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九相図をよむ 増補カラー版 の商品レビュー

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2025/11/24
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以下の箇所を中心に読んだ。 序 九相図の一五〇〇年 第一章 九相図とは何か 第二章 九相図の源流──西域・中国から古代日本まで 第三章 中世文学と死体 第四章 「九相図巻」をよむ──中世九相図の傑作(一) 第六章 「九相詩絵巻」をよむ──漢詩・和歌と九相図の融合 第七章 江戸の出開帳と九相図 第八章 現代によみがえる九相図 おわりに 文庫版あとがき 大河ドラマ「べらぼう」で、「愛した女性が亡くなり腐っていく様を目にしながらも、彼女の“美しい姿”を描き続ける喜多川歌麿」というシーンがあり、あまりにもつらくて最高だったのだが、そのシーンで九相図を思い出したので積読棚から引っ張り出してきた。 (歌麿がしていたことは九相図とは真逆だが) 現在では『呪術廻戦』で九相図を知った人も多いかもしれない。 私が初めて知ったのは、河鍋暁斎の展覧会だった。 幽霊・髑髏という流れで見て、かつ、暁斎が九歳の頃に川で拾った生首を写生したというエピソードを知っていたため、最初は暁斎の趣味かと思ってしまった。 後に仏教絵画だと知り、強く印象に残ったのを覚えている。 これまで私は、九相図とは男性出家者のための「性的煩悩(=女性)を退ける修行」に使われるものだと思っていた。 しかし九相図はそれだけではなく、近世初頭では女性が主体的に仏教へ関与する手段としても使われていたことが、この本を読んで分かった。 特に興味深かったのは、九相図が日本に伝わってきた頃のことだ。 九相図の各相を詠んだ詩「九相観詩」が日本に伝わったとき、出家者の悟りのための厳しい修行である「不浄観」から、在家者の共感を得やすい「無常」へと文脈が発展していた。 伝わったそのときから、文学的側面も色濃く結びついていたようだ。 そしてその後、朽ちていく死体を四季の移り変わりと重ねて詠んだ「九想詩」も生まれた。 この「無常観と四季」という組み合わせは、当時の日本人にウケるだろうな……というのが第一に感じたことだった。 九相の変化を四季の移り変わりになぞらえるという趣向は和歌にも取り入れられ、中・近世日本で制作された多くの九相図にも受け継がれているそうだ。 今回嬉しかったのは、河鍋暁斎の九相図について詳しく知ることができた点だ。 河鍋暁斎は私の推し絵師の一人であり、私が初めて九相図と出会ったきっかけでもある。 そんな彼の絵をカラーで見ることができ、また詳細な分析を読むことができて嬉しかった。 また河鍋暁斎の次に挙げられていた山口晃の「九相圖」は、私の中の九相図のイメージを大きく変えるものだった。 描かれているのは間違いなく九相図なのだが、死にゆく馬の胴体がバイクになっている。 やまと絵のような風景の中にバイクと融合した馬が存在している、そのチグハグさが面白かった。 一度生で見てみたい作品だ。 九相図は仏教絵画であるが、この本では文学的側面や説話にも目を向けており、たいへん面白く読むことができた。

Posted byブクログ

2025/10/15

九相観、九相詩、九相図、九想図 山口晃さんのバイクの九相図を見てからずっと好きな題材なので、とても面白かった。前書(九相図資料集成)とセットで家に置いておきたい1冊。

Posted byブクログ

2025/08/12
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仏教における過去の日本の女性たちの立場が九相図で朽ちていくのがほぼ女性であることと結びついているといったあたりは、なるほどと思った。絵画としての九相図が持つ意味は、時代と共に日本的価値観や文化的な発展と融合しつつ少しづつ変わりながら、長く繋がれていったのが九相図なんだなと。

Posted byブクログ

2024/11/03

最初に見たときは、なんだそれ、と思った「九相図」 九枚の絵を通して、美しい女性の身体が徐々に朽ちていく様子を見て、諸行無常を感じろ、だなんて、馬鹿にしているし、 異性愛者が多い男性の修行者に、女性に対する煩悩を捨てさせるためには、女性の死肉が腐り、溶けだし、内臓をさらし、獣に...

最初に見たときは、なんだそれ、と思った「九相図」 九枚の絵を通して、美しい女性の身体が徐々に朽ちていく様子を見て、諸行無常を感じろ、だなんて、馬鹿にしているし、 異性愛者が多い男性の修行者に、女性に対する煩悩を捨てさせるためには、女性の死肉が腐り、溶けだし、内臓をさらし、獣についばまれて、骨と皮ばかりになっていく様子を突き付けて、女性への幻想を捨てさせる必要があった、だなんて、ますます酷すぎる。 ほんとうに? そんなふうに使われていたのか? 女性への猟奇的な加害欲を満たすために使用されていた可能性はないのか?という疑問もある。 挙句の果てに、女性の信者獲得のため、女性の教化のために、「絵解き」(紙芝居)として活用されていただんて、そんな……女性を脅かすような真似をして信者を集めていただなんて、今に至るまで、何にも変わってないじゃないかと。ショックだったんですが。 「不浄には浄を、罪深き凡夫には悟りを、自己否定を余儀なくされる女性たちには誇りを獲得させる造形として、九相図は存在する」 切れ味抜群の言葉。

Posted byブクログ

2024/06/03

九相図は、東洋に伝わる、死体が腐敗し白骨となるまでを九段階に分けて描く絵画である。 仏教の修行の一環で、死体の変化を観想することで、自他の肉体への執着を捨てることを目的とする。古くは6世紀頃のもので、腐乱死体や白骨を見て瞑想する僧の姿が描かれた壁画があるというから、実に1500年...

九相図は、東洋に伝わる、死体が腐敗し白骨となるまでを九段階に分けて描く絵画である。 仏教の修行の一環で、死体の変化を観想することで、自他の肉体への執着を捨てることを目的とする。古くは6世紀頃のもので、腐乱死体や白骨を見て瞑想する僧の姿が描かれた壁画があるというから、実に1500年ほど前から、こうした修行が存在したと見られる。 盛唐期には9場面で構成される九相図の形が成立。その後、中国よりもむしろ日本に根付き、さまざまな展開を見せることになる。その伝統は現代までも続いており、形を変えながら、九相図のメメント・モリ(死を想え)は受け継がれている。 本書では鎌倉時代から現代まで、おおむね年代順に、10の作品に関して解説する。 13世紀後半の「六道絵」、14世紀から17世紀にかけての「九相図巻」「九相詩絵巻」「九相詩」「小町曼荼羅」6作品、新しいところでは、19世紀後半の河鍋暁斎の「卒塔婆小町下絵画巻」、そして2000年代の山口晃「九相圖」、松井冬子「浄相の持続」と続く。 九相図の多くは、美しい女性が徐々に朽ちていくさまを描く。なぜそうであるかは、そもそもの成立が、僧侶の修行として、欲望を払うためであるとすれば、納得が行きやすい。男性である僧侶が欲望を覚えるのは、多くの場合、美しい女性であるからだ。 色欲(色や形あるものへの執着)・形容欲(優れた容姿に対する欲望)・人相欲(優れた面貌に対する欲望)等を除くために推奨されたのが不浄観である。不浄なもの、例えば腐乱死体などを見れば、美しい姿はかりそめのものであることがわかり、自然に欲望を抑えることができるというものだ。 若干わかったようなわからないような理屈なのだが、続いてきたところを見ると、修行として評価されるものだったのだろう。 九相図は文字通り、朽ちる過程を9つの段階にわけ、それぞれに名称がついている。経典・経論により若干の相違があるのだが、日本の九相図に大きな影響を与えた『摩訶止観』(仏教の解説書。天台三大部の1つ)では、脹相(ちょうそう)、壊相(かいそう)、血塗相(けちずそう)、膿爛相(のうらんそう)、青瘀相(しょうおそう)、噉相(たんそう)、散相(さんそう)、骨相(こつそう)、焼相(しょうそう)としている。 それぞれの相に合った図が描かれるわけだが、興味深いのは、現実の朽ちた様そのものを描くというよりも、経典や経論に書かれた説明に沿っている点である。絵師たちが屍を見ることはもちろん、あったのだろうが、それらを写実的に写すというよりは、参考にしつつ、経の内容を絵画化していたことになる。 九相図では亡くなった直後の絵(新死相)で、肩から胸・腕、足を見せるものがある。高貴な女人が死の床で肌を見せるということは実際にはなかったはずだが、その後の腐乱していく肉体との対比を見せるもので、これもある種の虚構である。 本書は文庫サイズだが、図版もカラーでかなり多く掲載されている。載っていないものでも、インターネット上で公開されている作品もあり、検索して参照することもできる。 つらつら眺めながら、この図を見て修行する僧はもちろんだが、画家・絵師の側も死や腐敗についてさまざま思いを巡らしただろうと想像する。あるいは地獄絵などと同様に、庶民にも絵解きなどがなされたものだろうか。 現代では、(平和な地域であれば)遺体を見る経験もさほど多くはなく、まして野ざらしの遺体が朽ちていく過程を見ることはほぼないわけだが。 人はいずれ死ぬ。そして肉体は朽ちる。 その当たり前のことを改めて考えたりする。

Posted byブクログ

2023/10/09

何度も手にとってようやく、購入しました。 東洋には、死体が腐乱して白骨となるまでを9つの相で表す、九相図という絵画がある。 これは、死体の変化と僧侶の修行の段階を表した九相感と重ね合わせたとある。僧は人が変わりゆくのを見て、修業に励むのである シルクロードの石窟にも書かれた九相図...

何度も手にとってようやく、購入しました。 東洋には、死体が腐乱して白骨となるまでを9つの相で表す、九相図という絵画がある。 これは、死体の変化と僧侶の修行の段階を表した九相感と重ね合わせたとある。僧は人が変わりゆくのを見て、修業に励むのである シルクロードの石窟にも書かれた九相図は、日本に伝来して、鎌倉仏教と結びつき、凄惨な主題であるにもかかわら、その絵は圧倒的な美しさをたたえてた。 九州国立博物館に伝えられた、九相図に対して、詞書(ことばがき)も、外題(げだい)もなく、箱書きのみから、その手がかりを探ることからはじまる。 先ず絵巻には、出所となるものがなにも書いていない。過去に修繕された形跡があり、そのときに、後世に伝えることをはばかるものを省いたのかもしれない ふたの表に、「九想図 土佐光信筆 西塔寂光院什物」 土佐光信 1462~1520活動期 室町時代後期に活躍したやまと絵師である 旧所蔵先 西塔寂光院 は、比叡山延暦寺の西塔、延暦寺第二世座主の円澄が開いた寺院である すなわち、寂光院の宝物の1つとして後世に伝わったものと推定をされている。 九相とは次の状況を言う 脹相(ちょうそう) 顔色が黒ずみ、身体は硬直して手足が花を散らしたようにあちこちを向く 壊相(えそう) 皮や肉が破れ壊れ身体の色が変わり、識別不可能となる 血塗相(けちずそう) 血が流れだし、あちこちに飛び散り溜まり、ところどころをまだらに染め、悪臭を放つ 膿爛相(のうらんそう)肉が流れて、火をつけたろうそくのようになる。 青瘀相(しょうおそう) 死体が腐敗して黒ずむ、痩せて皮がたるんでいる 噉相(たんそう) 動物に食われて、肉片が、引き裂かれ、ちりぢりになる 散相(さんそう) 死体の部位が散乱する。 骨相(こつそう)膿やあぶらがついた骨と白骨とに分かれる。散乱している 焼相(しょうそう) 魔訶止観には記載がない 天台僧源信が残した、「往生要集」にある、人道不浄相が「魔訶止観」と「大般若波羅蜜多経」を引用に後世に多大なる影響の残した 古事記の伊邪那岐(いざなぎ)命と伊邪那美(いざなみ)命の黄泉の国の話、見てはいけないといわれてみていたら、蛆がたかり忌まわしい姿の元妻のすがたに、急いで逃げ帰り、黄泉の国との入口を大きな岩でふさいでしまう。 嵯峨天皇皇后で、仁明天皇母の、檀林皇后が、世人の愛欲を戒めるために自らの遺骸を野に捨てるように遺言した話 小野小町が、驕慢の果てに零落し、死後にはその遺骸を葬る者もなく、野ざらしのしゃれこうべになったという伝説  花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に  思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを なくなった妻の死体を捨てないで、横に寝ていたら、変色していて、そのことがきっかけで発心(出家すること)した、高僧の話などが紹介されている 全国には、10以上も九相図はのこっており、2004年に松井冬子が「浄相の持続」という絵画を表し、平野美術館へ委託している。 人間は時代が変わっても、決してかわってはいない。 身近な死体と、情念、そして仏教とをつなぐのが本書と理解しました。 目次  序 九相図の一五〇〇年 第一章 九相図とは何か 第二章 九相図の源流──西域・中国から古代日本まで 第三章 中世文学と死体 第四章 「九相図巻」をよむ──中世九相図の傑作(一) 第五章 国宝「六道絵」の「人道不浄相図」をよむ──中世九相図の傑作(二) 第六章 「九相詩絵巻」をよむ──漢詩・和歌と九相図の融合 第七章 江戸の出開帳と九相図 第八章 現代によみがえる九相図  おわりに 補遺 朽ちてゆく死体の図像誌──戦の時代の九相図  文庫版あとがき  図版協力  参考文献一覧 ISBN:9784044007485 出版社:KADOKAWA 判型:文庫 ページ数:400ページ 定価:1740円(本体) 発売日:2023年07月25日初版発行

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