵感の方が絶対的に私を支配していた。そしてその後、私はSF小説に深く身を投じることになる。ああ、真の平和が訪れたのだ。 この小説ではシェルターの功罪にも言及しているような気がした。核シェルターに入れる人はどの様な人なのか、どんな基準で選定されるのか?軍関係者?国会議員とその家族?一流企業の社長家族、財閥の会長家族?持っているお金の順?卑屈な人間はそう思ってしまう。そりゃ、当然でしょう。ところでその核シェルター何年持つの?様子を見るため外に出ようとしたら、海底にいたためハッチが永遠に開かないという笑い話もあった。そう言えば、地上に完全な閉鎖空間を建てて、その中で生活する人々の精神状態を解析する実際のプロジェクトをどこかの国で行っていた記憶がある。その後どうなったのかな。詳細な研究内容は公開されないのだろうか。そうだ!潜水艇の中でどれだけの期間、生活できるのかな。これはデータ得やすいかも。人間は安全が欲しい、安全がいの一番、安全だとひとたび妄信したらそれから逃れられない性質を上手く表現した小説だな。そして、この妄信こそが科学を上回る力を持つ、すなわち宗教は最強であるかもしれないという結論なのかも。だから地球上から戦争は無くならない。 エンディングではアイロニーがスパイス以上に効いていてちょっと痛快だった。イーロンマスクは宇宙船の中で生涯を閉じるべき。これこそ本当の宇宙葬と言える。

Posted byブクログ

2024/01/21

エピローグが良かった けど、本筋は雑というか、アバターなどの背景が細かい割に、肝心の生き残りさんが前半に消滅してしまう驚愕の展開の埋め合わせができてない気がする。謎とオカルトのまま終わってしまった感じかな。

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2023/12/25

最初の方はおもしろかったのだけど、誰に共感したら良いのかも分からず、時間の経過が早いので、置いてきぼりを食らった感。社会がどうなっていたのか、もっと詳細な描写が欲しかった。

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2023/11/28

137ちょっとだけ伊坂幸太郎の週末のフールを思い出したが、こっちの方が冒険小説っぽい。プロットや化学的根拠に基づかないならrもっと思い切ったストーリーでも良かったのに。スケールの大きなお話しのわりに印象がこじんまりした感じになってしまった。

Posted byブクログ

2023/11/18

社会への問題提起が魅力の山田宗樹作品だが、今作は完全なSF作品の様相だった。が、そこは山田宗樹。最後まで面白く読んだ。次作にも期待。

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2023/10/29

この物語の舞台は現在からそれほど遠くない近未来。地球の生物にとっての非常事態を踏まえて、近未来の格差社会と信仰について描かれているようだった。富と力を持つものは人類存続を目的とした実験地底都市を作り、持たないものは莫大な報酬を得るために応募する。これは小惑星衝突の危機がきっかけと...

この物語の舞台は現在からそれほど遠くない近未来。地球の生物にとっての非常事態を踏まえて、近未来の格差社会と信仰について描かれているようだった。富と力を持つものは人類存続を目的とした実験地底都市を作り、持たないものは莫大な報酬を得るために応募する。これは小惑星衝突の危機がきっかけとなっているのだが、その先の未来では格差が明確になり、持つものにはまた別の目的もあるように考えてしまう。ちょっと穿ち過ぎだろうか?だが、エピローグを読むと実験地底都市のその先のことが描かれており、ある人物がここに出てくるのであながち間違いでもないように思う。そして、後半の運動の対立も持つものと持たないものとの格差によるもの。それぞれに何を望むかの信仰心の強さを競うかのような様相になる。現代社会でも何か非常事態が起きたら、ここで描かれるような未来になるのだろうか? 2029年、小惑星が地球に接近することが判明し、衝突すれば地球上の生物の70~90%が死滅すると推測された。計算の結果、衝突不可避とされたが、ギリギリになって軌道が変わり衝突することはなかった。しかし、危機意識は残り、居住可能な実験地底都市を建造する。実験期間は10年。被験者は莫大な報酬を得られることで参加していたが、実験終了直前に地上に戻らないと抵抗する。 実験地底都市に残った被験者たちとは途中から通信が途絶して、状況の分からない期間がある。この期間のことは、後に判明した事実から推測という形で描かれる。それは隔絶されたコミュニティなら起きてもおかしくない出来事だった。希望を持ちたくて残ったと思われるが、閉鎖空間で次第に苛まれていく日々は一体どんなだっただろう?希望と絶望を一身に受けたルキは想像を絶するほど辛かったのではないだろうか?地上で過ごせた僅かな日々が幸せだったことがせめてもの救いか。 物語は2099年まで続くのだが、絶望した人は精神の拠り所を求め、希望を持った人は社会的な安定を求め、その対立は格差社会によるものなのだろう。最後は少し興ざめするように感じる部分もあったが、それは個人的に精神的にも社会的にも拠り所を強く求めたことがないということだろうか?これは諦めなのか?

Posted byブクログ

2023/10/26
  • ネタバレ

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小惑星が落ちてくるという未曾有の危機、2029年はなんとか回避したが、地下に巨大なシェルターを建設することになる。壮大なスケールで始まった物語は地下の生活にはあまり触れず第2章で唐突にただ一人の生存者ルキに焦点が移る。ただルキの父親瀬良の死体から閉鎖社会の恐ろしさが垣間見える。そしてルキ!あっという間死んじゃって今度は第3章でまた小惑星衝突の危機。なかなか忙しい展開で宗教の対立のような雰囲気になり、孫悟空の元気玉ならぬ祈りの力のパワーの真髄を見た。 マイメンターAIとの会話が面白かった。

Posted byブクログ

2023/10/21

小惑星2029JA1に振り回される人間たちの話。 社会に絶望している人達は小惑星の落下を待ち望み、生きていたい人達は当然、落下を食い止めたいと願う。 両者の決着は、念を送って小惑星を引き寄せる(もしくは遠ざける)と言ったかなり非科学的な方法で行われるようになる。(私だったらそん...

小惑星2029JA1に振り回される人間たちの話。 社会に絶望している人達は小惑星の落下を待ち望み、生きていたい人達は当然、落下を食い止めたいと願う。 両者の決着は、念を送って小惑星を引き寄せる(もしくは遠ざける)と言ったかなり非科学的な方法で行われるようになる。(私だったらそんな運動には参加しないだろう。)最後は念合戦だからね。何だそりゃと思った。 ヘルメス(地底都市)から現れた少年を"世界の救世主"等と崇めようとする人類の姿は滑稽だが、必死に生きようとする姿は決して馬鹿にはできない。 実験的地底都市へ莫大な報酬目当てで参加する人々、心底2029JA1が怖い人など様々な思惑が渦巻いていたヘルメスが、日の目を見なかったことは残念に思う。やっぱり人間には日光が必要なんだよね…精神的にも肉体的にも。 マイメンターというホログラム(AIみたいなもの)が社会に浸透しているという設定が気に入った。自分の欲しい言葉を良いタイミングでくれるメンター、今は不要だが、将来必要になるかもしれない。

Posted byブクログ