我が手の太陽 の商品レビュー
自分の仕事にプライドを持ってやっているつもりでも、慣れてきて手を抜く。仕事をしている人なら多少手を抜くことはあると思うし、手を抜くことで効率が上がることもある。 ただ、慢心とは怖いもので、毎回マニュアルを遵守するよりかは、リスクは上がってしまう。 どれくらいまでなら手を抜けるのか...
自分の仕事にプライドを持ってやっているつもりでも、慣れてきて手を抜く。仕事をしている人なら多少手を抜くことはあると思うし、手を抜くことで効率が上がることもある。 ただ、慢心とは怖いもので、毎回マニュアルを遵守するよりかは、リスクは上がってしまう。 どれくらいまでなら手を抜けるのか、これは自分の日々の課題であり、模索中だ。 本書では溶接工の伊東が仕事で苦境に立たされるのだが、その様が読んでいて苦しい。 伊東は決して仕事に不真面目な訳ではない。しかし、周囲の評価はそうではない。 結局、仕事は人の評価でできるできないが決まってしまうのか。そう思いたくないが。 しかも伊東は孤独だ。何でも相談できる人間が周囲にいない。怪我や病気をしたって心配されるのは納期で、誰も体調を心配してなんてくれないのだ。 最後まで苦しい話だった。しかし、夢も希望もないところが逆に気に入った。
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第169回芥川賞候補作。 優秀な溶接工、伊東は工場の配管工事現場からビルの解体現場に格下げ異動させられた。 工場でフェール(溶接不合格)だったと言った男は存在しない…。 読んでみて、わからないのです。 ①溶接の知識がついていけなくてわからない。 ②わからないから面白くないと...
第169回芥川賞候補作。 優秀な溶接工、伊東は工場の配管工事現場からビルの解体現場に格下げ異動させられた。 工場でフェール(溶接不合格)だったと言った男は存在しない…。 読んでみて、わからないのです。 ①溶接の知識がついていけなくてわからない。 ②わからないから面白くないと感じているのに、なぜ途中で読むのをやめられないのかわからない。 ③ホラーではないのに、なぜ、読んだ後も何だか怖くて、ずっと背後が気になるのかがわからない。まるで背中を火傷をしているような気にもなっている。 伊東の過度なまでのプレッシャーが私に憑依したように感じます。彼がやってはいけないことをやっても、そんなに悪いと思えなくなった私は、完全に石田夏穂ワールドに引きこまれたのだと思います。 わからないのが面白いと思える1冊でした。
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ベテラン溶接工の話。専門用語が出るのは良いのだが、ちょっと多すぎ。 芥川賞候補だそうで…….。 悪くはないが、味わい深いとも思えない。
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第169回芥川賞候補作。 「我が友スミス」以来、4作目の石田作品。 芥川賞候補作らしく、今までの作品に比してより文学的な印象。 工学部卒の経歴だからか、ガテン系の仕事の描写が微に入り細を穿っている。あまり詳しすぎて読み飛ばしたくなるレベル。 独自のプライドを持つ熟練溶接工の伊...
第169回芥川賞候補作。 「我が友スミス」以来、4作目の石田作品。 芥川賞候補作らしく、今までの作品に比してより文学的な印象。 工学部卒の経歴だからか、ガテン系の仕事の描写が微に入り細を穿っている。あまり詳しすぎて読み飛ばしたくなるレベル。 独自のプライドを持つ熟練溶接工の伊東が、自らの強いこだわり故に小さなミスをきっかけにスランプに陥り、拠り所である自負心をも失っていく過程がジリジリとした焦燥と共に描かれる。 鉄の溶ける様、熱量、焦りといった作品の空気感は高村薫の「照柿」を思い出させる。 伊東にしか見えない幻の検査員は彼の内面具現化か。ラストの火傷が治った手が意味するところはちょっとわからなかった。難しい。
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読後感が吉田修一の「パークライフ」を読んだ時と似ている。(作品はまったく似てない。笑) つまり、今後が楽しみな作家ということだな!
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ベテラン溶接工の伊東。伊東の視点での溶接作業の臨場感がよく、熱や光や汗を感じられる。伊東は現場での溶接作業に誇りを持っている。それ故に配管工や検査員、工場での決まりきった溶接作業を下に見る癖がある。仕事にプライドを持つのは良いのだが、その持ち方が問題だ。やはり自分以外を下に見たプ...
ベテラン溶接工の伊東。伊東の視点での溶接作業の臨場感がよく、熱や光や汗を感じられる。伊東は現場での溶接作業に誇りを持っている。それ故に配管工や検査員、工場での決まりきった溶接作業を下に見る癖がある。仕事にプライドを持つのは良いのだが、その持ち方が問題だ。やはり自分以外を下に見たプライドは自慢できるものではない。それは自分が一目置かれない存在になったときに、周りからしっぺ返しをくらう。各個人が持つ誇りは主観的なものでしかない。自分が持っている矜持は他人にとってはどうでもいいことかもしれない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
芥川賞候補作。 溶接工の詳しい作業内容は難しすぎたのでさらっと読んだけれど、最後の方は、怪我をしながらミスせず、また怪我をしないでちゃんとできるのかハラハラした。 「あの検査員」というのは、主人公にしか見えていない幻覚なのだとしたら、最後の終わり方はどういうこと?なんかゾッとした。 「こんなの俺の仕事じゃない。」 「自分が仕事で相手にするものは、そのまま自分のことだ」 「お前は傲慢なんだよ。自分をすごいと思うのは人の自由だが、どんな仕事も馬鹿にしてはならない。そうだろ。お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。お前自身が、誰よりもさ馬鹿にしているというのに。」 という箇所で、そうだよな、仕事の難易度で仕事を舐めたり馬鹿にしたりしちゃいけないよなと思って読んでいたけど、 「傲慢で何が悪い。そうでなければ、こんな危ないこと毎日毎日できないだろ。」 という箇所で、またハッとされされる。こんな危ない仕事は傲慢にならないとやっていけないのか…って。 プライドを持って仕事をしていた人が、歳をとるにつれてだんだんと体が衰えていき、ミスが増えたり、それでも自分はできると思ったりするところが痛々しかった。 他の石田夏穂さんの作品は笑っちゃう文章が多いけど、この作品は真面目(?)な雰囲気だった。
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ベテラン溶接工の苦悩な日々を書いた小説。 途中で私には必要のない専門用語を乱用して突き放してきたので、適当に相槌を打つような感じで、 あー、そうなんですか、へぇ〜っていう感じの読み方に 切り替えた。 読み終わった後、否定も肯定もなく、単純に 「大変でしたね、お疲れ様でした!」 ...
ベテラン溶接工の苦悩な日々を書いた小説。 途中で私には必要のない専門用語を乱用して突き放してきたので、適当に相槌を打つような感じで、 あー、そうなんですか、へぇ〜っていう感じの読み方に 切り替えた。 読み終わった後、否定も肯定もなく、単純に 「大変でしたね、お疲れ様でした!」 という感想を添えておけばいいのかなと思える作品でした。
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Amazonの紹介より 第169回芥川賞候補作。 鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失っ...
Amazonの紹介より 第169回芥川賞候補作。 鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。 腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。 いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。 個人的に今までの芥川賞候補作の中で、一番心に響くものがありました。業種は違いますが、長い経験を積んだからこそ生まれる自信や突然のスランプ、仕事に穴を開けたくない動揺などが、共感する部分もあって、読み応えがありました。 今まであまり失敗したことがないからこそ、今度だってクリアできるという根拠のない自信。そしていざ失敗した時に訪れる失敗を失敗と認めたくない心の揺れ。その辺りの描写がとても表現されていて、自分自身を見ているようでした。 この話の中では、溶接工という仕事が描かれています。どんな仕事かなんとなくはわかってはいましたが、丁寧さや正確さによって、今後を左右する仕事であり、その大変さを伺えました。 全体的に文学的な表現は少ない印象でしたが、読み終えてみると、心理描写や空気感がどことなく風流といいましょうか、俯瞰的にみて、文学的な空気感が漂っている印象があって楽しめました。 経験を積んでいくと、どうしても自分が答えだと思ってしまいがちになります。後輩から違うことを言われると、絶対自分が正解だと思い、テコでも動きません。自分の職場でもそうですが、なかなか認めたくない人が多くいます。 第三者からみると、頑固だなと思う印象ですが、この作品の中ではベテラン側としてどう思っているのか、心理描写を通じて、なんとなくですが、理解する事ができます。 ベテランだからこそ感じる変な自信や馬鹿にされることの恐怖。ジャンルは違えども、少し先の自分を見ているようで、心の葛藤に共感する部分がありました。特に失敗する自分を認めたくないがゆえに、何がなんでも、仕事を「完成」させる描写は、共感しました。 経験が浅い時は、人に頼りがちですが、ベテランになってくると、なかなか他人に相談せず、一人だけで解決しようとしています。 仕事の完璧さを求めるがゆえの過剰な自信と昔は成功したから危険でもやれるという「危険」と「安全」とのバランスに、自分も気をつけなければいけないなと思いました。 やればやるほど、廃れていく描写が心が痛かったですが、仕事に対する引き際や決断もベテランとして考えなければいけないんだなと痛感させられました。 書いている段階では、芥川賞発表の前日。個人的には全部は読んでいませんが、この作品かなと思ってしまうくらい、濃厚な作品でした。
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専門用語満載の文章はなかなか読むのに骨が折れる。職人気質の溶接工がそのプライドの高さから自分の衰えを認められず、次第に自分を見失っていき、ついには…。
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