新古事記 の商品レビュー
神々とか、人為とか、自然とか、科学とか、いろいろ考えさせられる。なぜ原爆は開発され、使用されたのか。そのアポリアを、開発の現場にいる核物理学者の奥さまや愛犬たちの日常から透かし見る。日系の血筋を意識する主人公アデラや先住民のアーイダから見る世界観も心惹かれる。
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古典かと思ったら予想外の話。 NHK朝の連ドラ「虎に翼」で星航一が勤めていた「総力戦研究所」という場所とエピソードが何気なく手に取った「御手洗潔の追憶」内の「天使の名前」での御手洗の父とかぶり、 「新古事記」で作られた原爆が、「天使の名前」で落とされた側の結末を読むという。 ...
古典かと思ったら予想外の話。 NHK朝の連ドラ「虎に翼」で星航一が勤めていた「総力戦研究所」という場所とエピソードが何気なく手に取った「御手洗潔の追憶」内の「天使の名前」での御手洗の父とかぶり、 「新古事記」で作られた原爆が、「天使の名前」で落とされた側の結末を読むという。 3つの側面からこの夏教わったことは、なんらかの意味があるのだと思う私にとって。
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翻訳本かと思った。 文体も、原爆に対する解釈も。 戦争を知らない若い人の作品かとも思った。 仕事柄、被爆したおばあさんからお話を聞かせてもらっているので、なんだかおとぎ話を読んでるような、やりきれない気持ちになりました。
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ロス・アラモスはアメリカの原爆開発の舞台となった地である。マンハッタン計画に基づき、高台のこの地に研究所が築かれた。それだけでなく、ここには科学者らの家族も住むこととなり、街が作られた。 研究の性質からして、機密は守られなけらばならず、人の出入りも厳しく管理された。 一風変わった...
ロス・アラモスはアメリカの原爆開発の舞台となった地である。マンハッタン計画に基づき、高台のこの地に研究所が築かれた。それだけでなく、ここには科学者らの家族も住むこととなり、街が作られた。 研究の性質からして、機密は守られなけらばならず、人の出入りも厳しく管理された。 一風変わった、閉ざされたこの街で、科学者たちは研究に励みつつ、一方で家庭生活も楽しんだ。若い研究者らが多かったから、彼らの多くは子供をもうけた。 夫たちが作ろうとしているものが何なのか、妻たちは詳しくは知らなかった。それよりも日々の生活を回すだけで精いっぱいだった。 子供が生まれ、犬が駆け回り、普通の営みが行われている中心で、行われているのは大規模殺戮兵器の開発だったのだが。 主人公のアデラは、恋人・ベンジャミンとともに、カリフォルニアからロス・アラモスの「Y地」へやってくる。アデラは見た目は白人だが日本人の血を引いており、真珠湾以後、日系人への風当たりの強さをひしひしと感じているところだった。ベンジャミンについていくことはよいアイディアに思われたのだ。 Y地は台地の上にあり、大きな町からは離れた、奇妙に閉じられた場所だった。 アデラはベンジャミンとまだ結婚していなかったため、Y地の中へは入れず、塀にへばりつくように建っている動物病院の看護助手として働くことになった。 アデラがお守りのように持っているのは、おばあさんからもらったノート。そこにはおじいさんの国の文字やお話が綴られていた。実のところ、アデラはおじいさんの顔も知らず、おじいさんが米国に帰化した経緯も真偽が判然としないものだった。だが、おばあさんが綴った日本の漢字や神話は不思議にアデラの心を捉えた。 Y地にはユダヤ系研究者家族も多く、信心深い妻たちの中にはシナゴーグが必要と考える者もいた。実際、それは作られたのだが、神職を引き受ける男性はおらず、妻たちの1人が仮のラビとなった。 Y地につく郵便物はすべて、「私書箱1663号」に集められる。麓の人々はY地で何が行われているのかも知らず、膨大な郵便物が届く私書箱を奇異に思っている。 犬も人も次々に妊娠し、新しい命が生まれた。恋人たちは一組、また一組と結婚し、ベンとアデラも結婚することになった。 ユダヤ教徒が読む旧約聖書では、神が最初に現れた。おばあさんが残したノートの中の日本の神様は天地とともに現れた。 できたての国は 土と思えないほど柔らかで スープ皿に浮かんだ 鹿肉の脂身のように 海のクラゲのように ゆらゆら漂っていた プエブロ族の娘がY地に働きに来ていた。彼らの部族には蓄財観念がなく、畑を耕して働いては、日々、自然にお祈りしていた。 アデラが曇りのない目で見つめるY地の日々。 一方で、研究は着々と進んでいた。 本書のインスピレーションの元になっているのは、「ロスアラモスからヒロシマへ」という1冊の本である。科学者の夫とともにロスアラモスで2年間暮らした女性の手記だ。女性は戦後、広島を訪れて、アメリカ人女性として、「人間の人間に対する非道」を忘れまいと誓ったという。 この女性はユダヤ系であったが、著者はここに日系三世の女性の視点を入れ込んだ。 原爆開発国であり、同時に移民の国でもあるアメリカ。 神にも匹敵しうるような技術を手に入れ、そしてそれを行使するとはどういうことだろうか。 物語の記述の大半は、穏やかな「日常」なのだが、その背後にある結果の大きさに言葉を失う。 物語の最終章は「新しい世界は神じゃなく、人の子がつくるのだ」と題される。 ニューメキシコの大地の草の海を、人の子と犬が駆け回る。大地を焼き尽すかもしれない業火を手に入れた今、「新しい世界は神じゃなくて人の子がつくる」。 神なき世界で行われる人間の人間に対する非道を、本当に人は背負いきれるのだろうか。
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特殊な空間の物語 戦争中でも一見平和な日常 時々不審な流れがあっても 過ぎれば忘却... 深く考えるのを避けて... なんとも不気味な感じ 心にざらりとした感触を残す 庭文庫にて購入
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淡々と進む不思議な魅力の小説。原爆開発の機密都市での研究者の妻たちのドラマを描く。 「ロスアラモスからヒロシマへ」という一科学者の妻の手記が原案の小説。ニューメキシコの荒涼とした土地に隔離された研究者とその家族だけが暮らす町での出来事が淡々と描かれる。 題名に古事記を入れたと...
淡々と進む不思議な魅力の小説。原爆開発の機密都市での研究者の妻たちのドラマを描く。 「ロスアラモスからヒロシマへ」という一科学者の妻の手記が原案の小説。ニューメキシコの荒涼とした土地に隔離された研究者とその家族だけが暮らす町での出来事が淡々と描かれる。 題名に古事記を入れたところは、天地創造と圧倒的に破壊力を手にした人類との対比か。 「われは死なり世界の破壊者となれり」オッペンハイマー博士が語ったヒンズー聖典の一行が印象に残る。
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今年の目標は読んだ本はすぐに評価する!これをしないと読み終えた感動や憤りが忘れられて文章化できなくなるw さて 古事記を読んだことがない。というか、昔の表記が苦手でこの本は現代語訳化されたほんとばかしに勘違いして読んだのである。で、なんだこれは?オッペンハイマーが出てきた瞬間から...
今年の目標は読んだ本はすぐに評価する!これをしないと読み終えた感動や憤りが忘れられて文章化できなくなるw さて 古事記を読んだことがない。というか、昔の表記が苦手でこの本は現代語訳化されたほんとばかしに勘違いして読んだのである。で、なんだこれは?オッペンハイマーが出てきた瞬間から全然思っていたのと違うとばかりに頭が拒絶反応を起こし、冒頭はまったく内容が頭に入らず後悔しかなかったが、読み進めていくうちに(決して途中放棄しないのがモットー)、Y地で原子力爆弾の開発チームが活動しており、その研究者の恋人が診療所に預けられる犬の世話をする隠れみの日系三世の女性の物語という筋書きに納得し、もう”古事記”というつながりは捨てて、その女性の物語として読むとまぁ、悪くない(笑 シリアスなんだか日和見なんだかよくわからない雰囲気の中、研究者の恋人が開発が完成に向かうにつれて塞ぎ込み、Y地全体が異様なムードに圧され、そして実弾実験での脅威、日本への投下と戦争小説とはまた違った視点での物語はそれなりに読めた、が、現実味もなく切迫した感もなく、気の抜けたサイダーを飲み続けたような読書感で終わった
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知っている史実と全然知らなかった史実から出来た奥深い物語でした。歴史小説とは違う語り方で物理、哲学、宗教、国の成り立ち、人種…そしてあの原子力爆弾が描かれている。良い時間が過ごせたと思う。
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あるアメリカ人女性(フィリス・K・フィッシャー)の『ロスアラモスからヒロシマへ 米原爆開発科学者の妻の手記』を村田喜代子氏が小説にされた作品。 読み始めから「文明の行く末」に嫌な気持ちの不安を感じながら進みます。 語り手若い女性の語り口が明るい(作者の手腕)のがちょっと救いだが...
あるアメリカ人女性(フィリス・K・フィッシャー)の『ロスアラモスからヒロシマへ 米原爆開発科学者の妻の手記』を村田喜代子氏が小説にされた作品。 読み始めから「文明の行く末」に嫌な気持ちの不安を感じながら進みます。 語り手若い女性の語り口が明るい(作者の手腕)のがちょっと救いだが、日系であることを秘めていることにされたのが、またぞろ不安を増しながらの読書...。 場所はニューメキシコ、アルバカーキやサンタ・フェ近郊のロス・アラモス。ちゃんと地図にありました。それがまた恐ろしい。いえ、もう起こったことです。 科学者の若い妻も知らされていなかったでしょうが、わたしたち幼児だった日本人も知らなかった事実。 しかし、しかし、小学生のころ、日本人漁業者が被ばくしてしまう、ビキニ環礁での水爆実験はものすごく印象が強い。冷戦...その後も実験を続けていって...。 そしていまは核弾頭を多く持っている国が連なっている。 ロシア、アメリカ、フランス、イギリス、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮......。
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予備知識なしで手に取り、読み始めて驚いた。 「古事記」の現代版だと思っていたからだ。 翻訳小説のような文体からか、少し引いた感覚で物語を捉えてしまった。 しかし、ひとりの女性の隔離された暮らしの記録、と読むとその淡々とした日常の裏に、恐ろしいことが計画実行されている現実があり...
予備知識なしで手に取り、読み始めて驚いた。 「古事記」の現代版だと思っていたからだ。 翻訳小説のような文体からか、少し引いた感覚で物語を捉えてしまった。 しかし、ひとりの女性の隔離された暮らしの記録、と読むとその淡々とした日常の裏に、恐ろしいことが計画実行されている現実があり、知らされない怖さを教えてくれる。 その、よくわからない、ぼんやりした違和感を覚えつつ、淡々と暮らしていくことは、現代の私たちにも繋がっているのかもしれない。
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