道をたずねる の商品レビュー
本書は、大分別府の幼馴染である俊介、一平、湯太郎の友情、そして住宅地図会社「キョーリン」の苦難と発展の歴史を描いた物語です。 父の背中を追うようにキョーリンの調査員となった俊介の視点で、中学時代から人生の節目節目を切り取り、軌跡が綴られていきます。 キョーリンのモデルは明...
本書は、大分別府の幼馴染である俊介、一平、湯太郎の友情、そして住宅地図会社「キョーリン」の苦難と発展の歴史を描いた物語です。 父の背中を追うようにキョーリンの調査員となった俊介の視点で、中学時代から人生の節目節目を切り取り、軌跡が綴られていきます。 キョーリンのモデルは明らかに『(株)ゼンリン』で、本作の読み処は、住宅地図を作るための調査員の仕事でしょう。 江戸時代に日本国中を測量して周り、初めて実測による日本地図を完成させた伊能忠敬。住宅地図作成の調査員の仕事の根幹は相通じるものがある気がします。地道な作業以外の何者でもありません。 ただただ、人々の生活に役立ち、喜ばれる地図を作ろうとする"地図屋の矜持"そしてその強固な気迫が伝わってきます。 全国の住宅地図の完成を目指し、様々な苦難を乗り越えていく壮大なドラマの陰に、3人の友情と父の代からの熱い想いを挟み、物語に深みを与えてくれているようです。 今では紙の地図を目にすることは減ってしまいましたが、かつて日本全国の住宅地図を作った人たちの情熱は色褪せることはありませんね。 日々更新される電子化された地図の有り難みを感じながら、効率性や合理性ばかり重視される現代社会にあって、私たちに忘れてはならない大切なことを思い起こさせてくれる一冊だと思いました。
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