刑事何森 逃走の行先 の商品レビュー
「デフ・ヴォイス」のスピンオフ、何森編第2弾 短編二つは2021年、中編は2022年が舞台 前作の表紙は夜道を一人歩く何森…という感じでしたが、今回は夕日さす街を相棒と二人で歩いていく後ろ姿。じーん…
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※このレビューにはネタバレを含みます
デフ・ヴォイススピンオフ 定年間際の刑事何森。捜査の主軸からは外されたている何森と荒井コンビが追う、社会の片隅で生きる女性たちの罪。 技能実習生、単身女性の貧困、入管法…ほかにもまだある、見えないことにされている人たちの痛みと苦しみ。 知ってはいる、新聞で、テレビで、あるいはネットで取り上げられるたび心を傷めたりする。でも、すぐにその痛みも流れていってしまう。 そうやってなかったことにした痛みを、何森と一緒に感じ続けた。 生きていくことさえ困難な、希望の光もないこの国の生活で、それでも罪は罪だと裁くのか。 何秘湯解決しない事件たち。読後残る混沌と不全感こそがこの国の現実なのだろう。
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デフ・ヴォイススピンオフ、何森刑事が主役の第2弾。今度はフォンさん主役のお話も読んでみたく思ってしまった…スピンオフのスピンオフ!
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〈デフ・ヴォイス〉シリーズスピンオフ〈刑事何森〉シリーズ第二作。 はみ出し刑事・何森が、〈デフ・ヴォイス〉シリーズの荒井みゆきとタッグを組んで三つの事件の捜査をする。 読み終えて何ともモヤモヤする作品だった。 弱者の女性たちの犯罪を描いているのだが、何森とみゆきが犯人を捕まえて...
〈デフ・ヴォイス〉シリーズスピンオフ〈刑事何森〉シリーズ第二作。 はみ出し刑事・何森が、〈デフ・ヴォイス〉シリーズの荒井みゆきとタッグを組んで三つの事件の捜査をする。 読み終えて何ともモヤモヤする作品だった。 弱者の女性たちの犯罪を描いているのだが、何森とみゆきが犯人を捕まえてお仕舞いではない。それどころか捕まえることさえ出来ない事件もある。 作中に出てくる『クー・ハン』なる組織も、そこに助けを求めるしかない女性たちも、その先には何があるのか。 映画のようなハッピーエンドが待っていれば良いが、本当にそうなるのか。一生守られて逃げ続ける日々が続くのは辛くないのか。 今の日本社会にある様々な問題。救済が必要な人、救済を求める人がたくさんいても、全ての人を救うことは出来ない。そもそも今の日本にそんな経済力などない。みんなが今日生きるのにいっぱいいっぱいな、貧しい国になっている。 一方で様々な救済措置を悪用し、法の隙間をすり抜けて不法行為・違法行為をする人間がいるのも事実。得てしてそちらの人間に少ないペイが渡るのも事実。 最後の事件で何森は自分で選択して自分で女性を取り調べた。 女性は救われたのか、どうなのか。 何森は作品の最後でまもなく定年を迎える設定となっている。次の作品があるとすれば、刑事ではない何森としての姿が描かれるのか。第二の人生の舞台はどこなのか。そこで何森は何をするのか。機会があれば読んでみたい。
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「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフ、“刑事何森”第二弾。 「逃走の行先」というタイトルにもある通り、“逃げる女”(逃げざるを得なくなった女)をテーマにした、連作三話が収録されています。 定年間近(!)の何森刑事とバディの荒井みゆきが追うのは、派遣先の上司を刺して行方をくら...
「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフ、“刑事何森”第二弾。 「逃走の行先」というタイトルにもある通り、“逃げる女”(逃げざるを得なくなった女)をテーマにした、連作三話が収録されています。 定年間近(!)の何森刑事とバディの荒井みゆきが追うのは、派遣先の上司を刺して行方をくらましたベトナム人技能実習生。その背景には非合法の救済組織があるようで・・(第一話「逃女」)。 丸山さんの作品には毎回考えさせられていますが、今回も、この国が抱える厳しい実情が浮き彫りになるような内容となっております。 技能実習生の厳しい現実を扱った、第一話「逃女」。 ホストに嵌った女性の末路・・売春斡旋、パパ活問題の第二話「永遠」。 難民申請の困難と非正規滞在外国人問題、そして高齢単身女性の貧困を描いた第三話「小火」。 各話、追い詰められた女性達の悲痛な思いが伝わってきて、読んでいて心がえぐられるようでした。 勿論フィクションではあるのですが、実際に起こった事件がベースになっているので、リアルな問題提起になってもいるのですよね。 という訳でスッキリ解決!という展開ではないのですが、本書を読んで“この国のセーフティーネットは一体どうなっているんだろう・・?”と、関心を向けるきっかけになりました。 さて、やりきれない事件への対峙でいつも以上に哀愁漂う何森さんでしたが、定年を迎えた後の彼の進路(?)も気になるところです。 あと、第二話で、捜査の為にホストクラブに通う羽目になったりと、本編シリーズとは違った面をみせてくれるみゆきさんでしたが、どうやら次女の瞳美ちゃんの学校の事でお悩みを抱えている模様です。 荒井ファミリーの状況が心配なので、本編シリーズの続きも是非お願いいたします~。
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ベトナムの人たち今はまだ日本に働きに来てくれているかもしれないけど、そのうち日本以外の国行っちゃうだろうな、もっと大事にしろよって思いながら読んだ。
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51/100 丸山正樹著 「逃女」 ベトナム人技能実習生による傷害事件 何森は、女性の逃亡を手助けする組織の存在を知り… 「永遠(エターナル)」 ラブホテルでの殺人事件の重要参考人は、パパ活をしていた若い女性だった… 「小火」 公園トイレの放火事件に、容疑者として浮かび上がったの...
51/100 丸山正樹著 「逃女」 ベトナム人技能実習生による傷害事件 何森は、女性の逃亡を手助けする組織の存在を知り… 「永遠(エターナル)」 ラブホテルでの殺人事件の重要参考人は、パパ活をしていた若い女性だった… 「小火」 公園トイレの放火事件に、容疑者として浮かび上がったのは高齢者ホームレスだったが… 罪を犯さざるを得なかった女性たちに対峙する刑事・何森 定年が迫る中で下した苦渋の決断ー
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刑事何森、待望の続編。うとまれながらも、事件の裏にこだわる何森。荒井みゆきとのコンビは、しみる。 「刑事何森」の第2弾。 「逃女(とうじょ)」「永遠(エターナル)」「小火(しょうか)」の 三篇が収められている。 技能実習生、入管、難民、コロナによる解雇や雇止め、 貧困、ホー...
刑事何森、待望の続編。うとまれながらも、事件の裏にこだわる何森。荒井みゆきとのコンビは、しみる。 「刑事何森」の第2弾。 「逃女(とうじょ)」「永遠(エターナル)」「小火(しょうか)」の 三篇が収められている。 技能実習生、入管、難民、コロナによる解雇や雇止め、 貧困、ホームレス…。 作品には、社会に散らばる、積み重なる問題が満載されている。 どれも、すぐには答えが出ないものばかり。 だが、考え続けていかなければならないと、思い知らされる。 というか、何森が定年目前だと気づき、少々焦った。 理由もなく、何森は、若くはないが、脂ののった年齢、 渋い中年のオッサンと、思い込んでいた。 前作を読み返し、一話目の「二階の死体」から「ロスト」まで、 結構、年月が経っているんだと、思い出した。 あらためて、定年を目前にするまで、所轄をたらいまわしにされ、 仲間に疎んじられてきた彼の刑事人生を考えると、 切ない。 事件に少しでも違和感を覚えると、もう、 「全身刑事」になる。 誰が何といっても、止まらない。 やっかいな性格で、生きづらそうだなと思うのだが、 こちらから見れば、それは魅力の一つだ。 今の時代、正義は一つではなく、さまざまな正義があるような気がする。 こちら側から見ると正義とは思えないことも、 あちら側は正義だと主張する。 複雑、怪奇で、めんどうくさい。 だが、社会に散らばる弱者が踏みつけられ、傷つけられるのは、 正義じゃない。 そう、大きな声で言ってほしい。
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外国人技能実習生の妊娠問題「仮放免」、パパ活の実態、入管難民法の改正問題、の3話短編。 平和で閉鎖的な日本で起きている大切な問題提起本。 きっかけになれば、という思いか… あとがきに記載されたように、読者の人気次第で、定年何森刑事のその後物語、続編が出るか決まるらしい。読んで...
外国人技能実習生の妊娠問題「仮放免」、パパ活の実態、入管難民法の改正問題、の3話短編。 平和で閉鎖的な日本で起きている大切な問題提起本。 きっかけになれば、という思いか… あとがきに記載されたように、読者の人気次第で、定年何森刑事のその後物語、続編が出るか決まるらしい。読んでみたい気もするが、どうも理屈っぽさに飽きも感じる。 全世代で最も貧困率が高いのは、65歳以上の高齢単身女性。コロナ禍以前から4人に1人が貧困で、65歳以上だと2人に1人になる。 フードバンクの中に、支援したい人からの提供を受け付けることを「フードドライブ」といい、集まった食品を配布する場所や作業を「フードパントリー」というらしい。 名古屋の入管施設での死亡事故により、入管収容施設での人権侵害の実態から、収容、仮放免、難民申請、の問題が明らかに。
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「デフ・ヴォイス」スピンオフにして何森シリーズ二冊目の連作ミステリ。ここで描かれる物語はもちろんフィクションなのですが、現代社会で実際に起こっている事件そのものでもあると思います。決して絵空事でも他人事でもないのかもしれません。 外国人労働者や高齢女性ホームレス等、社会的弱者が関...
「デフ・ヴォイス」スピンオフにして何森シリーズ二冊目の連作ミステリ。ここで描かれる物語はもちろんフィクションなのですが、現代社会で実際に起こっている事件そのものでもあると思います。決して絵空事でも他人事でもないのかもしれません。 外国人労働者や高齢女性ホームレス等、社会的弱者が関わった事件を担当する何森は、事件を起こさざるを得なかった彼女たちをなんとか理解し寄り添おうとするのですが、向こうからはなかなか理解してもらえないのがつらいところです。彼女たちからすれば、同じ立場の人間でなければ分かってもらえない気持ちが強いんだろうな……。それでも「犯人」を追うだけでなく、事件の根幹を知ろうとする何森の姿勢は優しさと頼もしさに溢れていると感じました。 お気に入りは「小火」。この問題はたしかに聞いたことがあったけれど、それでも日本人にとってはたしかになじみが薄いものだと感じてしまいます。蔑ろにしているわけではないけれど、知る機会があまりないのですよね。だからこそ知らなければいけないことなのだろうし、重要な問題でもあります。そしてこの事件に向き合った何森の願いは、人間としてはまったく正しいことだと思いました。
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