アメリカン・マスターピース 準古典篇 の商品レビュー
『翻訳文学試食会』からのスピンオフで、柴田訳の世界を堪能するために、古典編に続き読了。 フォークナー『納屋を焼く』は、物語の始まりが唐突過ぎて世界に入るのが少し難しかった。他方、『ローマ熱』は、中盤から後半にかけて、女性同士の過去の因縁があまりに生々しくて、読み応え十分。 ウェル...
『翻訳文学試食会』からのスピンオフで、柴田訳の世界を堪能するために、古典編に続き読了。 フォークナー『納屋を焼く』は、物語の始まりが唐突過ぎて世界に入るのが少し難しかった。他方、『ローマ熱』は、中盤から後半にかけて、女性同士の過去の因縁があまりに生々しくて、読み応え十分。 ウェルティ『広場でのパーティ』、オルグレン『分署長は悪い夢を見る』は、黒人を人とも思っていない当時の(当時の、であってほしい)、人種差別の”当たり前感”に、目を背けそうになってしまった。
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フォークナーの「納屋を焼く」を読みたかっただけなのだが、柴田元幸が選りすぐって翻訳しただけあってどれもとてもおもしろかった。イーディス・ウォートンの「ローマ熱」とか、笑ったけどぞぞっともする。
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アメリカにおける第二次大戦の前から戦中くらいの時期の名作といえる作品の収められた翻訳集。 名前くらいは聞いた事がある作家が並んでいて、実際には読んだこともなかった人がほとんどだったので、読めてよかったと思う。 個人的に特に面白かったのは『ローマ熱』で、再会した幼なじみ女性2人...
アメリカにおける第二次大戦の前から戦中くらいの時期の名作といえる作品の収められた翻訳集。 名前くらいは聞いた事がある作家が並んでいて、実際には読んだこともなかった人がほとんどだったので、読めてよかったと思う。 個人的に特に面白かったのは『ローマ熱』で、再会した幼なじみ女性2人が1人の男性をめぐって、それまで相手に知らせていなかった過去を打ち明けるというもの。 2人の心情やひりついた空気感が伝わってくるようで、名作には色あせないものがあると感じた。 また、最後の方に収められていた作品には、『広場でのパーティ』といったアメリカとは切り離せない人種差別に関わる内容を扱った作品も収められており、 これらが本当にすべて過去のものとなることを祈らずにおれない。
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日本において20世紀以降のアメリカ文学を紹介する一流の学者であり翻訳家である著者が、古典・準古典・現代という3つの時間軸で、それぞれの短編傑作を新訳して紹介するというコンセプトの1冊。 準古典にあたる本作では、20世紀前半が概ねターゲットの時代となる。有名どころではヘミングウェ...
日本において20世紀以降のアメリカ文学を紹介する一流の学者であり翻訳家である著者が、古典・準古典・現代という3つの時間軸で、それぞれの短編傑作を新訳して紹介するというコンセプトの1冊。 準古典にあたる本作では、20世紀前半が概ねターゲットの時代となる。有名どころではヘミングウェイやフォークナー、フィッツジェラルドなどが収められており、彼らも含む12の短編で構成されている。 柴田氏の翻訳ということもあり、作品の世界を日本語に置き換えるために翻訳の文体も見事に異なるさまは、さすが熟練の技を強く感じる。 例えばゾラ・ニール・ハーストンの「ハーレムの書」は旧約聖書の文体で原文が執筆されており、翻訳も見事に歴史的かなづかいも残るような日本語の旧約聖書の文体で記されており、かつ現代的なワーディングもミックスされるなど、まさに高い技量を持つ翻訳のスペシャリストとしての技を堪能できる。 時代背景的に一部の作品では黒人差別が必然的にテーマになるわけで、特にフォークナーの「納屋を焼く」、そして黒人を広場で火炙りにする中で飛行機の墜落スレスレのインシデントが発生して群衆がパニックになる様子を描くラルフ・エリスンの「広場でのパーティ」あたりは、そのテーマの重さがまたずしりと来る。 また、ラストに収められたネルソン・オルグレンの「分署長は悪い夢を見る」は、次々と送られてくる犯罪者たちが文書長に語る支離滅裂な自己弁護・言い訳の数々がブラックな笑いを誘う傑作。今回が初邦訳であるが、あまりにもスラングが多いためにこれまで未邦訳だったのでは、という解説にも強く納得。 アメリカ文学の豊穣な素晴らしさを実感できる珠玉の12作品であった。
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短編。いくつか。 1919年作。1924年作とかの作品。 【収録作品一覧】 シャーウッド・アンダーソン「グロテスクなものたちの書」 アーネスト・ヘミングウェイ「インディアン村」 ゾラ・ニール・ハーストン「ハーレムの書」 イーディス・ウォートン「ローマ熱」 ウィリアム・サ...
短編。いくつか。 1919年作。1924年作とかの作品。 【収録作品一覧】 シャーウッド・アンダーソン「グロテスクなものたちの書」 アーネスト・ヘミングウェイ「インディアン村」 ゾラ・ニール・ハーストン「ハーレムの書」 イーディス・ウォートン「ローマ熱」 ウィリアム・サローヤン「心が高地にある男」 デルモア・シュウォーツ「夢の中で責任が始まる」 コーネル・ウールリッチ「三時」 ウィリアム・フォークナー「納屋を焼く」 F・スコット・フィッツジェラルド「失われた十年」 ラルフ・エリスン「広場でのパーティ」 ユードラ・ウェルティ「何度も歩いた道」 ネルソン・オルグレン「分署長は悪い夢を見る」 気に入れば、他の作品も、ということだろう。 何か、時代の古さを感じる。なんも感じなかった。 柴田元幸の訳が気に食わないのかもしれない。
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1919年から1947年に発表されたアメリカ文学12編。 名作中の名作と銘打たれているけれども、アメリカ文学素人の私が知っているのはヘミングウェイ、サローヤン、フィッツジェラルドくらいか。 それ以外の作者はおそらく初めましての方々。 しかし御大が自信を持って紹介するだけあって、...
1919年から1947年に発表されたアメリカ文学12編。 名作中の名作と銘打たれているけれども、アメリカ文学素人の私が知っているのはヘミングウェイ、サローヤン、フィッツジェラルドくらいか。 それ以外の作者はおそらく初めましての方々。 しかし御大が自信を持って紹介するだけあって、12編どれも素晴らしい出来だった。 とりわけ印象的だったのは、コーネル・ウールリッチ「三時」、ウィリアム・フォークナー「納屋を焼く」、ネルソン・オルグレン「分署長は悪い夢を見る」かな。 前2編は、ストーリーがしっかりしていて読み応えがあり(結末は少し暗いのだけれども)、オルグレンはとにかくリズムがよかった。コントを見せられているような。 あとは、時代が時代なので、アフリカアメリカンの扱いが特徴的。 すごく痛ましいのだけれども、当時を知る上で「ああ、この感覚が当たり前だったのか」と考えさせられた。 時代が違えば当たり前も違う。古典は、物語以外でも考えさせてくれるから良い。
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