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日本一長く服役した男 の商品レビュー

3.7

7件のお客様レビュー

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2024/09/07

面白かったしとても考えさせられた。 61年間服役、日本最長の無期懲役囚の仮釈放。 これだけで取材者としてはめちゃくちゃ興奮するだろう。 その情報をとったのがまずすごいし、そこから帰住先の施設を割り出したり、服役中の無期懲役仲間を見つけ出したり、被害者への接触にも成功したり、取材力...

面白かったしとても考えさせられた。 61年間服役、日本最長の無期懲役囚の仮釈放。 これだけで取材者としてはめちゃくちゃ興奮するだろう。 その情報をとったのがまずすごいし、そこから帰住先の施設を割り出したり、服役中の無期懲役仲間を見つけ出したり、被害者への接触にも成功したり、取材力には素直に圧倒された。 私もこんな仕事をしてみたい。 その上で、たしかにまとめるのが難しいテーマだと思う。 「無期懲役囚は自分の犯した罪をどう受け止めているのか」というのが取材の始まりの問い(とても共感)だったけど、結局どう考えているのかは本人にしかわからないことで、今回の場合、本人にそれを問いかけてもうまく意思疎通できなかったことがとても惜しまれる。 結果的に密着取材をしても解けることのない問いだった。ゆえに番組の方向性が定まりきらないという悩みは確かに拭えない。 とはいえ、「人間にとって、本当に罪を償うことはとても難しいことだ」という答えも十分結論に値すると思う。罪の意識を感じているのかはおろか、事件自体をきちんと認識できているのかもわからないAさんの反応にはたしかに落胆させられるが、逆に真理なのだろうとも思うから。 (もしくは、方向性を変えて「刑務所の処遇は、罪を償うことについてどのくらい役に立っているのか」という問いにするとかでもよかったかもしれない。 ああいうAさんの反応は、60年にわたる服役の帰結であるのだから、果たしてどのような意味があったのか向き合うことには一定の意義がある。) 死刑の執行がブラックボックスであるように、無期懲役の仮釈放も恣意的でブラックボックスなのだということも改めて気付かされた。 だから60年服役という、およそ当時の裁判官が想像しなかったであろう実態が生まれてしまう。 本書を読んで、刑務所を取材することと犯罪加害者を取材することは微妙に違うと気付いた。 私がこれまでしていたのは刑務所取材で、思えば主眼は施設や制度の話に寄っていた。もっと「人」にフォーカスしたい。と強く強く思わされた。

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2024/02/28

「更生は道のりであってゴールではない。」 「更生に正解はない。」 「更生は一人では決してできない。助けてくれる誰かと出会えるかどうかだ。」 他人事ではありません。自分がそうであっても何の不思議もありません。 重い言葉が考えさせられます。

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2023/10/25

NHK取材班が書いたもので ドキュメンタリーが作られていく様子が書かれていました 61年間の服役って 人生の半分以上塀の中。 外に住んでいる私でも 久しぶりに コンビニとか行って セルフレジとかで 戸惑うのに 若い時代に塀の中に入って いきなり高齢になって街に出たりしたら 浦島...

NHK取材班が書いたもので ドキュメンタリーが作られていく様子が書かれていました 61年間の服役って 人生の半分以上塀の中。 外に住んでいる私でも 久しぶりに コンビニとか行って セルフレジとかで 戸惑うのに 若い時代に塀の中に入って いきなり高齢になって街に出たりしたら 浦島太郎でしょう。 しかも 塀の中では規則正しく行動し 作業行う日々。 外に出た時は もう何もしなくても良いとなっても どうして良いものか戸惑う。 被害者への贖罪も あまりにも長い年月でその気持ちもどうなってるものか? この取材によって答えは出ていないが あの時こうだったらとか もし とか 結局は 答えはないですね。 自分だって 違環境に生まれて育っていたら 犯罪者なっていたかもしれないし 被害者になっていたかもしれません。 悩ましい内容でした。

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2023/10/15

『無期懲役』の判決を受け、61年もの長い間服役していた男。彼はどんな罪を犯し、それにどう向き合ってきたのか?NHK取材班の記者たちが追う、更正と刑罰をめぐる密着ドキュメンタリー。 まず、「日本一長く服役した男」というタイトルに引かれて、本書を手に取った。熊本刑務所から61年ぶりに...

『無期懲役』の判決を受け、61年もの長い間服役していた男。彼はどんな罪を犯し、それにどう向き合ってきたのか?NHK取材班の記者たちが追う、更正と刑罰をめぐる密着ドキュメンタリー。 まず、「日本一長く服役した男」というタイトルに引かれて、本書を手に取った。熊本刑務所から61年ぶりに仮釈放された、80代の男性について密着した内容が綴られている。犯罪は予想通り"殺人"だったが、長期間の服役の理由が分からず、そこに興味を持って読んだ。 取材した記者が綴っているように、「果たして、厳罰に処しただけで、同じような事件が繰り返されるのを防げるのだろうか」という一文を重く感じた。

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2023/09/16

新聞の書評で見かけて図書館で借りたもの。 私もいつだったかどこでだったか、無期懲役といっても20年くらいで出されるんだ、と聞いたことがあり、そんなものなんだと勝手に思い込んでいた。 どうやらそれは間違いらしく、30年40年と服役している服役囚は結構いるらしい。 本書で取り上げられ...

新聞の書評で見かけて図書館で借りたもの。 私もいつだったかどこでだったか、無期懲役といっても20年くらいで出されるんだ、と聞いたことがあり、そんなものなんだと勝手に思い込んでいた。 どうやらそれは間違いらしく、30年40年と服役している服役囚は結構いるらしい。 本書で取り上げられているのは、61年という長い間服役し、仮釈放された83歳の男性。うっかりすると誤解してしまいそうだが、決して、彼が服役期間の最長というわけではない。服役して仮釈放された最長、という意味で、65年服役中の人物もいるとか。 その彼の出獄前後を取材した取材記録なのだが、これを何と捉えたらいいのか。更生・贖罪とは、という問題提起なのか、日本の刑法犯罪者の処罰に関する問題提起なのか、はたまた無期懲役と終身刑についてなのか。社会制度の在り方にも思えるし、われわれ一般市民の犯罪に対する意識について問われているとも思える。 で、私が本書を読みながら頭に浮かんだのは、トラウマインフォームドケア、ということ。ケアが必要な人には何かしらのトラウマ体験がその背景にある、という概念で、罪を犯した人の多くはそれに該当するのではないかと私は思っている。この男性も、そもそも犯罪行為に至るにはそれなりの不遇な成育環境があり、そういう意味でも、出発点としてはケアが必要な人物だったのだろう。本来は、刑務所というところがそのケアを担うべきなのだろうが、現状ではそのようになっておらず、最近では罪の償いの場(というか、本当の意味での罪の償いの場にはそもそもなってないと思うけどね。ただの、司法で決められた処遇を受ける場所、なだけ。根本解決になってないから再犯が起きる)としてではなく、更生の場としての刑務所の在り方を考える動きもあるようだが、そう簡単には仕組みや社会の意識は変わらない。 個人的には、犯罪を減らしたいのであれば再犯をさせないようにする仕組みは必須だし、そのためには個人へのそれなりのケアが必要だと思っている。まあ、現実的にはかなり難しいだろうけれども。費用面とか人材面とか。 話がそれた。 本書では、結局取材者が当初イメージしたような展開にはならなかったのだが、ひとつ言えることは、やっぱり罪を裁く、罪を償うということは本当に難しいということだ。加害者、加害者家族、被害者、被害者家族、その数だけ望むものも変わるし、思いも違う。簡単にセオリーが決められるものでもなく、正解もない。だから難しい。しいて言えば、常にそれぞれの気持ちや意見を聞きながらそれぞれに向き合い、考え続けること、それが正解なのかもしれない。 ひとつとても「あ、なるほど」と思ったことは、終身刑の難しさということ。有期刑であれば目標ができ、目指すものができ、それをもとに服役囚を導き統制を保つことが可能になる。だが終身刑となれば希望となるものがないだけに自暴自棄になりやすく、刑務所内の秩序を保つことが困難になるという。実際、仮釈放のない終身刑を導入している国では、その点で刑務官が苦労しているところが多いのだそうだ。そうか、そうかもしれない。一生出られないとなれば、どうにでもなれ、と思うかもしれない。 死刑制度の代わりに終身刑を導入することが難しいとなれば、どんな処遇が考えられるのだろう。やっぱり無期懲役で仮釈放になり、生涯保護観察付とか?ある一定のボランティア活動のようなものを必須にするとか? なんにしても、事程左様に、人が人を裁くことは難しいということでしょう。 やっぱり、修復的司法かな。

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2023/08/15

取材班が取材過程を記録しながら取り組んでいる様子が読み取れ、今の刑務所事情がよくわかる。引受人がいないがゆえに終身刑でも長く服役せざるを得なかった。その結果、刑務所が介護施設化している。社会に復帰しても、刑務所ボケで、命令に従い、自分の意思表示ができなくなる。仕事がなく再犯率が高...

取材班が取材過程を記録しながら取り組んでいる様子が読み取れ、今の刑務所事情がよくわかる。引受人がいないがゆえに終身刑でも長く服役せざるを得なかった。その結果、刑務所が介護施設化している。社会に復帰しても、刑務所ボケで、命令に従い、自分の意思表示ができなくなる。仕事がなく再犯率が高い。理解ある受け入れ先ができて、再出発できたという作品だが、ラッキーな例であり、再犯のループに落ちる可能性があった。 映画「すばらしきこの世界」(役所広司)に通じるもののある作品。

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2023/07/20

NHKの番組は見ていなくて残念。それを見たうえで、映せなかった舞台裏を知るというのがよかったんだろうね。 フィクションではないだけに、思うように対象者が発言しなくてやきもきするんだね。ほとんど塀の中で過ごした人にとっては、これが真実なんだろうな。

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