駆け入りの寺 の商品レビュー
自らの専門分野である、古代や仏教を題材にした小説で作家としてスタートした、澤田瞳子。 近代を題材にした作品で直木賞も受賞し、作品の幅も広がってきています。 『星落ちて、なお』 https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B094HZ...
自らの専門分野である、古代や仏教を題材にした小説で作家としてスタートした、澤田瞳子。 近代を題材にした作品で直木賞も受賞し、作品の幅も広がってきています。 『星落ちて、なお』 https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B094HZY84B 未読の文庫化された作品がないかと探していたところ、この短編集があることを知ったので、読むことにしました。 時代は江戸時代中期(18世紀初め)。 京都の中心部から北東に一里離れた場所にある比丘尼御所、林丘寺というお寺が舞台になっています。 比丘尼御所とは、天皇の血を引く女性が住持(住職)をつとめる尼寺。 この林丘寺に持ち込まれる問題と、その対処の顛末が、7つの短編に分けて描かれています。 各作品を通じて登場するのが、この寺を守る役目の青侍、梶江静馬。 25歳の彼は、この寺に勤めるきっかけとなった、子供の頃の出来事を今でも、後悔しています。 もう一人、中心人物として各話に登場するのが、80歳をこえて今なお元気な前の住持、普明院元瑶。 後水尾天皇の第八皇女で、開山(初代住持)として林丘寺に迎えられたという高貴な血筋ながら、静馬をはじめとする寺の面々にも、気さくに話しかけるお人柄。 寺で起こる/寺に持ち込まれる騒動を解決しようと奔走する、生真面目な静馬。 そんな静馬をやんわりと諭しながら、時には探偵のように、時には裁定者のように、自らも騒動に関わる元瑶。 やわらかい「御所ことば」で交わされる会話もあいまって、心穏やかに読み進めました。 作品を通じてテーマになっているのが、「逃げる」ということ。 ・大事なことに立ち向かわずに逃げてしまうと、場合によっては一生、後悔することになる ・では人は、どんな時でも、逃げてはいけないのか? 逃げた人間は一生、責を負うのか? 作品の中で繰り返されるこれらの問いかけに、自分自身も考えさせられました。 作品の舞台となっている比丘尼御所については、鎌倉などでの寺社参拝を通じて、存在は知っていました。 しかしそれ以上のことは知らず、本作品を読んではじめて、具体的なイメージを描くことができました。 資料も多くはないであろう、江戸時代の比丘尼御所を題材に、このような作品を書こうとよく考えたものだと、感心してしまいました。 ますます、この作家さんの作品の幅が広がってきたようなので、さらに文庫化された未読作品を探して、読んでいきたいと思います。 .
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優しい元揺の登場が毎度待ち遠しく読み進めてました。歴史背景知識はあまり必要なく読み進められるので、澤田瞳子小説にしては読み進めやすい作品だと思う。
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202306/最初は登場人物がわかりにくかったのと、文中()での注釈説明文が世界観を邪魔するので読みにくかったけど面白かった。この舞台でこの展開を作り出すのは澤田瞳子ならでは。
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人里離れた尼寺を舞台に高貴な方々の日常とそこに関わる市井の人々の人間模様を描いた作品。書名の「駆け入りの寺」から受けた印象とは少々異なる内容でしたが、それぞれの物語にそれぞれの「駆け入り」がありました。 過去の事情から、自分を捨て他人ばかりおもんばかる老尼公と、恩人を捨て置いたと...
人里離れた尼寺を舞台に高貴な方々の日常とそこに関わる市井の人々の人間模様を描いた作品。書名の「駆け入りの寺」から受けた印象とは少々異なる内容でしたが、それぞれの物語にそれぞれの「駆け入り」がありました。 過去の事情から、自分を捨て他人ばかりおもんばかる老尼公と、恩人を捨て置いたという自責の念にさいなまれる青侍の二人の主人公。尼寺へ駆け入るが如く持ち込まれる問題に向き合う二人の主人公を通じて"過ちは真正面から向き合ってこそ新たな道が開ける"と言ったメッセージを受けた気がします。 尼公が発する御所ことばと周囲が発する市井の言葉が相まって、舞台となる尼寺の雅でありながらも人間臭い独特な世界観が醸し出されています。 また、各物語の冒頭にさらっと並べられた季節感溢れる語句が五感を刺激して、情景とともに物語りの中へと誘われます。 お恥ずかしながら人名が覚えきれず、語句の意味が分からずで、本に貼り付けた付箋紙に単語を拾い、読みや意味を追記して、時折参照しながら読み進めました。受験勉強のようでしたが楽しく読ませていただきました。
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皇女のために建立されたお寺の歳時を描きつつほっこりとした人情話を。 それぞれの苦しみを優しく解きほぐしてくれる。 仕事に疲れたあなたに。
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いつもながら澤田瞳子さんの作品は一筋縄では行かない。最初は、ほんわかとした人情物かと思って読んでいたら、なかなかどうして、人間の業の様なものが浮き出て来て、それでいて、最後は清々しい気持ちになる。やっぱり凄い。
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【悩みを抱える人々が門を叩く、一風変わった駆け込み寺】平穏で優雅に暮らす尼たちの元へ、ある日飛び込んできたのは「助けてほしい」と叫ぶ若い娘……。雅やかで心に染み入る連作時代小説。
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