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囚われの楽園 脱北医師が見たありのままの北朝鮮 の商品レビュー

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2023/07/31

2023年出版。 著者は下関に住んでいた在日朝鮮人で、誠実に働く両親のもと、裕福で幸福な生活を日本で享受していた。とはいえ、就職の面において差別が存在した日本にいるよりも、いったん北朝鮮に「帰国」し、統一した後に南の故郷に帰るという決定を母がしたことにより、家族で北朝鮮に帰ること...

2023年出版。 著者は下関に住んでいた在日朝鮮人で、誠実に働く両親のもと、裕福で幸福な生活を日本で享受していた。とはいえ、就職の面において差別が存在した日本にいるよりも、いったん北朝鮮に「帰国」し、統一した後に南の故郷に帰るという決定を母がしたことにより、家族で北朝鮮に帰ることになる。 日本では正しく生きることを厳しく躾けられた主人公だが、北朝鮮では生き残るためになんでもしなければならない。帰国者が受ける厳しい差別と監視の中でも主人公はかなり恵まれた生活をしているのだが、日本を忘れたことはなかったという。 著者の叔父は、本当は韓国の警察であり北朝鮮のパルチザンによって殺されている。帰国した際には、それを正反対であったかのように申告して成分の「洗濯」をした彼の家では「被殺者家族」として、帰国者としては恵まれた生活をする。もともと帰国者は、北朝鮮での出世においてもっとも重要視される軍隊への入隊が許可されていなかった。しかし、在日出身の高ヨンヒが金正日に見そめられた時期でもあり、主人公は軍隊への入隊が叶い、7年間の服務ののちには医者となって働く。医者として「苦難の行軍」の時期を過ごした著者の証言は興味深い。   在日朝鮮人の「帰国」関連本を読むと、北朝鮮に入港した瞬間から絶望に襲われつつも、自分の感情を抑えつけて北朝鮮での生存方法に適応していく過程が生々しく心が痛い。もちろん、それに適応できず、北朝鮮人の妻との夫婦喧嘩の過程で妻に「密告」され、政治犯収容所に連行されていくような人もいる。そんな生活を数十年も送った後でも、脱北に成功した人々はまだよい。いまも、かつては知っていた自由に恋焦がれながら北朝鮮の炭鉱などで苦しんでいる人がいると思うと、拉致被害者、日本人妻の問題だけでなく、日本が北朝鮮に送り込んでしまった帰国者らへの救済についても考えていくべきだと強く思う。

Posted byブクログ