駈込み訴え の商品レビュー
「私」であるイスカリオテのユダを主人公とした視点で、イエス・キリストへの愛憎渦巻く感情や言動が綴られている。 聖書において、ユダが"裏切り者"の弟子であることは有名だが、会計担当で金銭をくすねていたこととか、イエスはそれを承知のうえだったとは知らなかった。 い...
「私」であるイスカリオテのユダを主人公とした視点で、イエス・キリストへの愛憎渦巻く感情や言動が綴られている。 聖書において、ユダが"裏切り者"の弟子であることは有名だが、会計担当で金銭をくすねていたこととか、イエスはそれを承知のうえだったとは知らなかった。 いわゆる最後の晩餐の席で、イエスがとうとう苦しげに告発し、一つまみのパンをユダの口に押し当てるシーンは厳かさがある。そのままそこを飛び出して、「あの人(イエス)を罰して下さい」と駆け込み訴えるユダ。イエスに対する、尊敬と侮蔑。彼の屈折した台詞の端々に、それでも私はどこか悲しさを感じた。
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乙女の本棚シリーズから、太宰治さんとホノジロトヲジさんのコラボ作品「駈込み訴え」です。この作品も私がよく利用している図書館に入り、1番に読めました(*^^)v ストーリーの方は、師として仰ぐ「あの人」を「私」は殺してほしいと訴えるところからはじまる…。「ずたずたに切りさいな...
乙女の本棚シリーズから、太宰治さんとホノジロトヲジさんのコラボ作品「駈込み訴え」です。この作品も私がよく利用している図書館に入り、1番に読めました(*^^)v ストーリーの方は、師として仰ぐ「あの人」を「私」は殺してほしいと訴えるところからはじまる…。「ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい」と…。「あの人」と「私」は同じ年…「師」の立場と「師」とその弟子の生活を守ってきたにも関わらず、意地悪く無理難題を押し付けるばかりか、こちらの苦労を全くわかろうとしない…。こともあろうか、「私」も気になっていたマリアに、「あの人」が恋をしているかの様子を目の当たりにし、ジェラシーをも感じる…。もう認めよう、「私」は「あの人」を無条件に愛しているのだ…。こんなことなら、「あの人」を殺して自分も死のうか…もうそうするしかないと、決意するのだが…。 う…ん、わかりにくいっ(汗)。「私」は葛藤を繰り返し、気持ちもころころ変わる…。何より、このストーリーは聖書を知らないとダメなのかも…何の知識も入れないまま読み始めたので、うん??となってしまいました…。「あの人」と「私」の関係性も、聖書のさわりでもわかっていれば、もっと驚けたし内容も理解しやすかったのかもしれないと感じました。なんだか、ちょっと悔しいなぁ…。ホノジロトヲジさんのイラスト、独特なタッチでこの作品も描かれていて、よかったです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「私」は常に「あの人」への羨望と嫌悪、愛憎を拗らせていた。物語の終盤「あの人」の唐突な振る舞いに対して、「私」は「あの人」は寂しさを抱えているのだと慮り、背信を取りやめようとする。その瞬間だけは「私」にとって「あの人」は神ではなく、2個上の自分と同列の人間であり、引け目を感じることなく愛せる対象になったのではないか。「私」にとって「あの人」は手が届かないからこそ惹かれ、手が届かないからこそ口惜しい存在だったように思う。
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師を殺してくれと訴える私。 師を愛するあまり、自分だけのものにしたいと願うあまり、応えられない想いが積もる。 新約聖書は読んだが太宰にかかると彼の行動原理はこうなるのか、と感心した。
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もう絵が最高です。 としか言えない。 ストーリーは元あるものとして、 それに掛けた絵がもう見てて飽きない。 どんな意図でこの絵を描き込んだのか、 細かく見ているのが楽しい。 文豪の好きな短編と好きなイラストレーターのコラボ。
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うあああ・・! 文庫でこの作品は事前に読んでいたけれど、やはりスゴい・・! 愛憎、思慕と幻滅、自己嫌悪と裏切り、推しを思う心と勝手?それとも的を得てる自己解釈。 人間の心情って決して単純ではない。移り変わる心は複雑。 でもなにか(小説などの作品や報道記事)を作るとついわかりやすく...
うあああ・・! 文庫でこの作品は事前に読んでいたけれど、やはりスゴい・・! 愛憎、思慕と幻滅、自己嫌悪と裏切り、推しを思う心と勝手?それとも的を得てる自己解釈。 人間の心情って決して単純ではない。移り変わる心は複雑。 でもなにか(小説などの作品や報道記事)を作るとついわかりやすくしてしまう。 煩雑、まとまらない気持ちを本当に丁寧に、しかししっかり描いているのはさすが文豪。 イラストのホノジロトオジ氏ははじめて読む人のために「私」が誰なのか、徐々にわかっていく過程を楽しんでもらうためにわかりやすいシンボルは最初は避けていたとのこと。 わかりやすい挿し絵ではないけれど、独特の雰囲気はすごい。 本文がわかりやすい独白、挿し絵はやや難解。 素敵な化学反応。
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